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 2017年6月9日に政府は、「平成29年版男女共同参画白書」(平成28年度男女共同参画社会の形成の状況及び平成29年度男女共同参画社会の形成の促進施策 年次報告)(内閣府 男女共同参画局)を閣議決定し、公表した。

 人口減少、少子高齢化社会の我が国において、いかにして労働力人口を維持し、また生産性やイノベーション力を引き上げていけるかが、持続的成長の最大の課題である。この課題を解決するには、女性が社会で活躍できる環境をつくることが鍵となる。

 しかし、共稼ぎ世帯が世帯構成の主流になった現在、週間労働時間が60時間を超える雇用者のうち、子育て期にある30歳代および40歳代の男性の割合が依然として高い。また、正規の職員・非正規の職員・自営業主別に見ると、男女ともに正規の職員が非正規の職員に比べて、週間就業時間が60時間以上の割合が高い傾向にある。長時間労働の是正、テレワークの推進および男性の育児休暇の容易な取得等、労働環境の改善がワークライフバランス上重要課題である。

 また、2015年のひとり親世帯は84万世帯にのぼる。その9割程度が母子世帯である。母子世帯の60%弱は非正規労働者であり、生活保護受給率も15%と父子世帯の2倍である。

 非正規労働者の雇用の不安定性、給与水準の低さから子育て・生活支援、就業支援および経済的支援等さまざまな施策が実効性を上げない限り、世代間の連鎖は続くものと思われる。現状、女性がフルタイムで働くための労働環境、子供の教育環境は十分ではない。

 2017 年3月28日 働き方改革実現会議で示された「働き方改革実行計画(案)」を踏まえて、厚生労働省において時間外労働の上限規制および同一労働同一賃金に関する法改正等の所要の措置を講じる準備を進めている。

 今後、法整備が行われ実効性が高まり、女性が社会で一層活躍できる機会が増えれば、就業人口の減少に歯止めがかかることが期待できる。

1.男女共同参画白書の歩み

 1996年12月、男女共同参画推進本部(本部長 内閣総理大臣)は、「男女共同参画2000年プラン‐男女共同参画社会の形成の促進に関する2000年度までの国内行動計画‐」(以下「プラン」という。)を決定し、プランに関する第1回目の報告書である「男女共同参画の現状と施策」(いわゆる男女共同参画白書)を取りまとめたのが契機である。その後、1999年6月に「男女共同参画社会基本法」(以下、法律)が施行され、2000年12月には法律第13条に基づき「男女共同参画基本計画」が閣議決定された。
 2001年1月に内閣府に「男女共同参画会議」を設置し、男女共同参画社会の形成の促進に向けた様々な課題について、調査審議を進めてきた。その一環として2001年6月には「仕事と子育ての両立支援の方針に関する意見」を決定した。
 2001年8月に法律第12条に基づき、第2回目の報告書として「男女共同参画白書」が作成された。以後、政府が国会に同白書を年次ベースで提出しており、今回が18回目となる。

2.女性の活躍推進に向けて

 国連のナイロビ将来戦略勧告に基づき、2005年「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位につく女性の割合を少なくとも30%程度になるよう期待する」という数値目標(2005年男女共同参画推進本部決定、『2020年30%』の目標)が決定された。
 2015年12月25日、閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」(以下「第4次計画」という。)には、2020年度末までに実施する具体的な取組等を盛り込んだ。
 第4次計画では、4つの「政策領域」を設け、重点的に監視・評価すべき14項目の「政策領域目標」を定めた。
 また、2015年8月には、大企業等に女性の採用・育成・登用等に関する目標を定めることを盛り込んだ計画を義務付けた「女性活躍推進法」(10年の時限立法)が成立した。2017年6月現在、内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)が設置されている。

3.平成29年版男女共同参画白書の概要
(1)2016年度 男女共同参画社会の形成と状況
 特集 「女性活躍推進法による女性活躍の加速・拡大に向けて」

第1節 働く女性の活躍の現状と課題
 2012年から2016年4年間の就業者数は170万人増加し、このうち147万人が女性で、女性の就業が拡大した。2016年の女性の就業率は66.0%と過去30年間上昇傾向にある。
  助成の多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるとともに女性の能力を十分に発揮できる働き方を実現させるためには、非正規雇用の正社員転換・待遇改善が重要である。

第2節 女性活躍推進法によって広がりつつある女性活躍推進の取組
 2016年4月に全面施行された「女性活躍推進法」では、国、地方公共団体、301人以上の労働者を常時雇用する民間事業者等に対して、女性の活躍推進に向けた「事業主計画」の策定・公表等を義務付けている。2016年12月末時点で対象事業主の99.8%に相当する15,740事業主が行動計画の届出を行っている。

