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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。
 

 株主行動を通じて環境や社会に関する責任を企業に求めるNGO「As You Sow」は、消費財を扱う大手上場企業にプラスチックごみとその汚染がもたらす脅威への対策を求める国際的な機関投資家連合「Plastic Solutions Investor Alliance」(以下、連合)を発足したと発表した。声明では、プラスチック汚染は企業ブランドを脅かす明確なリスクになるとし、有力企業と連携しながら、新たな企業コミットメント、プロジェクトおよび方針を通じて解決策を見つけると宣言している。声明に署名した4か国25機関投資家が運用する資産残高は計1兆ドル(約110兆円)に上る。

 As You Sowは、アクティアム、アビバ・インベスターズ、カンドリアム・インベスターズ・グループ、Dignity Health、ドミニ・インパクト・インベストメント、ハーミーズ・インベストメント・マネジメント、インパックス・アセット・マネジメント、Mercy Investment Services、NEI Investments、ロベコ、ウォルデン・アセット・マネジメントをはじめ、社会的意識が高いことで知られる多くの投資家がこの連合への参加を決めたことを歓迎している(全参加機関のリストは声明文を参照)。

包装容器に焦点

 連合はまず、プラスチック製の包装容器に焦点を当てる。プラスチック材料の25%は包装容器に使われており、使い捨ての用途としては最大で、それらがもたらす悪影響も甚大である。包装容器の大半が使い捨て用で、すぐに捨てられる。一方でこうした物質は、一部は分解されても数百年にわたって自然環境にとどまる可能性がある。そのため、しばしば取り上げられているように、海洋生物を脅かすほか、風評被害に伴う深刻な経済的損失も生じかねない。例えば、2018年6月初めに活動家グループが行ったブランド監査では、ごみ処理インフラが十分整備されていない国では、複数の国際的な大手消費財ブランドの製品の包装容器が、回収ごみの最大の発生源の1つになっていることがわかった。また、包装容器のデザインの見直しや、使用済み容器ごみの大幅な軽減を義務づける新たな政策が制定されれば、さらに大きな経済的打撃を及ぼす可能性もある。

劇的な進展

 過去3年間に発表された科学的データには改善がみられる。想像していたよりはるかに問題が深刻化していたことが、ここ数か月における数々の劇的な進展に繋がったといえる。その結果、プラスチック汚染に対する一般社会、メディアおよび政府の意識が高まり、以下の動きが起きた。

  • 世界で環境的、社会的な公正を推進する1,000を超えるNGOが「ブレイクフリープラスチック」という新たなムーブメントを形成し、使い捨てプラスチックの削減と廃棄物ゼロ原則・プログラムの採用を求めている
  • 2017年12月にケニア・ナイロビで開催された国連環境総会で、世界の海洋からプラスチック汚染をなくすことを目指す決議案が採択され、200か国近くが署名した
  • 2018年1月に欧州委員会が公表した「プラスチック戦略」は、2030年までにEU域内の全てのプラスチック包装をリサイクル可能な素材に置き換え、使い捨てプラスチックの消費削減を求めるほか、プラスチック製品に課税する案も提示している
  • 欧州のスーパーマーケットはプラスチックを一掃した売り場を導入している。英国の小売業者アイスランドは、さらに一歩踏み込んで、2023年までにプラスチック包装の使用を全面的に止めると約束している
  • 2018年6月のG7サミットで、米国、日本を除く5か国は、2030年までにプラスチック包装の55%をリサイクル・リユースし2040年までに100%「回収」するほか、使い捨てプラスチックの不必要な使用を減らすことを目指すプラスチック憲章に署名した

 

 社会・環境問題に関心を持つ投資家から成る連合のネットワークは、多くの企業との長期的な関係を持っており、こうした動きをさらに促進させるものとなるだろう。プラスチックは有効利用される場合も多いが、環境への影響が十分考慮されないまま、長年に渡って生産量が爆発的に拡大し続けている。2050年までに生産量は今の3倍になる見通しだが、現時点で回収・リサイクルされるプラスチック包装はわずか14%にすぎない。

 世界の海には、すでに1,500万トン相当のマイクロプラスチックが存在し、年間400~1,200万トンのペースで増え続けている。何の対策も講じられなければ、2050年までに魚類を上回る量のプラスチックごみが海に漂うことになると予測する科学者もいる。その影響を受けている生物は700種近くに上り、漁業・観光業の損失や海岸の清掃コストを含めた海洋生態系全体の被害額は130億ドルと推計される。また、ほぼ全てのプラスチックは化石燃料を原料としている。世界の年間炭素収支に占めるプラスチック業界の温室効果ガス排出量の割合は、2050年までに15%に達するとみられ、ネガティブな意味で地球温暖化へ大きく寄与している。

プラスチックの使用拡大ペースの把握が必要

 プラスチック容器はリサイクルができない、あるいは安全に大量の埋め立て処理ができない。そのため、企業や社会は、プラスチック使用の継続的な拡大ペースを慎重に見極める必要がある。中でも、使い捨てのプラスチック容器を注視すべきである。各国政府や業界がプラスチック容器の5分の1をリサイクルに回すことすらできず、2050年にプラスチック生産量が3倍に増えると想定した場合、それまでにプラスチック汚染から河川や海を守るための仕組みが整うとは考えにくい。

 プラスチック汚染の削減は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のうち複数項目―「つくる責任、つかう責任(SDG 12)」「海の豊かさを守ろう(SDG 14)」「陸の豊かさも守ろう(SDG 15)」「すべての人に健康と福祉を(SDG 3)」「住み続けられるまちづくりを(SDG 11)」―の達成に向けた明確な前進を意味する。連合はまず、国際的な大手消費財メーカー4社(ネスレ、ペプシコ、プロクター&ギャンブル、ユニリーバ)との高レベルなエンゲージメントに取り組む。製品にプラスチック容器を使用している企業はこうした課題を認識していることを明示し、それらの解決に向けた行動を優先させる必要がある。連合は4社をはじめとする多くの企業に以下の点を求めていく。

  • プラスチック容器を極限までリサイクル、リユースまたはたい肥化可能なものに移行
  • プラスチック容器の年間使用量の開示
  • プラスチック使用の削減目標の設定
  • プラスチック容器(特に使い捨て容器)の代替品の開発
  • 事業展開する市場におけるプラスチック容器の回収・リサイクルまたはたい肥化に係る費用負担と、その円滑化に対する責任と主導的役割の自覚(生産者責任)
  • プラスチックごみの削減に向けた社会政策の支援と生産者責任の拡大
  • テクノロジーの可能性と問題解決のイノベーションに関する調査の促進  

 

筆者: Conrad MacKerron (As You Sow シニア・ヴァイス・プレジデント)


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【参照】
Responsible Investor, Conrad MacKerron(Senior Vice President at As You Sow)「As You Sow launches investor alliance to engage companies on plastic pollution」2018年6月15日(2018年7月12日情報取得)

【関連サイト】

As You Sow「OCEAN PLASTICS」(2018年7月12日情報取得)
breakfreefromplastic.org「Big brands shamed for plastic pollution at global summit; Green group calls for accountability, drastic reduction」2018年6月13日(2018年7月12日情報取得)

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