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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。
 

 投資リスクとリターンの観点から畜産のあり方について問題提起する「FAIRR」が、欧州議会が畜産農場での予防目的の抗菌剤使用を2022年以降禁止する新たな決議を採択したことに歓迎の意を表した。FAIRRとは、「Farm Animal Investment Risk & Return」の頭文字を取ったもので運用資産総額が9兆2,000億ドル(8兆1,000億ユーロ)であり、多くの投資家が参加している。

 新規制の下では、健康な畜産動物に対する予防目的での抗菌剤の集団投与や規定外の抗菌剤使用が禁止になる。同決議案が法案化されるためには、加盟国閣僚級の理事会で採択される必要があるが、今年(2018年)初めに開催された理事会で、暫定的承認が得られている。

 畜産動物に対する抗菌剤使用は、FAIRRが2015年12月に発足した時から対象としている問題である。FAIRRによると、世界の抗菌剤の70%以上は畜産農場で使用されている。その目的は、動物の生活環境の悪化を防ぎ、突発的な病気の発生や抑制が難しくなる状況を避けることにある。FAIRRは、こうした抗菌剤の使い過ぎが耐性菌の発生を加速させ、さらには人への感染拡大を招き、抗菌剤が人間にも動物にも効かなくなることを示す「明確な証拠」があると訴えている。医学界は、この問題は近代医学の基礎を揺るがしかねないとも警告している。

 欧州緑の党の欧州議会議員であるモリー・スコット・カトー(Molly Scott Cato)氏は、新規制下でも抗菌剤は引き続き「入手可能であり、必要な時には効果を発揮する」としている。しかい、一部の畜産農家グループは「過度な制限である」と批判している。

 FAIRRが株主として初めて行ったエンゲージメントは、マクドナルドなどの大手食品企業に対するものであった。FAIRRは企業に対し、グローバルな食肉サプライチェーンにおいて、人間の健康維持に不可欠な抗菌剤の非治療目的での使用を段階的に廃止するよう求めた。エンゲージメントの対象となったグローバル企業20社のうち19社は、抗菌剤に関するスチュワードシップを既に投資方針に盛り込むなど、大きな成果を上げた。

 FAIRRを発足させた、英ライベート・エクイティ大手のコラーキャピタルを率いるジェレミー・コラー氏は、「欧州議会が畜産動物への抗菌剤使用を制限する新議案を採択したことは必然的な結果であり、歓迎すべきだ。責任ある投資家はFAIRRを通じ、3年もの間、企業へのエンゲージメントを続けてきた。その中で、(企業に対して)抗菌剤をめぐる今後の規制の流れを説明し、抗菌剤耐性菌の発生に伴うリスクの管理をサポートしてきた」と述べている。また、新規制は「畜産動物への抗菌剤使用が、健康な家畜集団への予防的投与から、より責任ある使用へと移行するための大きな一歩になる」と指摘している。


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【参照】
Responsible Investor, Daniel Brooksbank   「Farm animal investor network welcomes new EU legislation on antibiotics」2018年10月30日(2018年11月19日情報取得)

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