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 2018年11月、スウェーデンの公的年金資金の運用を担うAP基金に対し、持続可能な投資の分野で「模範的存在」になることを求める公的年金制度の大幅な改正法案がスウェーデン議会で可決された。改正法は2019年1月1日に施行され、AP基金のうちAP1からAP4までの4つのバッファーファンド―運用資産総額は計1兆4,000億クローネ(1,360億ユーロ)―が対象となる。

 改正法では第一にAP基金がESG投資の「模範」となるよう法的に求めるとしている。ただ、その明確な定義は示されておらず、詳細を策定するためのワーキンググループが設立された。ワーキンググループの主要メンバーは、AP基金の代表者で構成される倫理委員会(Council on Ethics)のメンバーやそれぞれの基金のCEOが務めているとみられる。同グループは持続可能な投資をめぐる共通認識を構築する作業に1年をかけ、2019年にはその内容を公表、施行する。また、ESG関連トピックの評価および報告方法の標準化についての議論も進めており、それが導入されればAP基金は情報の比較や共有がしやすくなる。

 持続可能な投資をめぐっては、ここ数ヵ月間に各AP基金が相次いで革新的な動きを見せている。AP1は新興国株式ポートフォリオにおいて、ESGにフォーカスしたRFPの作成および運用委託先の再選定に着手していると報告した。またAP2は、レスポンシブル・インベスター(RI)が実施した社債に関するウェビナーで、ESGに重点を置く社債の新たなベンチマークを来年初めに発表する計画を明らかにし、既に数ヵ月前から自らのアクティブ運用ポートフォリオでそのモデルを採用していると述べた。2018年6月にはAP4が気候変動への対応を理由に石炭関連企業20社への投資を引き揚げたことを発表している。

 改正法はAP基金に持続可能な投資を義務付けることを盛り込んだほか、アセットアロケーションの基準を再定義することで、ESG重視の長期投資への支援を後押ししたともいえる。例えば、投資適格債の組み入れ比率の目標が変更され、これまで資産全体の30%とされていた最低組み入れ比率は20%に下げられる。注目すべきは、非流動性資産の組み入れ比率の上限見直しだろう。従来は、不動産の組み入れ比率に上限がない一方、プライベートエクイティやインフラを含むその他の実物資産の組み入れ比率には5%の上限が設けられていた。改正後は後者の上限が40%へと大幅に引き上げられ、ここに不動産も含まれる。

 一部のAP基金はこれを新たな投資機会と捉え、他に先駆けてチャンスを活かそうとしている。中でもAP4は、制度改正に備え、2018年の夏にオルタナティブ投資の統括ポストを新設した。アセットアロケーションに関する追加のルール変更については、2019年春の議会で審議が始まり、同年7月1日付で改正案の第2弾が施行される見通しである。

 

※スウェーデンの公的年金基金(Allmänna Pensionfonden)
 スウェーデンの公的年金保険制度は賦課方式に基づく年金制度と、加入者自ら運用先を選択する積立方式の年金制度に分かれ、6つのファンド(AP1, 2, 3, 4, 6, 7)が運用を担っている。
 AP1,2, 3および, 4は賦課方式の年金制度における新規流入積立金の運用を担うとともに、人口動態や経済的ショックによる給付の変動を吸収する役割をもつため、バッファーファンドとも呼ばれる。


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【参照】
Responsible Investor, Sophie Robinson-Tillett「Swedish parliament OKs sustainable investment reforms for AP funds」2018年11月29日(2018年12月28日情報取得)


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