 第1章 政策・方針決定過程への女性の参画

第1節 国の政策・方針決定過程への女性の参画
 国会議員に占める女性の割合(2017年1月現在):衆議院9.3%、参議院20.7%
 女性国家公務員の登用状況(2016年):係長相当職(本省)23.9%、地方機関課長・本省課長補佐相当職9.4%、本省課室長相当職4.1%、指定職相当3.5%
 国の審議会等女性委員(2016年9月30日現在):37.1%

第2節 地方公共団体の政策・方針決定過程への女性の参画
 地方議会の議員に占める女性の割合(2016年12月31日現在):特別区議会26.9%、政令指定都市市議会17.1%、市議会全体14.0%、都道府県議会9.9%、町村議会9.8%
 女性地方公務員の登用状況(2016年):本庁係長相当職、本庁課長補佐相当職、本庁課長相当職、本庁部局長・次長相当職に占める女性の割合は、都道府県で21.7%、17.5%、9.3%、5.5%、市区町村で32.9%、27.3%、15.6%、7.5%(うち政令指定都市では24.0%、19.7%、14.2%、8.5%)

第3節 様々な分野における女性の参画
 政策・方針決定過程における「指導的地位」に占める女性の割合は緩やかに上昇しており、その水準は依然として低水準だが、政府が定める「2030年30%目標」を達成している分野も出てきている。

 第2章 就業分野における男女共同参画

第1節 就業をめぐる状況
 女子の就業者数は増加、就業率は上昇傾向にある。
 所定内給与における男女間格差は、長期的にみると縮小傾向にあるが、男子一般労働者100に対して、女子は73.0である。

第2節 企業における女性の参画
 上場企業の役員に占める女性の割合は、長期的に上昇傾向にあり、2016年3.4%と前年比0.6%ポイント上昇している。
 管理的職業従事者では2016年13.0%で、アメリカ、イギリスおよびフランスが30%以上であるのと比較して低い水準にとどまっている。

 第3章 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

 1997年以降「共働き世帯数」が「男子雇用者と無業の妻からなる世帯数」を上回り、2016年には、「共働き世帯数」が1,129万世帯、「男子雇用者と無業の妻からなる世帯数」が664万世帯と「共働き世帯数」が世帯構成の主流となっている。

 第4章 地域・農山漁村、防災・復興における男女共同参画

第1節 地域・農山漁村における男女共同参画
 市区町村計の男女共同参画計画策定率は長期的に増加傾向にあり、2016年4月1日現在73.8%となっている。
 農業就業人口は、2016年2月1日現在192万人で、女性の割合は46.8%で約半数を占めている。2016年度の農業協同組合の役員に占める女性の割合は7.5%と低い状況にある。

 第5章 教育・研究における男女共同参画

第1節 教育をめぐる状況
 女子の大学進学率は長期的に上昇傾向を辿っている。女子48.2%、男子55.6%だが、短期大学進学の8.9%を合わせると、女子の大学等進学率は57.1%となる。

第2節 研究分野における男女共同参画
 2016年3月31日現在、研究者に占める女性の割合は、15.3%で諸外国と比べて低い。

 第6章 生涯を通じた男女の健康と高齢者、ひとり親の状況

第1節 生涯を通じた男女の健康
 2015年の平均寿命は、女性86.99年、男性80.75年で、男女とも過去最高を更新している。2013年の健康寿命は、女性74.21年、男性71.19年である。

第2節 高齢者、ひとり親の状況
 2015年10月1日現在、65歳以上人口割合(高齢化率)は、26.6%、男性は23.7%、女性は29.4%となっている。また、ひとり親世帯のうち、9割程度が母子世帯である。

 第7章 女性に対する暴力

第1節 配偶者等からの暴力の実態
 配偶者等からの暴力について、「何度もあった」が、女性9.7%、男性3.5%となっている。

第2節 ストーカー行為、性犯罪、子供に対する性的暴力、売買春、人身取引の実態
 ストーカー事案の被害者の88.8%が女性、加害者の84.0%が男性となっている。

(2)男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

第1部
 2016年度に講じた施策として、2016年9月以降「働き方改革実現会議」を開催し、時間外労働の上限規制の法制化、同一労働同一賃金の実現に向けた法改正等、2017年3月に「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。
 併せて、男女共同参画に関わりの深い制度改革(税制、育児休業法等)が行われた。

第2部
 2017年度に講じようとする施策として、「第4次計画」について、実効性をもって具体的取組を進めるために「男女共同参画会議」等を積極的に活用することが取りまとめられた。同会議では「女性活躍加速のための重点方針2017」を決定し、概算要求に反映させる。
 男性中心型労働慣行等の変革と女性の活躍の施策として、2017年3月に取りまとめられた「働き方改革実行計画」に基づき、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正等に向けた法改正を早急に国会提出する。

 

<参考>
「平成29年版男女共同参画白書」(2017年6月9日 閣議決定) 概要版 / 全体版
男女共同参画社会基本法((平成十一年六月二十三日法律第七十八号)
女性活躍推進法

※2017年7月14日 参考リンクの一部を修正しました。


QUICK ESG研究所 菅原 晴樹