プラスチックによる深刻な海洋汚染が懸念されている。ゴミとして海に流れ込むプラスチックは年間800万トン(トラック1台分の積み荷に相当するプラスチックごみを、毎分、海に投棄したときと同等の量)を超え、2050年までに海洋中に存在するプラスチックごみの総重量は、海に生息する魚の総重量を超えると予想される[1]。

 国連「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲット14.1では、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」と目標が掲げられているが、多くの研究により、海洋ごみの大半はペットボトルや容器、ビニール袋などのプラスチック製品で、これらの大半は陸上から川を通じて流出したものであることが明らかになっている。

 UNEP(国際連合環境計画)によると、海洋汚染を引き起こす使い捨てプラスチック製品の生産を禁止したり、使用時に課金したりする規制を導入済みの国・地域は60以上に上る。国レベルの規制ではないものの、地方自治体がレジ袋の禁止などの措置を導入する動きも相次いでいる[2]。2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボワ・サミットでは、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5か国とEU(欧州連合)が、リサイクル率など達成期限つきの数値目標を定めた「海洋プラスチック憲章」に署名した。

 こうしたグローバルな潮流を背景に、プラスチック汚染課題への機関投資家の関心が高まっている。2018年6月、国連責任投資原則(PRI)は署名機関と外部のステークホルダーに参加を呼びかけ、プラスチックが投資家にもたらすリスクと機会について議論し、この会議の要約記事を公表した。

 要約記事によると、会議では、英国のエレン・マッカーサー財団と資産運用会社のシュローダー、米国サーキュラーエコノミー投資ファンドのClosed Loop Partners、欧州委員会、ユニリーバがパネルディスカッションで登壇し、投資家と企業が直面する課題と機会を明らかにした。 

 投資のリスクと機会について、シュローダーはプラスチック製容器包装のバリューチェーンを例に挙げ、「原材料である石油・ガス」、「化学物質の製造」、「包装材の製造」、「最終消費財の製造」、「廃棄物回収およびリサイクル」の各段階でリスクを把握し投資機会を特定している、と述べた。パネリストらは、投資家がプラスチックのリサイクルを促進する企業への投資選好を強めていることに触れ、「投資機会を生んでいる」と指摘した。リスクに関しては「投資家は、世界のトレンドが投資対象とする各業界にどのような影響を及ぼすのか見極める必要がある。中でも消費者向け製品のメーカーは、最大のリスクにさらされている」との意見が出された。

 会議では、プラスチックごみの回収、選別およびリサイクルを行うインフラへの投資が不足している、との考えでパネリストの意見は一致した。プラスチック製品と最終的な処分の段階を紐付けする必要があると指摘する声もあった。例えば、製品が有機物もしくはコンポスト化可能であっても、それらを回収して適切な場所で分解しなければ意味はない。適正な回収システムが利用できなければ、プラスチック製品は最終的に焼却処分される可能性があり、製品をデザイン・製造した当初の意図が活かされないためである。

 データと指標に関する指摘もあった。企業によるプラスチックに関するデータは一貫性および安定性に欠け、データサービスプロバイダーもプラスチック関連の具体的な指標は提供していない。投資家が理解、解釈、比較できるような基準を定めることも必要である、との声が上がった。企業は、データの照合や自社のプラスチック対策の評価を行う際にも課題に直面している。透明性に問題がある一部の国・地域からデータを取得することが難しいからである。また、投資家が求めているのは明確な定義だけでなく、定量化および比較可能なデータである。定性的な情報からはプラスチック対策における企業の実績および能力を知ることもできる。

 これまで、プラスチック包装のリサイクルの推進や再生プラスチックの利用拡大は、企業の循環型社会への移行状況を評価する際の指標になると考えられてきた。現在企業が設定している主な目標やコミットメントには、包装材に占める再生含有物の割合のほか、リサイクル、リユース、コンポスト化可能な包装材への切り替えなどが含まれる。パネル参加者は、ある特定のKPI(重要業績評価指標)に廃棄物処理プロセスに係るコストを組み入れるまたは関連づけることで、循環型社会への移行状況を測る指標を作成できるかどうか議論した。しかし最適なソリューションとなるものは見つからず、単独の指標もできないとの結論に達した。また、循環型モデルの定義を定め、意図しない結果を招いていないかどうか検証するシステムを設ける案も出された。
 

【参照】
[1] United Nations, The Ocean Conference 「Factsheet: Marine Pollution 」2017年6月5日-9日(2018年8月31日情報取得)
[2] UN environment「SINGLE-USE PLASTICS A Roadmap for Sustainability」(2018年8月31日情報取得)
PRI 「How can investors help create a plastics economy that works? Event roundup」2018年7月13日(2018年8月31日情報取得)


【関連記事】
QUICK ESG研究所「【RI特約記事】「As You Sow」が企業にプラスチック汚染への対策を求める投資家連合を発足」2018年7月12日
QUICK ESG研究所「小魚がプラスチックごみを食べる理由」2017年9月12日


QUICK ESG研究所 小松 奈緒美