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ピーターボロ刑務所の画像

 

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。
 

 世界初のソーシャルインパクトボンド(Social Impact Bond、以下SIB)がリターンを分配することが明らかとなった。

 イギリスにあるピーターボロ刑務所の短期受刑者の出所後の再犯率低下を目的としたSIBは、事業成果が得られたとして、17の投資家に対して元本の償還と年率3%を超えるリターンを分配する。このニュースは、イギリス司法省が運用期間を当初の6年から4年に短縮すると政策を変更した後に報道された。また、運用成果としてのリターンは年次で支払われるはずであったが、償還時に元本と一括で支払われることになった。

 このSIBは5百万ポンドを調達して出所者の支援プログラムを執行し、短期受刑者の再犯率は4年間で9%減少した。

 ロックフェラー財団のサーディア・マッズバーグ氏(マネージングディレクター)は「SIBが始まった当初から関与した投資家として、また、世界初かつ歴史的なこのSIBへの投資家として、社会的課題に取り組むための新たな資金調達手段を開拓したこの試みが成功したことを誇りに感じている。当財団は、公共分野への前例のない投資資金の流れを作り出すと同時に、税負担を軽減し、公共サービスにおけるイノベーション促進の可能性を秘めるSIBに期待している」と語る。

 ピーターボロ刑務所SIBの投資家には、ロックフェラー財団の他、慈善団体を中心に、フレンズプロビデント財団、Panahpur財団 、バロー・カドベリー財団が含まれている。

 このSIBを企画開発したイギリスのソーシャル・ファイナンス社のデヴィッド・ハッチソンCEOは「ピーターボロ刑務所のSIBは、困難な社会的課題への取り組みに対して投資という手段が有効であることを示し、人々の関心を集めている」と述べた。

 一方、SIBは議論も呼んでいる。ピーターボロ刑務所と同様、ライカーズ島にある複合刑務所の出所者の再犯率低下を目的に作られた米国初のSIBは、ゴールドマン・サックスから支援を受けたものの、成果を生むことができず中止された。このSIBは、10代の受刑者に新興宗教であるサイエントロジーに基づく治療をしていたとして批判もされた。
 また、路上生活者数の減少を目的としたロンドンのSIBは、英国国境局と協力して外国人路上生活者を街から追い出していることが明らかとなり、批判された。

 2010年に開始されたピーターボロ刑務所SIBのコンセプトが先駆けとなり、その後発行された19ヵ国、89のSIBは、糖尿病予防や独居老人問題といった社会的課題に取り組むために3億ポンド以上の投資資金を集めた。

  SIBは、例えば10代の学力向上といった社会的課題に対して投資し、目標が達成されると投資家が金銭的なリターンを得る仕組みの金融商品である。通常、SIBの「成果報酬」は、社会的課題が解決されると公共支出の低減という恩恵を受ける政府が支払う。


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【参照】
 Responsible Investor, Vibeka Mair「Investors in Peterborough prison bond, the world’s first social impact bond, to get 3% return」2017年7月27日(2017年10月31日情報取得)

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