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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。  

 運用資産総額230億ユーロを抱える投資家ネットワークの「Shareholders for Change (SfC)」が、欧州の大手通信会社の税慣行をテーマとしたエンゲージメントを開始する。SfCはこれに先立ち、通信業界の租税回避に関する調査レポートの作成をノッティンガム大学のトマソ ファシオ(Tommaso Faccio)氏とドイツのコンサルティング会社であるMerian Researchの クラウディア アペル(Claudia Apel)氏およびマウロ メッジョラーロ(Mauro Meggiolaro)氏に委託した。「Bad Connection」と題されたこのレポートでは、多国籍企業として初めて国別報告書(Country by country reporting、以下CBCR)を自発的に導入したボーダフォン社の透明化された業務慣行を取り上げるとともに、欧州の他の競合各社の実態を分析している。分析対象となったのはオレンジ、テレコム・イタリア、ドイツテレコムである。CBCRは事業展開する国別に収入、利益、税金、従業員数、資本金などの詳細を報告するものである。

 レポートによると、現行のグローバルな課税制度の下では、企業は移転価格を通じて税率の高い国から低い国に利益を付け替えることができるため、企業の税慣行が合法的であったとしても「倫理的には議論の余地がある」ことから、社会的責任投資や機関投資家の動向に影響を及ぼす可能性があると指摘する。レポートは、「ボーダフォンと競合する他の通信大手はCBCRを導入していない。その理由は、他社がボーダフォンより積極的に節税対策を講じているからかもしれない」と疑問を呈する。レポートでは、オレンジ、テレコム・イタリア、ドイツテレコムの各社はCBCRを導入していないため、一般公開されている情報に基づいて分析を行った。その結果、これらの通信会社はいわゆる「導管国(IMFで使われる業界用語で税率の低い国を示す)」に設立した関連会社を通じて、「租税回避につながるグループ内取引」を行っている可能性があることがわかった。

 レポートの目的は通信会社が回避したとみられる課税額を特定または数値化することではなく、「複雑な租税構造がもたらしうる潜在的な影響を株主が把握できない現状」を明らかにすることにあると述べている。従って、報告書の中核部分は「株主がこれら通信グループの経営陣に問いたい」であろう質問で構成されている。これには、コンサルティング会社、会計事務所や税理士事務所など、租税回避を支援する会社に支払われた手数料についての質問も含まれる。「これらの会社は全体の構図の中で非常に重要な役割を担っている」とSfCに参加するBank for the Church and Caritasのサステナビリティリサーチ部門を統括するトミー・ピエモンテ氏は指摘する。同氏によると、SfCは第一段階として、株主総会などの機会を利用して報告書に提示した質問を通信各社に投げかけることからエンゲージメントを開始する。また、投資家は納税義務を緊急課題として捉えておらず、関心も薄いと指摘した。

 現時点でこの問題を取り上げる投資家はごく少数である。そのうちの1つであるノルウェー銀行インベストメント・マネジメント(以下、NBIM)はレスポンシブル・インベスターの取材に対して、運用する総額1兆ドル相当の公的年金基金のグローバルポートフォリオの投資先企業のうち上位500社に「Expectation Document on Tax and Transparency(CBCRの導入を要請する、税慣行と透明性に関する要望書)」を送付したことを明らかにした。またNBIMは、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が主導してフェイスブックに責任ある税の基本原則の導入を求めた株主提案に賛成票を投じた数少ない投資家の1つでもある。


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【参照】
Responsible Investor, Carlos Tornero 「New Shareholders for Change group to engage European telecoms on tax avoidance」2018年12月6日(2018年1月9日情報取得)


QUICK ESG研究所