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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。

 ING銀行は、OECD多国籍企業行動指針*(以下、行動指針)に違反した疑いで調査されることになった。疑惑を訴えたのは、オランダの複数のNGOである。訴えを受理し、調査するのはオランダ外務省内に設置されるOECDのNational Contact Point(以下、NCP)だ。NCPは行動指針を採択した国ごとに相談窓口として設置される政府機関である。

 本件はNCPが気候変動をめぐる訴えに対し、初めて調査の正当性を認めた事例だ。NCPはウェブサイト上で「(本件は)金融セクターの気候変動デューデリジェンス問題を明らかにする機会だ」と述べている。そして問題の複雑さを認識しつつも、自らの調査と調停努力が行動指針の目的と活動を推進すると示した。

 訴えたのは、気候変動および気候変動ファイナンス問題を手がけるBankTrack、Oxfam Novib、Greenpeace Nederlandなどである。2017年5月、ING銀行が融資業務で間接的に発生した温室効果ガス排出量を開示しなかった(あるいは、今後開示することを約束しなかった)こと、温室効果ガス排出量の削減目標を定めていないことは行動指針違反だと主張している。

 NGO側は「行動指針は、企業が自らの活動により深刻または回復不能な環境破壊を引き起こす事態を避けるためにある。ゆえに、可能な限り早く積極的な行動が前提になる。また、同指針の報告基準を進化させるためには、直接および間接的な温室効果ガス排出量の開示が重要になる」と述べた。その上で、ING銀行に以下を求めた。

  1. 二酸化炭素総排出量(直接および間接的な排出量)の公表
  2. 間接的な温室効果ガス排出量について、野心的かつ具体的で測定可能な削減目標の公表

 加えて、Platform for Carbon Accounting Financials(以下、PCAF)プロジェクトへの参加を求めた。PCAFはオランダの12の金融機関が参加するプロジェクトで、自社の投資および融資から生じる二酸化炭素排出量を測定するオープンソースの手法を共同開発している。参加メンバーはABN AMRO、Achmea Investment Management、Actiam、AP、ASN Bank、FMO、MN Services、PGGM、Stichting Pensioenfonds Metaal en Techniek(PMT)、Stichting Pensioenfonds van de Metalektro(PME)、Triodos Bank、de Volksbankである。PCAFは、2017年12月にプロジェクトの最終報告書を公表する予定だ。

 ING銀行は調査に応じる姿勢を見せている。しかし、訴えは非現実的であり、不必要で根拠がないと主張した。間接的な温室効果ガス排出量を報告しなかった理由を、意思がなかったからではなく、現段階では技術的に開示できないからとした。

 訴えを主導したOxfam Novibのピーター・ラス氏(サステナブル・フィナンシャル・セクターのシニアポリシーアドバイザー)は「NCPが気候変動をめぐる訴えを初めて受理したことに感化され、他国のNGOにも我々と同様のイニシアチブをとることを期待する」と述べた。

 

以下、QUICKによる注釈

*OECD多国籍企業行動指針とは、経済協力開発機構(OECD)が定めた企業の責任ある行動に関する「勧告(Recommendation)」をまとめたガイドラインのこと。法的拘束力はないが、行動指針参加国の多国籍企業は自主的に行動することが期待される。1976年に採択され、世界経済の発展や企業行動の変化などの実情に合わせ、これまで5回(1979年、1984年、1991年、2000年、2011年)改訂された。一般方針、情報開示、人権、雇用及び労使関係、環境、贈賄、贈賄要求及び金品の強要の防止、消費者利益、科学及び技術、競争、納税など幅広い分野における原則と基準がまとめられている。
 


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【参考】
Responsible Investor, Paul Verney「ING to be investigated under OECD grievance mechanism in climate finance test case」2017年11月17日(2017年12月18日情報取得)
外務省「OECD多国籍企業行動指針」2017年8月31日(2017年12月18日情報取得)


QUICK ESG研究所