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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。


 世界的に機関投資家は、石油・ガス企業に対するメタンガス排出削減戦略の促進と情報開示の要求を高めている。

 メタン(天然ガスの主成分である無色・無臭のガス)は石油・ガス企業から絶えず排出され、投資家にとって風評および経済的な脅威となっている。

 天然ガスの二酸化炭素排出量は石炭の約半分であり、クリーンなエネルギーと考えられているが、ここにはメタンという問題が潜んでいる。大気中に放出されたメタンの温室効果は高く、強力な大気汚染物質となる。メタンガス課題への投資家の取組みにおいて、2017年6月は大きな節目であった。国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment:PRI)に署名する36社の機関投資家(運用資産総額4.2兆ドル)が、世界の大手石油・ガス企業にメタンガスの管理と情報開示向上を求める協働エンゲージメントを開始したのだ。このイニシアチブは、米国の宗教機関の連合体であるICCR(Interfaith Center on Corporate Responsibility:企業責任に関する宗派連合)と環境NGOのセリーズ(Ceres:Coalition for Environmentally Responsible Economies。環境に責任を持つ経済のための連合)が進めている既存のエンゲージメント活動を補完するものである。

 以下は、EDF(Environmental Defense Fund:環境保護基金)シニア・マネージャーのショーン・ライト氏が、オランダの資産運用会社ロベコ・インスティテューショナル・アセット・マネージメント(Robeco Institutional Asset Management:運用資産総額1,600億ドル。以下、ロベコ)のシニア・エンゲージメント・スペシャリスト、シルビア・ウェイヴェリン氏に実施したインタビューである。
 インタビューでは、メタンが抱える課題と共に、なぜ投資家がメタン課題の現状を懸念し取組みを強化しようとするのかが語られた。
 

ライト氏(EDF シニア・マネージャー):

 ロベコはなぜメタンに関するエンゲージメントを実施しているのか。メタンガスの排出にはどのようなリスクが考えられるか。

ウェイヴェリン氏(ロベコ シニア・エンゲージメント・スペシャリスト):

 石油・ガス企業とのエンゲージメント活動の中で、メタンは最も重要なテーマの一つである。当社は世界の石油・ガス企業に投資している。メタンを含む気候変動のエンゲージメント活動は、一年前から実施している。以前メタンは、米国におけるシェールガス課題として捉えられていた。しかしメタンの温室効果は高く、最近では欧州でも議論の的となっている。当社は過去に米国で議論された内容からメタンに関する多くの情報を得ている。強調しておきたいのは、当社はメタンをリスクではなく、収益機会として捉えているということだ。石油・ガス企業には、メタンは収益を生む源泉であり活用しなければもったいない、と説明している。
 

ライト氏:

 PRIは、オーストラリアとニュージーランドを含めたグローバルな投資家と、ラテンアメリカ、欧州、北米、アジア太平洋の国々の企業とのエンゲージメントを計画し、グローバルなイニシアチブ展開を図っている。このようなグローバルな規模でのエンゲージメントは、メタンガスの排出に何をもたらすか。

ウェイヴェリン氏:

 他の機関投資家もメタンガス課題に真摯な関心を寄せている現状に満足している。メタンはもはや米国だけの問題ではなく、全ての国々で話し合われる課題である。私は協働エンゲージメントの効果を固く信じている。メタンガスの問題は一つの国内にとどまることのない国際的課題であるため、今回の協働エンゲージメントは大きな効果をもたらしうる。PRIイニシアチブの立ち上げは大変喜ばしく、多くの関心が寄せられ、解決へ向かうと信じている。


ライト氏:

 企業との対話において、メタン排出の対応や情報開示を促すために何が最も有効か。

ウェイヴェリン氏:

 企業のメタン排出対応は初期の段階にある。欧州企業はメタンガス課題の概要把握と方針の構想を練り始めたところである。温室効果ガス排出量に占めるメタンの割合や地域別の排出量を計測している企業もあるが、依然として、メタン排出対応への企業の動機付け、さらに活動を促進させるための取組みは不十分である。メタンガス課題の重大性の理解を深めるための活動に力を入れる必要性を強く感じている。悩ましいことに、大半の企業はメタンガス排出量の測定や予測方法を把握していないし、削減目標の設定手段を持っていない。そのため、当社は今回の協働エンゲージメントに参加して、課題をしっかりと理解したうえで企業と対話し、対策や排出量の測定および削減計画を要求しているのだ。


ライト氏:

 メタンガス課題の解決に必要な他の機関はどこか。また、その機関との協働が必要な理由は。

ウェイヴェリン氏:

 当社は政府の関与を求めている。例えばカーボンプライシングや炭素固定への政府の関与を求めているが、実際には協力を得られていない。政府が行動をおこすには時間が必要なので、常に政府の動きを待つというわけではない。企業が「政府の動きを待っている」と答えた際は、「積極的に行動に移すべき」と伝えている。当社はエンゲージメントをする際、データプロバイダーやEDFのようにメタンに関する深い情報を保有している機関の情報を活用し、データの分析や評価レポートを作成している。また、得られた情報を元にベストプラクティス調査を実施し、企業に説明責任を果たすことを求め、エンゲージメント対象企業を抽出している。
 

ライト氏:

 投資家主導で、リスクに直面している業界の活動を改善させた過去の事例はあるか。

ウェイヴェリン氏:

 20年以上前だが、酸性雨の問題に直面した際、投資家が問題解決に貢献した。同様に、メタンの排出に関しても投資家が課題解決の一助となることを期待している。北極圏の石油採掘についても触れておきたい。この問題は、つい最近まで投資先企業との対話の中で最も議論した話題である。この事業は企業にはメリットがあるかもしれないが、環境に悪影響であることは明白である。多くの企業は北極海沿岸の石油採掘から撤退しているが、これは、投資家が協働エンゲージメントを通じて北極圏の石油採掘を支持しないというメッセージを企業に正しく伝えられたためと理解している。


 

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【参照】
Responsible Investor, Sean Wright「The Environmental Defense Fund: An interview with Robeco on the methane opportunity with the oil & gas industry」2017年7月21日(2017年11月6日情報取得)

PRI「PRI tackles threat of methane emissions with collaborative engagement」(2017年11月6日情報取得)


QUICK ESG研究所