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 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 米証券取引委員会(SEC)は「グリーンウォッシング」に対処するため、投資アドバイザーやファンドマネジャーに情報開示を義務づける新たな規則の導入に向け一歩踏み出したと、RIの提携誌『Regulatory Compliance Watch』が5月25日付で伝えている。

 投資家に対してESG投資の構成要素を明確に示す情報開示やその他の報告を義務づける規則案は委員会における採決で承認(賛成票3、反対票1)された。

 全362ページから成る規則案は連邦官報で公表されたあと、60日間の意見公募期間が設けられる。SEC職員のジェシカ・ワクテル(Jessica Wachter)氏は、今回の規則案によって情報開示を標準化し、登録ファンドによる「偽装表示」の排除を目指すと述べている。

 規則案の適用対象となるのは投資アドバイザー(登録を免除されているケースも含む)、ミューチュアル・ファンドおよび上場投資信託(ETF)である。一部のインデックス・ファンドも新たに情報開示を求められることになる。同案では追加情報の開示方法として登録届出書、年次報告書、ファンド目論見書、その他のSEC提出書類などを挙げている。

 投資アドバイザーはESG要因の利用状況、ESG戦略、分析手法と関連する株主提案に対する投票行動について説明を求められる。情報開示の規模は、ファンドが行っているESG投資の種類によって異なり、次の3つの分類に基づいて決まる。

  • ESGインテグレーション投資ファンド(ESG要因の組み入れ度合は比較的小さい)
  • ESG特化型ファンド(1つ以上のESG要因に依存)
  • インパクト投資ファンド(特定のESG目標の達成を意図)

 SECのアリソン・ヘレン・リー(Allison Herren Lee)委員によると、昨年の世界全体のESG関連証券への投資額は2.7兆ドルに達し、そのうち米国の資産は3,570億ドルを占めている。米国の資産は昨年51%に急増した。こうした関心の高まりを受け、規則案の裏づけとなる「一貫性および信頼性のある比較可能な情報」へのニーズが拡大しつつあると示している。

 キャロライン・クレンショー(Caroline Crenshaw)委員は、 一部のファンドは「サステナブル」や「グリーン」という言葉を投資哲学としてではなくマーケティングツールとして使っていると指摘する。また、SECはかなり以前から投資家にとって重要な情報を開示するよう登録ファンドに求めており、今回の規則案はまさにそれに応じた内容になっているとも述べている。

 規則案に唯一反対票を投じた共和党のヘスター・パース(Hester Peirce)委員は同案を「的外れ」であるとし、 ESGの定義が不明確なため投資家にもたらすメリットは限定的で、施行は難しいと述べている。また、「見れば分かる」というやり方は現行の行政法では認められないと主張している。

 パース委員は同案について、「パロディーと言えるほど規範的」で、最終規則を制定してからの準拠期限が1年というのは「信じられないほど短い」と述べた。さらに、同案は会議でESGについて協議した場合はその議事録を文書化することをコンプライアンスの方針および手順に盛り込むよう義務づけているが、それは「資産運用のマイクロマネジメント」に当たるとも指摘している。

 パース委員は、より受け入れやすい代替案として、法執行を通じた「グリーンウォッシング」への対処を挙げている。

 今回の規則案を公表する2日前、SECはESG関連の情報開示をめぐり投資アドバイザーに150万ドルの罰金を科していた。また、1ヵ月前には資源大手のブラジルのヴァーレに対し、死者270人を出したブルマジーニョ尾鉱ダム決壊事故の3年前からダムの安全性について投資家の誤解を招く情報を提供していた旨で提訴した。

 SECのゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、「こうしたファンドの名の下で実際に何が行われているのか、投資家が詳しく掘り下げられようにする必要があるだろう。これは投資家保護を通じて、投資家による効率的な資本配分を可能にし、投資家のニーズに応えるというSECの使命の核心を突く問題である」と述べている

 規則案で示されたフォームADVの変更事項の一例では、「自らの重要な投資戦略または分析手法において、ESG要因への配慮に基づいて投資先企業を評価、選定または排除するための基準や手法」を採用している投資アドバイザーに、「その基準や手法がどのようなものか、該当する重要な投資戦略または分析手法においてその基準をどのように用いているかを説明する」よう求めている。フォームADVには、事業者の手数料体系や運用資産残高を含む詳細が記載される。

 6月14~15日にロンドンで対面開催される「RI Europe 2022」会議では、このテーマをめぐり業界リーダーによる議論が予定されている。
 


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【参照】
Responsible Investor, Carl Ayers「SEC commissioners vote for ESG disclosure rules to counter greenwashing」2022年5月26日(2022年6月3日情報取得)


QUICK ESG研究所