画像
RIロゴ

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事(UNEPFIのアッシャー代表の寄稿記事:Op-Ed: Eric Usher, UNEPFI Head)をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は国連グローバル・コンパクト(UNGC)と共同で2006年に責任投資原則(Principles for Responsible Investment、以下PRI)を公表した。2018年11月時点でPRIに署名し、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を投資判断に組み入れている機関投資家は2,000を超えている。

 2012年には、UNEP FIは「持続可能な保険原則(Principles for Sustainable Insurance)」を策定し、保険業界と協力してレジリエントかつ包括的でサステナブルなコミュニティおよび社会の構築に向けて貢献度を高めるべく取り組んできた。現在、世界の保険料等収入のうち構成比で25%を超える保険会社および再保険会社がPSIに署名し、ESG関連のリスクと機会を考慮した保険事業に取り組んでいる。

 現在、UNEP FIは世界の28銀行(預金残高は計17兆ドル)と連携し、PRIおよびPSIを参考に「国連責任銀行原則(Principles for Responsible Banking)」の原案を作成している。

 「国連責任銀行原則」は 国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定および関連する各国の取り決めに基づく社会的ゴールに銀行業界を整合させるための枠組みとなる。銀行融資額が世界の資金供給の3分の2を占めるなか、この新原則は銀行が持続可能な開発事業に資金を供給する力を高め、ベストプラクティスを世界中で共有するメカニズムを提供することで業界全体の強化につなげられるように考案されている。

 現時点の草案では、まず銀行に自行の業務活動や商品・サービスが、社会、経済および環境にどのように重大な影響(プラス面とマイナス面を含めて)を及ぼしているか総合的に評価するよう求めている。さらに新原則に署名した銀行には、影響に対する管理目標を定めた上で、目標達成の進捗状況を報告することも求めている。これらを効果的に実践するためには、銀行はステークホルダーと協力して自行の業務、商品・サービスが及ぼす影響を正確に把握し、マイナス影響を抑える一方でプラス影響を拡大するよう努力する必要がある。また、銀行が新原則に沿った取組み内容を公表し、社会からの信頼を得るためには、説明責任と透明性が重要である。そのため、銀行には顧客、機関投資家、民間非営利組織(NGO、NPO)を含む全てのステークホルダーに情報を公開し、報告内容の精査を受けることが求められる。

 「国連責任銀行原則」は、2019年9月にニューヨークで開かれる国連総会で発足する予定である。この新原則には、グローバルなビジネス展開の有無、資産規模、サステナビリティの取り組みの度合いにかかわらず、どの銀行でも署名できる。また、各行の現状に合わせて活動を開始することができる。例えば、サステナビリティの取り組みを始めたばかりの銀行は新原則の枠組みを使うことで、責任ある銀行業務でより高い成果を上げられる体制の確立に向けた道筋をつけることができる。成熟したプロセスを持つ銀行はさらにその強みを生かし、責任ある銀行業務の範囲を拡大できる。

 また、銀行だけではなく全てのステークホルダーも原則に署名することで、その理念を支持する姿勢を示すことができる。銀行の場合、署名する意志がある旨を表明するだけでもよい。投資家やその他のステークホルダーが署名することは、将来の持続可能な銀行システムを構築するためのツールとして原則を支持することを意味する。持続可能な未来に向けて銀行業界が寄与度を高めると同時に、自らのコミットメントを社会に説明するためにもこうした枠組みは必要である。

 新原則の目標は、世界中の銀行を社会のニーズに適合するよう変革し、持続可能な未来を達成する上で主導的役割を担う存在に変えることである。投資家にとっては、どの銀行が将来最も成功を収められる可能性があり、自ら設定した責任ある投融資目標に沿って活動しているのかを見極めるための指標となる。銀行、保険会社、投資家が互いに協力することは、企業と顧客が、未来の世代に負担を掛けることを避けつつ共に繁栄する、包摂的な社会の形成の一助となる可能性がある。


RIロゴ

【参照】
The Head of the UN Environment Programme Finance Initiative, Eric Usher 「Op-Ed: Eric Usher, UNEPFI Head: The launch of the Principles for Responsible Banking」2018年11月7日(2018年12月4日情報取得)


QUICK ESG研究所