RIロゴ
石炭の画像

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 2018年5月、英保険大手アビバの年次株主総会で、国際環境NGOのUnfriend Coalが、「世界の気温上昇を2℃以下に抑制する」というパリ協定の目標達成に向けた「投資先企業へのエンゲージメント活動を通じて石炭・タールサンド事業の縮小」というアビバの取り組みに対し、批判の声を上げた。

 Unfriend Coalのシニア・キャンペイナーであるルーシー・ピンソン(Lucie Pinson)氏は、Client Earthや350.orgなど多数の環境NGOからの支持を受け、ロンドンで開かれた年次総会に代理人として出席し、「アビバがエンゲージメントの対象を、脱炭素化を確実に進めるとみられる企業のみに限定しなかった理由」を問いただした。また、「炭素集約型事業の新規展開を計画している企業への投資を自動的に引き揚げるべき」と提案した。

 ピンソン氏は自著レポート『Aviva and coal: A very long engagement』の中で、英国の保険会社および資産運用会社による石炭・タールサンド関連企業への投資の実態を明らかにしている。なかでも「アビバのエンゲージメント活動は本質的に透明性を欠いており、エンゲージメント戦略を通じて実際の進捗状況を報告することも怠っている。これらの企業への投資を拡大すれば世界の気温上昇幅は4℃になりかねない」と述べている。 

 アビバは石炭発電所の開発事業者に総額6億2,100万ドルを投資しており、そのうち11社は90GW超の発電能力を持つ発電所を新設する計画がある。その一方、同レポートによると、環境NGOであるコール・スワームの調査では、パリ協定の目標を達成するために、アビバは石炭発電能力を毎年100GW縮小する必要がある、と指摘している。この投資総額には第三者向けに運用している資産も含まれており、6億2,100万ドルのうち5,280万ドルは株式、9,300万ドルは債券に投資している。また、石油発電所の新設を計画している事業者のうち5社はEU圏内に本拠を置き、ポーランドの石炭関連事業への投資額は2017年に3億1,000万ユーロから4億2,200万ユーロに増えている。レポートは、アビバは中国の華能集団に2,200万ドル、インドの火力発電公社に2,600万ドルそれぞれ出資していることも明らかにしている。 さらに、カナダでタールサンド開発事業を運営している、もしくは新規事業の立ち上げを計画している複数の企業への投資額が6億3,400万ドルを超えているとも指摘している。

 なお、ピンソン氏のレポートによると、これまでアビバは中国企業6社とインド企業2社(いずれも名前は不明)を含む石炭関連企業15社から計1,100万ポンド相当の投資を引き揚げ、ポーランドの電力会社であるPGE社と日本のJパワー(電源開発株式会社)のダイベストメントも実施している。

 年次総会では、ポーランドのNGOであるDY-OPMNのヤン・シュジンスキー(Jan Chudzyński)氏も「アビバが策定したダイベストメント・ポリシーが自社の資産と外部から運用委託された資産の両方に適用されていない理由」を聞いた。同氏がこの問題を指摘した理由は、アビバがポーランドの年金基金からの委託で、今なお1億2,200万ユーロ相当のPGE株を保有しているからである。この指摘については、ピンソン氏は「ポーランドの年金基金は運用総額の70%を国内資産に振り向けることが義務づけられているものの、ワルシャワ証券取引所の上場企業に対する最低投資額の規定はない」とレポートで言及している。

 アビバ・インベスターズのチーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサーのスティーブ・ウェイグッド(Steve Waygood)氏は「レポートや指摘事項について概ね異議はない。だが投資家として、投資先企業に変化を促し脱炭素化と再生可能エネルギーへの転換をサポートするため、積極的な役割を担えると信じている。変化を促すためには、単に投資から手を引くことより、エンゲージメントの方が強力なツールとなり得る。投資先の石炭関連企業に対して積極的なエンゲージメントを行い、気候変動対策として当社が定める基準を満たすよう働きかけている。それが満たされない場合、また顧客と投資一任契約を結んでいる場合には、これら企業への投資を引き揚げる構えだ。ダイベストメントは名誉の印ではなく、むしろエンゲージメントの失敗であると考えている」と述べた。


RIロゴ


【参照】
Responsible Investor, Carlos Tornero「Aviva under fire over coal engagement」2018年5月11日(2018年6月4日情報取得)
Unfriend coal「Aviva AGM analysis」2018年5月11日(2018年6月4日情報取得)


QUICK ESG研究所