RIロゴ
画像

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。
 

-運用資産350億ユーロ(約4兆5,500億円)を抱える有力機関投資家がシナリオ分析を導入へ-

 スウェーデンにある公的年金基金(バッファーファンド*)の1つであるAndra AP-fonden(以下、AP2基金)は、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Climate-related Financial Disclosure、以下TCFD)の提言であるシナリオ分析を活用し、気候変動に伴うリスクと機会を特定する計画を明らかにした。 

 AP2基金は、昨年(2017年)夏に公表されたTCFDの最終提言の影響を受け公開した気候変動レポートで、今回の計画の意図について触れている。また、同基金は今年に入り、「多様な気候変動シナリオを考慮した戦略的ポートフォリオや投資戦略のレジリエンスを分析すると共に、ポートフォリオ全体の戦略的なアセットアロケーションの選択肢に気候変動シナリオ考慮する可能性もある」との意向も示している。

 金融安定理事会(FSB、Financial Stability Board)が設立したTCFDの提案はシナリオ分析に焦点を当てており、シナリオ分析を「気候関連のリスクと機会が戦略に及ぼす影響を把握するための重要かつ有用なツール」と位置づけている。

  AP2のシニア・サステナビリティ・アナリストのクリスティーナ・オリヴェクローナ(Christina Olivecrona)氏はRIの取材に応じ「AP2基金は気候変動に関する投資家グループ(IIGCC)のワーキンググループの一員としてシナリオ分析に注目してきた」と述べている。同氏は英国ロンドンに本社を置く、BMO グローバル・アセット・マネジメントのビッキー・ベイクシ(Vicki Bakhshi)氏とIIGCCの共同議長を務めている。

 同氏は「シナリオ分析は簡単ではないと認めつつ、AP2基金がパリ協定の掲げる「2°C目標」という野心的な目標を達成するためには必要なツールである」と述べている。

 昨年、スイス政府の主導により79の機関投資家が任意かつ匿名でのシナリオ分析調査に参加し、自らが運用する株式および債券ポートフォリオの2°C目標達成シナリオについて検証した。 調査結果からは、同国の機関投資家が想定しているのは4~6°Cシナリオに近いことが判明したため、NGO、政治団体および宗教団体などは、分析結果の開示を求める声を上げている。 

 シナリオ分析は、AP2基金が気候関連リスクおよび機会に対するより総合的なアプローチ手段と考えているTCFDのフレームワークの一部に組み込まれている。そのため、同基金はシナリオ分析の採用を決めたのだ。 

 AP2基金によると、2017年秋に始まった同フレームワークの導入プロセスは「現在進行中」だが、既に同基金独自のアプローチと次にとるべきステップを特定することができている、という。 

 これまでは、気候関連リスクおよび機会の分析対象を、保有する上場株式に絞ってきたが、2018年の計画では、その他の資産クラスについても分析を開始する。 

 AP2基金は、比較対象とする指数を構築するモデルに、新たにESG要因を組み入れることも明らかにした。オリヴェクローナ氏は「これらの新しい指数が実用化されれば、ポートフォリオの変化に応じて各指標がどのような動きをするか分析し、比較できるようになる。当基金が参照する指標を決定する上で参考になるだろう」と述べている。

 気候変動レポートは、2017年度のアニュアルレポートと同時に公表された。アニュアルレポートでは、同基金が投資を通じて国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にいかに貢献しているかを開示している。具体的には、米州開発銀行(IADB)が発行するソーシャルボンドの購入(2,000万ドル)や、中南米諸国を対象に幼児教育の質の改善を通じて貧困撲滅に取り組むプロジェクトへの融資(SDG4)などが挙げられる。また、新興国の女性が起業に必要な資金にアクセスできる機会の拡大を目指す「女性起業家の機会創出ファシリティ(WEOF )」にも3,000万ドル出資している(SGD5)ことも示している。

*バッファーファンド:賦課方式の年金制度における新規流入積立金の運用を担うとともに、人口動態や経済的ショックによる給付の変動を吸収する役割をもつことから、バッファーファンドとも呼ばれる。
 


RIロゴ 

【参照】
Responsible Investor, Paul Verney「Sweden’s AP2 maps out TCFD scenario analysis plan for climate risks and opportunities」2018年2月22日(2018年3月6日情報取得)
AP2基金「気候変動レポート」(2018年3月6日情報取得)
AP2基金「アニュアルレポート(スウェーデン語)」(2018年3月6日情報取得)


QUICK ESG研究所