近年、プラスチックごみやマイクロプラスチック(5㎜以下の微細なプラスチック)が海洋生物の生態系に与える影響が問題になっている。2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、世界のプラスチックの生産量は1964年の1,500万tから、2014年には3億1,100万tと50年間で20倍以上に急増し、今後20年間でさらに倍増するという試算が報告された。また、毎年少なくとも800万t分のプラスチックが海に流出しており、2050年までに海のプラスチックごみの量は、重量ベースで魚の量を上回ると見込まれている[1] 。国連による「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」においても、目標14.1で「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という海のごみ課題に関する目標が掲げられている。

 2017年8月16日、海中に漂うプラスチックごみの臭いが小魚の採食行動を引き出す、という研究結果が、英国王立協会の生物化学雑誌(Proceedings of the Royal Society B)で報告された。今回公表された研究では、アンチョビの捕食習性を活用した実験をした。アンチョビは湧昇流(栄養塩に富んだ海水が深海から湧き出る現象)の発生する沿岸域に大きな群れをなして生息しているカタクチイワシ科の小魚である。これまでも、ある種の海洋生物がプラスチックごみと餌との見た目の区別がつかずに誤飲や誤食を繰り返すこととプラスチックごみの何らかの化学的特性が関係することを多くの研究者が指摘してきたが、アンチョビのような小魚がプラスチックごみを食べてしまう理由は解明されていなかった。実験では、海から採取されたプラスチックごみと汚れの付着していない綺麗なプラスチック片をアンチョビの群れに投入し、その反応を観察した。アンチョビの群れは、海から採取したプラスチックごみに対しては、水の流れに逆らうように泳ぐことをやめ、プラスチックごみに群がるという反応を示した。これは、通常の餌に対する習性と同様の反応である。一方、綺麗なプラスチック片に対しては、そのような反応は見られなかった。研究者は、「太陽光の透過する部分(海面下約600メートル)に漂うプラスチックごみは、透過光の働きにより、餌に似た臭いを放つようになる可能性がある。アンチョビの成魚の捕食行動には、この臭いが関連している、という初の実験結果が得られた」と語る。

 アンチョビは食物連鎖の底辺に属し、人間を含む上位捕食者にとって重要な栄養源である。プラスチックごみに含有もしくは付着している化学物質が食物連鎖に取り込まれ、人間を含む生態系に悪影響を及ぼすことが懸念される。

 【関連資料】

[1] The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics, January 2016, p10,11,14

Odours from marine plastic debris induce food search behaviours in a forage fish

持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(外務省仮訳)

 


QUICK ESG研究所 鈴木敦史、小松奈緒美