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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。
 

 運用資産総額8,170億ポンド(約120兆円)におよぶ投資家グループが、FTSE100指数に採用されている企業のうち英国現代奴隷法の不遵守の疑いがある6社に対し、懸念を表明するレターを送付した(6社の企業名は非公表)。英国現代奴隷法は、21世紀における奴隷状態の労働や人身売買に対処するために世界で初めて制定された法律である。同法は、年間売上高が3,600万ポンド(約68億円)以上の企業に、自社の事業とサプライチェーンにおける現代奴隷の防止に向けどのような対策を講じているか報告を義務づけている。

 非営利活動法人「ビジネスと人権リソースセンター(Business & Human Rights Resource Centre: BHRRC)」は2017年10月、FTSE100採用企業を対象に、現代奴隷法にもとづく同年9月時点での各社の報告内容を調査し、その結果を10段階で評価したレポート「First Year of FTSE 100 Reports: Under The UK Modern Slavery Act: Towards Elimination?」を公表した。最高スコアの9点を獲得したのは小売り大手のマークス&スペンサー1社のみ、8点または7点を獲得したのは、小売り大手のセインズベリーやテスコ、通信大手のボ―ダフォン、一般消費財メーカーのユニリーバ、およびタバコ製造・販売企業のブリティッシュ・アメリカン・タバコであった。一方、調査対象の半数を超える52社のスコアは3点以下と振るわなかった。 現代奴隷への取り組みについて最低限の報告しかしていないと評価されたのは、投資運用会社のハーグリーブス・ランズタウン、ブックメーカー運営企業のパディパワー・ベットフェア、教材の出版および販売を手がけるピアソン、決済処理業者のワールドペイで、スコアは1点にとどまった。要請された報告をしていない、または反応を示していないと評価された金鉱会社のランドゴールド・リソーシズのスコアは0点であった。

 BHRRCの調査結果を受け、英国内務省独立現代奴隷コミッショナー(Anti-Slavery Commissioner)は、2017年12月末時点においても同法を遵守していない25社に対し、2018年初頭に書面で問い合わせた。その結果、今回のレター送付対象となった6社以外からは前向きな回答を得た。今回レターに署名したのは、独立現代奴隷コミッショナーの他、英国のラスボーン・グリーンバンク・インベストメント、アビバ・インベスターズ、エデンツリー・インベストメント・マネジメント、CCLA、フランスの公的年金基金Ircantec、および匿名の投資運用会社2社である。

 BHRRCのプロジェクトマネジャー、パトリシア・キャリア(Patricia Carrier)氏は、「政府は企業の現代奴隷法の遵守状況に傍観的であるため、コミッショナーや投資家による関与は極めて重要である。義務である報告書を公開していない企業の数は数千にのぼるほか、公開されている報告書も大半が最低限の基準さえ満たしていない。政府は、報告義務の履行を徹底させるために積極的な役割を担い、企業に行動を促すべきである」と述べている。また、Ircantecの運用アドバイザー、レティシア・タンク(Laetitia Tankwe)氏は、「2017年に策定した株主エンゲージメント方針の1つとして、サプライチェーンに責任を持ち、人権や児童労働といった問題に対処する旨を定めた。そのため今回、現代奴隷法に基づく報告義務の履行を促すレターに署名した」と述べている。

 独立現代奴隷コミッショナーは、「FTSE100採用企業には英国最大手の上場企業が名を連ねており、これらの企業が現代奴隷法を遵守し奴隷撲滅の一翼を担うことは、国民全ての利益にかなうことである。今回協働で送付したレターが、英企業に強いメッセージを送ることを望んでいる」との声明を公表した。


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【参照】
Responsible Investor, Vibeka Mair「Investors raise the ante on Modern Slavery Act at six FTSE firms」2018年6月5日(2018年7月11日情報取得)

【関連サイト】
Business & Human Rights Resource Centre 「First Year of FTSE 100 Reports: Under The UK Modern Slavery Act: Towards Elimination?」2017年12月1日(2018年7月11日情報取得)
Anti-Slavery Commissioner「Calling on FTSE 100 companies to combat modern slavery」2018年1月26日(2018年7月11日情報取得)
Anti-Slavery Commissioner「Joint investor action on corporate modern slavery statements」2018年5月30日(2018年7月11日情報取得)

【関連記事】
QUICK ESG研究所 「水口教授のヨーロッパ通信】現代奴隷法 - サプライチェーンの人権リスク -」2015年11月11日


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