トマス・ディナポリ
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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 ニューヨーク州のトマス・ディナポリ会計監査官は、米石油メジャーのエクソンモービルが、気候変動への取組みを求める株主決議に十分な対応を示さなかったとして、同社からのダイベストメントも辞さない構えを明らかにした。

 2,090億ドルの資産を運用するニューヨーク州退職年金基金の運用委員長も務めるディナポリ氏は、レスポンシブル・インベスターの取材に対し、同基金は「エクソンへのエンゲージメントは続けるのの、同社への投資を見直す可能性もある」と述べた。

 ニューヨーク州退職年金基金は「Climate Action 100+」(温室効果ガス排出量の多い世界の企業をターゲットにした機関投資家イニシアチブ)の一環で、エクソンへのエンゲージメントを主導している。またニューヨーク州退職年金基金は2017年、英国国教会寄付基金(運用資産総額83億ポンド)と共同で、エクソンに対して「2040年以降の世界の気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ」に沿った気候変動リスクへの対応状況の報告を求める議案を提出した。同様の議案は2016年にも提出している。2017年度のエクソンの年次株主総会では、投資運用最大手のブラックロックやバンガードを含む68%の株主から賛成票を得た。これを受け、エクソンは2017年12月、「エネルギー需要に対する感応度、2℃目標に基づくシナリオが及ぼす影響、将来の低炭素社会の位置付け」を含む情報開示を「強化」することを公表した。ディナポリ氏は当時、「この投票結果は、低炭素社会への円滑な移行の実現に向けて取り組む投資家にとって、かつてない勝利である」として歓迎していた。 

 しかし、2018年2月にエクソンが気候変動関連の報告書を公表すると歓迎の状況は無くなった。ディナポリ氏はエクソンの報告書は、「楽観的な前提」に依存しており、「一般論ばかりが語られ、会社として低炭素社会にいかに参加していく方針なのか具体的な説明がほとんどない」とし、その後4月に会社側に追加の質問状を送り、内容の乏しい気候変動報告書はどのような予測に基づくものなのか問いただした。その結果、エクソン側がコミットメントを強めたことから、2018年の株主総会では同社に「2℃目標」に沿った株主議案を再提出することを見送った。

 ディナポリ氏はレスポンシブル・インベスターに対して、「石油・ガスセクターへのエンゲージメントは「無意味である」と批判する声には同調しない。しかし、特に我々の要請に応じない企業に対しては、今後異なるアプローチをとる可能性も否定できない」と語った。また、エクソンのような企業へのエンゲージメントに何らかの期限を設けているか質問すると、「厳格な期限はなく、それが短期間になることもない」と答えた。


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【参照】
Responsible Investor, Paul Verney  「New York State pension fund open to divesting Exxon, says Comptroller」2018年10月19日(2018年11月9日情報取得)

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