画像

 グローバルコンサルティングファームのマーサー(本社、ニューヨーク)は2018年6月、欧州年金基金の資産運用の実態を調査した年次レポート“EUROPEAN ASSET ALLOCATION SURVEY 2018”を公表した。本レポートは、欧州12か国、運用資産総額が約1.1兆ユーロにのぼる912の年金基金から得た回答に基づいており、「気候変動がもたらす投資リスクを考慮すると回答した欧州年金基金は、2017年の5%に比べ、2018年は17%に急増した」と報告している。

 マーサーはレポートで「英国年金規制当局(The Pensions Regulator)や欧州委員会といった規制当局の動き、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言―これらが投資家に対して、気候変動に伴う物理的および規制リスクを考慮するよう後押しした」と指摘している。また、気候変動のリスクを考慮すると答えた調査対象のうち、3分の2を上回る69%がTCFDによる(アセットオーナーに焦点をあてた)提言も考慮していると回答したことを紹介している。これを踏まえ「金融業界が主導したTCFDの枠組みと提言は、投資家が気候変動リスク(低炭素化社会に伴う移行リスクや気候変動がもたらす潜在的な物理的リスク)を投資意思決定時に考慮するよう、促進し続けるであろう」と言及している。

 調査結果によると、投資に際してESG要素を考慮している年金基金は40%であった。ESG要素を考慮する主な要因としては、「規制に対応するため」と答えた機関が34%と最も多かった。続いて「ESGリスクが財務上、重要課題(マテリアリティ)であるため」と答えた機関が25%、「風評リスクへの考慮やボードメンバーが関心を寄せているため」と答えた機関が18%であった。マーサーは、規制当局によるESG課題への関与や一般市民による気候変動課題への関心の高まりから、「ESGリスクを考慮しないことは、受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)違反と判断される日も近い」と述べている。

 

【参照】
Mercer「EUROPEAN ASSET ALLOCATION SURVEY 2018」2018年6月(2018年8月8日情報取得)
※レポートのダウンロードには無料の会員登録が求められます

【関連サイト】
Mercer「MERCER RESEARCH REVEALS MORE EUROPEAN PENSION FUNDS CONSIDER FINANCIAL RISKS OF CLIMATE CHANGE」2018年6月(2018年8月8日情報取得)

【関連記事】
QUICK ESG研究所「【水口教授のESG通信】サステナブル金融とは何か - 欧州委員会アクションプランの意味すること」2018年4月27日
QUICK ESG研究所「【水口教授のESG通信】サステナブル金融への挑戦 - EUハイレベル専門家グループの提言」2018年2月28日
QUICK ESG研究所「欧州委員会の専門家グループによるサステナブル・ファイナンスの実現に向けた提言」2017年11月1日
QUICK ESG研究所 「【ヨーロッパ】欧州議会、環境リスクを年金運用に組み込む指令案を可決。2.5兆ユーロに影響か」2016年2月22日
QUICK ESG研究所 「【国際】マーサー、気候変動による投資リスクを浮き彫りに」2015年7月25日


QUICK ESG研究所 小松奈緒美、中村俊之