【水口教授のESG通信】パーム油発電の誤解 - ESGに対する感度を問う

2017年5月、ノルウェー・レインフォレスト基金が報告書を公表し、パーム油を原料にしたバイオ燃料の問題に警鐘を鳴らしました。バイオ燃料は、気候変動防止の観点から化石燃料よりずっとよいと思われがちですが、パーム油のバイオ燃料の場合、実は化石燃料より何倍も悪いというのです。日本でも今後、パーム油発電が広がるきざしが見られますが、本当に大丈夫なのか、よく考えてみる必要がありそうです。

【水口教授のヨーロッパ通信】AIとESG評価

 欧州系のESG運用機関であるアラベスクがAIを使ったESG評価データの提供を始めました。機械学習とビッグデータを使ってAIが自動的にESG評価をする仕組みです。その特徴は、各企業のESG評価のスコアが日々変動することと、評価対象となった約4,000社の評価スコアが、3ヶ月遅れでウェブ上に掲載されることです。まるで株価ボードのようにESG評価の数値が日々変動する様子はインパクトがありますが、長期投資を前提とするはずのESG投資において日々変動するESG評価とは何を意味するのか、考えさせられます。AIによるESG評価が何をもたらすのか、考えてみたいと思います。

【水口教授のヨーロッパ通信】ロンドン証券取引所のESGレポーティングガイダンスが意味すること

 2017年2月、世界の主要取引所の一角であるロンドン証券取引所がESGレポーティングガイダンスを公表しました。その中では、8つの優先事項と題してESGレポーティングに関する8項目の解説がなされています。英国では戦略報告書によってESG情報の開示が義務化されていますし、GRIやIIRCなど、国際的なガイドラインやフレームワークも数多くあります。その中でロンドン証券取引所があえてガイダンスを公表した意味とは何でしょうか。ガイダンスの内容を読みながら考えてみたいと思います。

【水口教授のヨーロッパ通信】サプライチェーンの見えないリスク - 人権ベンチマーク評価とは何か

 国際労働機関(ILO)の調査によれば、世界で強制労働や奴隷的な労働の状況に置かれている人は2011年時点で2,090万人、非強制的なものも含めた児童労働は2012年時点で1億6,800万人に上る。そのほとんどは民間セクターであり、企業はサプライチェーンを通してそれらに関わるリスクがある。それは一種の人権問題である。従来、人権問題と言えばハラスメントや雇用差別など、社内的な問題をイメージすることが

【水口教授のヨーロッパ通信】気候変動情報開示の将来像 - 金融安定理事会タスクフォースの提言を読む

 金融安定理事会(Financial Stability Board: FSB)が設置した 「気候関連の財務情報開示に関するタスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures: TCFD)」 の提言が2016年12月14日に公表された。2017年2月12日までパブリックコメントを受け付け、3月中にコメントをFSBと共有した上で、6

【水口教授のヨーロッパ通信】工場的畜産のリスク - 動物愛護からESG課題へ

 工場的畜産(factory farming)とは、伝統的な農場ではなく、建物の中であたかも工業生産のように行われる畜産を意味する。これまでも動物の福祉(animal welfare)の観点から批判はあったが、投資家の視点からそのリスクに警鐘を鳴らす人がいる。プライベート・エクイティ(非上場株投資)のセカンダリー・マーケットのパイオニアとして名高いジェレミー・コラー(Jeremy Coller)氏

【水口教授のヨーロッパ通信】責任投資のフロンティア - RI Europeで何が話し合われたか

2015年6月2日と3日の2日間、ロンドンでRI Europeと題する大きなシンポジウムが開かれました。スウェーデンの金融市場・消費者問題担当大臣が印象深い講演をされたほか、エンゲージメントやESGの統合評価、年金基金等による運用機関の評価など、多くの問題が議論されました。「工業的畜産」の投資リスクなど目新しい話題も満載でした。その様子を報告します。