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 イギリスとオランダに本社をおくユニリーバが、一般消費財メーカーとしては世界で初めてパーム油の調達元である300を超える一次サプライヤー、1400を超える搾油工場の一覧を開示した。

 パーム油はアブラヤシの果実から得られる植物油で、インスタント麺やお菓子といった加工食品、石鹸や洗剤といった消費生活製品、バイオ燃料などで利用されている。用途が幅広いパーム油は、他の植物性オイルと比較した単位面積あたりの収量が多く、その生産効率の高さから、近年需要が急速に拡大している。ユニリーバもマーガリンやアイスクリーム、石鹸やシャンプーといった多くの自社製品でパーム油を使用しており、その調達量は世界全体で生産されるパーム油(派生品を含む)の8%を占めている[1]。

 マレーシアやインドネシアを中心に拡大するアブラヤシ農園は経済的なインパクトと共に、熱帯林や泥炭湿地林などの森林伐採による生物多様性の消失、温室効果ガスの排出、土地を巡る先住民との紛争、生産地での劣悪な労働環境や児童労働といった社会的公正を欠く問題など、負のインパクトが指摘されている。

 ユニリーバは長年にわたり、このパーム油課題に取り組んできた。2004年には、マレーシアに本部を構える「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil、以下RSPO)」の設立メンバーとして加盟している。RSPOは、環境への影響に配慮した持続可能なパーム油生産の促進に取り組む非営利団体であり、2018年現在、3,300を超える加盟団体数を誇る。RSPOは持続的なパーム油生産に求められる法的、経済的、環境・社会的要件を「The RSPO Principles and Criteria、P&C(原則と基準)」としてとりまとめ、アブラヤシ農園から最終製品ができるまでの各工程で原則と基準を満たしたパーム油に認証ラベルの表示を定めている。

 また2013年には、保護価値の高い森林や炭素貯蔵量の多い土地を転換した新たな農園開発や泥炭地開発の禁止、労働環境や情報開示など、ユニリーバ独自の原則(Principles)を設けたSustainable Palm Oil Sourcing Policy(持続可能なパーム油ソーシング方針、以下方針)を策定した。2016年に改訂した方針では、目標として、2019年までに調達するパーム油を、RSPOの認証モデルであるセグリゲーション*など物理的な認証油100%とすると定めた。中間目標として、2017年は50%を掲げていたが、実際は53%と目標を達成している[2]。 

 ユニリーバは、「環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させる」という企業ビジョンを実現するため、注力する分野と目標、達成期限を設けたユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(Unilever Sustainable Living Plan: USLP)を2010年に公表している。「サステナブルなパーム油調達」は、このUSLPの中でも目標の一つとして掲げられている[3]。

 ユニリーバは「サプライチェーン情報の透明性と開示の促進は、積極的な課題の把握と、特定された課題への迅速で効果的な対応を可能にする」と説明している。2018年の世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)で、同社のポール・ポールマンCEOが「私たちは変化の最前線にいなければならない。そのため、ユニリーバは(サプライチェーン情報の)透明性の向上や、パートナーと協力したパーム油生産に関わる課題の改善に取り組んでいる」と述べた。また、チーフ・サプライチェーン・オフィサーのマーク・エンゲルは「抜本的な変革には、透明性の確保が必要である。今回の搾油工場一覧の開示が、産業界全体の新たな動きにつながることを期待している」と語っている[4]。 

*認証農園から生産された原料のみであることが保証された認証モデルのこと


【関連資料】
Unilever「2017 Palm Oil Mills」(2018年3月14日情報取得)
RSPO- Roundtable on Sustainable Palm Oil「About us」(2018年3月14日情報取得)
[1] Unilever「Transforming the palm oil industry」(2018年3月14日情報取得)
[2] Unilever「Unilever Sustainable Palm Oil Sourcing Policy – 2016」(2018年3月14日情報取得)
[3] Unilever「Sustainable sourcing」(2018年3月14日情報取得)
[4] Unilever「Unilever- News & Features, We take a radical step on palm oil supply chain transparency 」2018年2月16日(2018年3月14日情報取得)


QUICK ESG研究所 小松 奈緒美