【水口教授のESG通信】欧州グリーンディールの本気度 - EUタクソノミーの背景

欧州委員会は2020年3月に欧州気候法の提案をしたかと思うと、サーキュラーエコノミーアクションプランや生物多様性戦略などを立て続けに公表し、7月には水素戦略を出しました。いずれも欧州グリーンディールを具体化する動きです。私たちは、つい、EUタクソノミーなどの個別の動きに注目しがちですが、それも欧州グリーンディールというより大きなビジョンの一部と言えるのではないでしょうか。タクソノミーだけに注目していたのでは見えてこないEUのビジョンの全体像に目を向けてみたいと思います。

【水口教授のESG通信】ウイグル人強制労働問題を考える - 中国と人権と投資行動

2020年7月23日、「ウイグル地域での強制労働廃絶のための連合」というNGOの連合が世界の企業に行動を呼びかける声明を公表しました。中国政府は少数民族であるウイグル人を組織的に拘束し、強制労働させているので、サプライチェーンがウイグル人強制労働と関わる可能性のある企業は、その可能性を遮断すべきだというのです。実際、新疆ウイグル自治区での問題はこれまで何度か報道されてきました。企業と機関投資家はこの呼びかけにどう応えるべきでしょうか。中国と人権と投資行動という難しい問題を考えてみたいと思います。

【水口教授のESG通信】コロナ以降、社会は変わるか - 幸福度調査から考える

 新型コロナウイルスのパンデミックを経て社会は大きく変わる、と言われています。しかし本当にそうでしょうか。また、変わるとしたらどんな方向への変化になるでしょうか。2011年の東日本大震災の後も、社会が変わるのではと思われました。けれども2012年から始まった国連の幸福度調査では、日本の幸福度は年々下がり続けています。今度も同じことにならないでしょうか。それではなぜ日本の幸福度は下がってきたのか。そうならないためには、何を変えることが必要なのか。幸福度調査を参考に考えていきます。

【水口教授のESG通信】欧州サステナブル金融政策の動向 - タクソノミーの外側に注目を

2020年3月9日にEUタクソノミーに関する最終報告書が公表されました。本体に付属書を合わせると650ページを超える大作です。当然、その中身が気になると思います。しかし実はこの報告書だけでなく、それに関わる制度的枠組みが重要です。2019年11月には金融機関によるサステナビリティ情報の開示に関するEU規則が成立し、12月にはタクソノミーの根拠となるEU規則が政治合意に至りました。そこで本稿では、タクソノミー最終報告書だけでなく、これらのEU規則も含めた欧州のサステナブル金融政策の動向を見ていくことにします。

【水口教授のESG通信】昆虫から食料問題を考える - コオロギのゴーフレットを生んだ研究

 国連の2019年版の世界人口推計によれば、2019年に77億人だった世界人口は2030年には85億人、2050年には97億人に達すると予想されています。このような人口増加に所得水準の上昇が加わることで食肉への需要が大幅に高まれば、生態系や気候変動への負の圧力も高まります。そこで、植物由来の人口肉や培養肉と並んで昆虫食の可能性が検討されています。ではどうすれば、昆虫食を普及させることができるでしょうか。ドイツの学会で発表された日本人研究者の研究と、その研究を踏まえて実際に発売されたコオロギのゴーフレットの例を手掛かりに、昆虫食の普及の可能性について考えていきます。

【水口教授のESG通信】ESG投資の生態系を考える - NGOの役割を中心に

 2019年、インドネシアは大規模な森林火災に見舞われました。現地のNGOは、泥炭地の開発を促進してきた大手パルプ企業の責任を指摘するレポートを公表しましたが、批判された企業もレポートに反論を掲載しています。ESG投資家はこの問題にどう向き合うべきでしょうか。単に企業とNGOの対立ととらえるのではなく、ESG投資自体を多様な主体と多様な意見からなる一種の生態系とみなす視点から、考えていきたいと思います。

【水口教授のESG通信】スチュワードシップ再考 - 英国SSコードの改訂を読み解く

2019年10月、英国でスチュワードシップ・コードが改訂され、「英国スチュワードシップ・コード2020」が公表されました。この改訂では、対象が上場株式だけでなく、債券や不動産などすべての資産クラスに拡大され、ESG課題のインテグレーションが明記されるなど、スチュワードシップの考え方自体が大きく変化しました。その背景には何があったのか、スチュワードシップ・コード改訂の意味を読み解いていきたいと思います。

【水口教授のESG通信】PRI in Person 2019 参加報告

 2019年9月10日から12日までの3日間、パリに世界のESG投資関係者が集まり、今年もPRI in Personが開催されました。参加者は過去最大の約1700人、日本からも約70人が参加したと言われます。今回は、PRIが最近公表した気候変動に関する「避けられない政策対応」レポートの解説のほか、実際に現代的奴隷の状況にあった人を迎えたセッションなど、盛沢山でした。中でも、多くの登壇者が「新しい資本主義(New Capitalism)」に言及していたのが印象的でした。今年のPRI in Person 2019の参加報告をお届けします。

【水口教授のESG通信】アマゾンはなぜ燃えるのか - ポピュリズムとESGを考える

 2019年、アマゾンでは森林火災が前年をはるかに上回る規模で発生しています。その原因として、畜産や大豆生産のために森林を焼き払う農業生産者の存在が指摘されています。投資家は、企業に対してサプライチェーンを通じて森林火災に加担しないよう、圧力を強め始めています。そのような投資家の行動は重要です。しかし、問題の根本にあるのは農業者の森林破壊を厳しく取り締まろうとしないブラジル政府と、ボルソナロ大統領の姿勢です。そこで、ブラジルのトランプとも呼ばれるボルソナロ大統領の登場に遡って、この問題を考えていきたいと思います。

【水口教授のESG通信】EUタクソノミーを考える

2019年6月、欧州委員会の「サステナブル金融に関するテクニカル専門家グループ(TEG)」からタクソノミー・テクニカルレポートが公表されました。このEUのタクソノミーは、サステナブルな活動とは何かを分類し、定義するものです。今回のレポートは気候変動の緩和と適応に関するタクソノミーの案を示しています。その内容は詳細な上に、基準値の設定が高いので、日本でも様々な議論が起きています。今回のタクソノミーの案をどう受け止めればよいのか、サステナブル金融を推進する欧州委員会の取り組みの全体像を見ながら考えていきたいと思います。