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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳したものです。


 最近、株主提案への賛成比率が高まっている。これは、少なくとも部分的には、大手機関投資家が賛成票を投じるようになったためである。また、提案者の議案作成レベルが大幅に向上したことも、議決権行使助言会社が賛成を推奨する動きに繋がっている。さらに、議決権行使勧誘活動を実施する株主提案者も増加してきているようだ。

 一方、以前から企業は株主に対して経営層の意向に沿った票を投じるように勧誘することがあるが、昨今の株主議案における変化をどうみているのであろうか。企業は、証券取引委員会(SEC)に対するノーアクションレター(SECに事前に説明し了承を得ることで、株主提案を委任状説明書に記載しないことができる)の発行の要請や取締役会による声明を通じて株主提案に反対を表明しているが、今まで以上に(企業側からの)議決権行使の勧誘に力を入れるようになるのであろうか。

 レスポンシブル・インベスターは、議決権行使勧誘業者であるジョージソン社のコーポレートガバナンスディレクター、アン・マイヤー氏へインタビューした。

 「気候変動は、環境関連の株主提案のなかで多く取り上げられる議題で、2015年は50件、2016年は60件、議案として提出された。これまでは、気候変動以外のE(環境)やS(社会)に関する議案と同様、気候変動関連の議案に対する賛成率は低い傾向にあった。しかし、パリ協定の締結を受け、2℃目標に伴う影響評価について問う株主提案が出されるようになり、2016年には平均30%半ばの支持を得るようになった。たとえ、企業が好まないとしても、我々はすでに株主とのエンゲージメントの新しい世界にいるのだ。そして、ディスクロージャーの促進およびエンゲージメントの改善により、企業はEやSの課題に関して株主に対応せざるを得ないというプレッシャーを感じることになるだろう」とマイヤー氏は語る。

 株主側の変化に伴い、企業の経営層に変化がみられるか尋ねたところ、「会社によって異なるが、EやSの課題に着目してきた企業においては、経営層の姿勢に変化がみられる。一方、株主の要求が重要ではないと考えていたり、既に情報を開示していたり、社内での対応が完了していない企業では変化が見られない。しかし、競合他社に比べてEやS課題への対応が遅れている企業や、業績などその他課題を抱える企業においては、エンゲージメントに対する圧力が強まると考える」とマイヤー氏は述べた。

 株主提案に対する企業の議決権行使勧誘活動数の増加を示す確かなデータが存在するか尋ねたところ、「我々が提供するエンゲージメント支援や議決権行使勧誘活動は、オフシーズンのコーポレートガバナンスに関するロードショーから、決算発表における大手機関投資家とのワン・オー・ワンでのミーティング、中核的な個人投資家によるキャンペーンの対応に至るまで、企業ごとに異なる。また、企業によっては大半の業務を内部で完結している場合や、ミーティングの計画から実施まで当社に依頼する場合もある。以前は企業がEやS課題に関する提案を受けたとしても、株主から賛同を集めることはないので対処する必要はないと考えていた。しかし、今ではそれらの議案は多くの賛成票を集める傾向にあるので、企業はたとえ大手機関投資家に対する議決権行使勧誘活動を実施しないにせよ、動向に注視している。これは、株主提案が40%に近い賛成比率を得ると、企業と株主との調和がとれていないことの現れとみなされるため、そのような状況を良しとしないからである」と語った。

 議決権行使勧誘活動は、「株主総会シーズン前に潜在的な課題が特定された時点で、最大手の株主とのエンゲージメントを実施するのが主流である。年間を通じての効果的なエンゲージメントを実施することは、企業と株主双方にとって、ビジネス戦略、財務、ESG、取締役報酬に関する、より深い理解と信頼関係構築に繋がる。株主総会シーズン中は、株主も多忙で活動するには適さない。当社は、企業が株主提案を受けた場合、まずは議案の提案者に連絡するよう推奨している。確立したガバナンスチームを有する投資家であれば、企業との対話によって提案を取り下げる可能性もある。成功するか否かは、企業のエンゲージメント姿勢による」と述べた。

 株主とのエンゲージメントを実施する企業と躊躇する企業の違いを尋ねたところ、「基金や大株主によって支えられている企業はエンゲージメントに消極的な傾向にある。またフォーチュン500以外の中小企業においては、株主とのエンゲージメント活動の進展について行く余力自体がない。そういった企業こそ、株主提案によって不意を突かれる可能性が高い。しかし大手の投資家にとっては、投資比率が低いので注目されない企業でもある」と答えた。

 採取産業や公共事業は気候変動関連議案の標的となってきたが、それらの企業の株主提案に対応する方法に変化がみられるのか、という問いに対しては「企業側は、株主が何を尋ねているのかを把握し、また株主全体にとっての便益と費用の効率化に繋げようとする動きに変わってきている。賢い議案の提案者は、企業の置かれた状況に応じて提案内容を変えてくる。しかし、既に明白な情報公開をしているにもかかわらず、気候変動に関する情報開示を求めるといったような株主提案もある」と述べた。

 企業の年次報告書で形式的な気候変動関連リスクや社会課題の情報開示が進んでいるが、既に開示している情報に対する要求がある、という現状は興味深いと伝えたところ、「気候変動やESG課題について、企業は相当の情報量を公開している。SECからの要請という観点からも、企業は、既に業績見通しやフォーム10-Kなどに準拠するかたちで、重要なリスク要因に関する情報を開示している」と述べた。また、「企業はESG/CSRレポートや企業のホームページ上で追加情報も開示しているが、株主から要求される情報の量や質に関して懸念している。今年度、当社は多様性に富んだ取締役および従業員を抱え、十分に情報開示している企業と共に仕事をしたが、従業員の多様性に関する更なる情報開示を求める株主提案があり、苛立ちを覚えた」とマイヤー氏は語った。
 


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【関連ページ】
Are shareholder resolutions really getting better? The view from the proxy solicitor (Part 1)(執筆日:2017年6月21日)


◇本記事の続きはこちら
【RI特約記事】株主提案は変化しているのか? 議決権行使勧誘業者、ジョージソンによる見解(part2)」2017年11月22日


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