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スイス証券取引所

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。 

 欧米では数年前から、議決権行使助言会社が投資家に助言する一方でその投資対象の上場企業にも助言している、利益相反問題が度々取り上げられている。スイス証券取引所(以下、SIX)も、議決権行使助言会社の利益相反問題に対する新規則導入のため、関係機関に意見を求めた。

 これを受け、エートス基金*と、大手議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(Institutional Shareholder Services: ISS)が即座に意見表明した。

 新規則案は、議決権行使助言会社を利用する上場企業に、利用している会社名と利用料の公表を求める。投資家と上場企業、双方に助言する議決権行使助言会社は、利益相反の観点で影響を受けることになる。

 エートス基金は、議決権行使助言会社の特定の既存サービスは客観性を失っているとして、この新規則案を歓迎した。さらに、議決権行使助言会社を利用する上場企業に対し、会社名と利用料だけでなく、利用している助言会社の議決権行使基準も開示するよう提言している。また、同基金は、同一の監査会社が企業の財務報告書作成と監査をすることを禁じる、会計監査の独立性規則を引用し、「議決権行使助言会社が、株主総会で決議する議案について投資家向けに助言すると同時に、上場企業向けにもコンサルティングサービスを提供することは禁止されなければならない」と述べた。

 一方、ISSのスティーブン・フリードマン法務担当役員は、「SIXが提案する新規則は、不必要かつ有害だ。新規則では、主に機関投資家向けサービスを提供するISSと、上場企業向けサービスを提供する100%子会社のISSコーポレート・ソリューションズ(以下、ICS) の間で取り組んでいる、利益相反問題を生じさせないためのプログラム(コンプライアンス・プログラム)に支障が出る。このプログラムは、ISSとICSの間の「ファイアウォール」となり、ISSのグローバル・リサーチチームが、ICSのクライアント企業について知るのを防いでいる。そのため、ISSのリサーチプロセスと議決権行使助言の客観性および独立性は確実に担保できる」と述べた。

 ISSによると、ISSサービスのクライアントは、SIXの新規則案が要求する情報を既に手に入れることができる。ICSのクライアント情報や、そのクライアントが利用している製品やサービスおよびその対価は、ISSのクライアントである機関投資家にコンプライアンス部門を通じ、機密情報として提供されている。ISSは、SIXが提案する新規則がICSのクライアント情報を公開することにならないか懸念している。さらに、今回の新規則案の背後には、近頃スイスの国内メディアが煽っているISSのビジネスモデルへの誤解や理解不足があると主張した。

 スイス銀行協会の広報担当者は、今回の諮問について「議決権行使助言会社の利益相反問題は、はっきりさせなければならない。しかし今回の提案には、いくつかデメリットがある。投資家保護の観点では、企業でなく、議決権行使助言会社が情報開示するほうがより好ましい。また、海外の競合企業は、この種の情報開示を求められないことを考えると、新規則はスイスの国内企業にとってデメリットになるのではないか」と指摘した。

 P&G、ゼネラル・エレクトリック、ネスレ 、ロシュなどスイスを本拠地とする多国籍企業連合のスイス・ホールディングスは、議決権行使助言会社の透明性が求められる一方で、上場企業に対し、取引所の規則によって情報開示を求めるよりも、上場企業側の自主規制など、別の方法が望ましいと意見表明した

 スイス証券取引所のフランチスカ・ディーム企業開示担当シニア法律顧問は、レスポンシブル・インベスターに対し、「今は、諮問に対するすべての意見を確認している最中であり、あらゆる選択肢が考えられる。本規則が制定された場合、各上場企業は2018年度の年次報告書から、この情報開示を義務付けられることになるであろう」と語った。

*エートス基金は、責任投資の推進を目的として、スイスの228の年金基金などが加盟する財団である。

 

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【参照】
Responsible Investor, Carlos Tornero「Swiss proxy review opposes ISS and Ethos on conflict of interest controversy」2017年9月21日(2017年10月5日情報取得)


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