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 UNEP(国連環境計画)は6月12日、世界の金融センターにおける持続可能な成長に向けた取組み状況および、対応すべき課題を纏めた報告書「Financial Centres for Sustainability:持続可能な成長に向かう金融センター」を公表した。

 報告書は、イタリア環境省からの要請で「持続可能な金融システムの設計に関するUNEP調査(The UN Inquiry into the Design of a Sustainable Financial System)*」と、カナダの出版メディア兼サステナビリティ調査会社であるCorporate Knightsにより作成された。また報告書の草案は、2017年2月にイタリア・ミラノにあるイタリア証券取引所で開催された先進7か国の参加者による環境会議において事前調査報告書として活用された。この会議では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成やパリ協定の実現に対する金融センターの取組みについて話し合われ、その内容は、最終的な報告書に反映されている。

 報告書では、金融センターとは「様々な金融ビジネスや経済活動が集まる」場所のことであり、「銀行、保険、機関投資家、そして資本市場などの金融セクターと持続的な成長を結びつける活動が具体的な形をとる場所」として定義づけている。持続可能性は、金融センターを構成する全ての関係機関に関わる課題である。例えばグリーンボンド市場では、発行体や引受機関としての投資銀行、格付け機関、投資家としての運用機関やアセットオーナー、取引所やサステナビリティの専門調査機関、規制当局や市場の監督局、市民組織団体や消費者が、起債や債券の取引に関わっている。

 報告書によると、持続可能性は金融活動でマテリアルな要素であるとの認識が世界中の金融センターで増している。2016年は、カサブランカ、フランクフルト、香港、ロンドン、ルクセンブルク、パリといった世界の金融センターが持続可能な金融システムを構築するための各国独自のイニシアチブを立ち上げた。また、トロント、パリ、フランクフルト、ミラノ、東京、ロンドン、ニューヨークの先進7か国の金融センターで、持続可能な成長に向けた最近の取組みを調査しており、各国の動向調査の結果から7つの教訓が以下の通り纏められている。

(以下は報告書の内容をQUICK ESG研究所にて翻訳し要約したものである)

  1. 多様なけん引役:金融センターにおける取組みの促進には、様々な関連機関が影響する。各金融センターを管轄する行政当局に加えて、中でも主要年金基金や取引所がけん引役としてリーダーシップを発揮することが必要である
  2. 各国の金融エコシステム(金融市場の構成要素)の理解:金融市場を構成する要素や特徴は国によって異なるため、金融センターの持続的な成長への取り組みのための雛形は存在しないと理解することが重要である
  3. クラスタリング効果:金融センターは、類似する業種や機関を集めることで、グリーンファイナンス(環境に配慮した投資に資する債券・融資)拡大の実質的な価値向上に繋げることができる
  4. 複数の資産における機会:グリーンボンドは金融センターが戦略的に持続可能な成長を検討する契機となったが、グリーンファイナンスの資産は、株式や保険、金融派生商品などへと広がっている。複数の資産や業種に係る、資金の流れに関する共通の定義が必要である
  5. ダイナミックな公・民の協働関係:コーポレートガバナンスやスチュワードシップ活動、情報開示要請といった政策や規制は、持続可能な金融センター構築に不可欠である。さらに、グリーンボンド発行の例にあるように、民間による持続可能な成長につながる金融サービスの発展を促進する政策も重要である。また、民間によるイニシアチブは、国政レベルでの政策立案のために重要な役割を果たすことが可能である
  6. 変革の初期段階から本格的なステージへ:大半の金融センターは未だ発展の初期段階にあるが、持続可能性に対する取組みが、市場における自らの立ち位置に影響し、今後、気候変動対策や持続可能な成長に向けてどのように変革を遂げていくべきか考える必要がある
  7. 競争と協調:各国の金融センターは競い合うと同時に、堅実でオープンな市場の構築に向けた協働が必要である
     

 日本では、東京がアジア最大規模の金融センターとして報告され、近年の機関投資家における責任投資の伸びや、東京都による「東京国際金融センターの実現」に向けた取組みおよび「グリーンボンドの起債」が紹介されている。

 報告書の最後には、金融センターにおける持続可能な成長実現のために、今後優先的に取り組むべき次の課題が掲げられている。

  1. 金融センターの持続可能な成長に向けた国内での取組みを推進させること
  2. 堅調で流動性に富んだ市場を形成するために、金融センター間で国際的に協働すること

 各国の取組みについては、金融センター内で取り組むべき課題を特定し、国や地域からの支持に繋げることが重要となる。金融センター間での国際的な取組みについては、調査対象となった7か国の金融センターをはじめとした国際ネットワークを構築することで、他の金融センターに刺激を与える、グリーンファイナンスの原則や評価手法の標準化と提供経路の強化、持続可能な成長のための金融市場の拡充(グリーンボンド、グリーン融資、クラウドファンディングのようなデジタルファイナンス)に向けて協働することが期待されている。

 *持続可能な金融システムの設計に関するUNEP調査とは、2014年に結成された組織。持続可能な国際金融システムの実現に関する調査や報告書の作成、金融市場に持続可能性という概念を組み入れるための国際的なエンゲージメントを実施している。

【関連ページ】
UNEP environment(2017年11月10日情報取得)
UNEP environment「Financial Centres for Sustainability」2017年6月(2017年11月10日情報取得)


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美