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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。  

 経済協力開発機構(OECD)は、現在のインパクト投資は「市場金利」と同等のリターンを得やすい分野に集中していると指摘した上で、インパクト投資を「支援を最も必要とする人々や国を対象とした社会・環境分野への投資」と定義することを提言した。この背景には、関連機関がインパクト投資のより明確な枠組みの策定に取り組んでいることがある。例えば、国際金融公社(IFC)はインパクト投資に関する運用原則のドラフト版を公表し、現在広くコメントを募集している。またIFC、PRI、OECDなどが参加する「インパクト・マネジメント・プロジェクト(IMP)」ネットワークは、投資家向けガイダンスの策定を目指している。

 OECDは最新の報告書「Social Impact Investment: The Impact Imperative for Sustainable Development」で、データ収集とインパクト測定に適用される国際基準の設定を訴えている。また、現在のインパクト投資の多くは金融サービス、エネルギー、住宅など比較的リターンの得やすい分野を対象にしていると指摘している。そして、最も支援を必要としている発展途上の地域の人々や国を対象とした開発、社会および環境の中核分野への投資を社会的インパクト投資と定義づけるよう呼びかけ、インパクト投資ファンドは測定可能なインパクトをもたらすことを主な目的にすべきとしている。 OECDのモレイラ・ダ・シルヴァ開発協力局長は、「問題はインパクトをいかに定義し、測定するかという点だ。公的機関・民間組織を問わず、国によって各要素の測定基準は異なっている。『インパクトウォッシング』のリスクに対処するためにも、公的機関は基準を定め、その順守を徹底させる責任を負っている」と述べている。OECDの報告書は、インパクト投資に関する公式な評価方法を採用している45か国を挙げ、中でもEU、英国、マレーシア、フランスが先頭に立っているとしている。その上で、各国政府がインパクト投資を促すための経済的および規制上のインセンティブ拡大に向けた働きかけを強め、市場が巧く機能するために必要な法的枠組みを整備すべきであると強調している。

 インパクト投資のGlobal Steering Group(GSG)の議長を務めるロナルド・コーエン卿は上記報告書が発表された際、OECDは加盟国政府への情報伝達の役割を担っているだけに、こうした活動を主導することには大きな意味があると指摘した。さらに「OECDの調査報告書は信頼性が高いことから、今回の発表はインパクト投資のあり方を幅広く変える可能性がある」と付け加えた。報告書でインパクト投資の対象が「リターンを得やすい」分野に集中している点に懸念が示されことについてコーエン卿は、「インパクト投資の市場は既に進化を遂げており、最も困難な社会的課題を抱えている人々を受益者とする投資にインセンティブを与えるしくみができている」と説明した。また、公営住宅やフィナンシャル・インクルージョン(包括的金融)など、いわゆる「手を出しやすい分野」に取り組むことの重要性を軽視すべきではないと述べている。「あらゆる分野には、我々が取り組むべき数多くの社会・環境面の課題がある。インパクト投資は、全ての分野においてインセンティブをもたらすツールとして具現化しつつある」と指摘する。

 GSGは2019年G20の議長国を務める日本の政府の高官ともインパクト投資について協議を進めている。GSGのCEOであるアミット・バティア(Amit Bhatia)氏は「ビジネス、投資、政策策定、消費行動を決定する上で不可欠な評価基準として、リスク・リターンだけでなくインパクトも認めるようG20に働きかける」と述べ、「公正な『インパクトエコノミー』を世界で広く受け入れられるようにするためには、アニュアルレポートの作成を義務づける必要がある。インパクト投資は地球規模の問題解決に取り組むもので、公共の利益と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて民間資本を活用する道を開く」としている。


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【参照】
Responsible Investor, Vibeka Mair「OECD critical of impact investment for focusing on market rate returns」2019年1月22日(2019年2月7日情報取得)


QUICK ESG研究所