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 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が4月4日に発表した気候変動緩和に関する報告書について市場関係者は歓迎する姿勢を示す一方、二酸化炭素(CO2)回収を重視した点は批判している。IPCCは、思い切った対策を講じれば2030年までに世界の気温上昇を1.5℃に抑えることはなお可能としつつ、投資家は企業に対して気候変動をめぐるロビー活動の説明責任を果たすよう求めるべきだと警告している。

 国連の機関として大きな影響力を持つIPCCが発表した今回の第6次評価報告書は、気候変動緩和に向けた取り組みを評価している。その中で、排出量の少ない投資先を選ぶための取り組みが十分進んでいないと批判し、不整合な政策や化石燃料関連投資のリスク・リターン特性の認識に起因する「世界の資本の不適切な配分」が解消されていないと述べている。また、グリーンインフラや産業への投資は高リスクであるとの認識からこの分野への投資を回避する投資家は、むしろリターンを犠牲にしていると指摘している。欧州中央銀行の気候変動センター長を務めるイレーネ・ヘームスケルク(Irene Heemskerk)氏はLinkedInに投稿し、同報告書は「警告」であり、気候変動緩和に向けた協力が求められると訴えた。

 報告書によると、2030年までに気温上昇を2℃未満に抑えるために必要な投資額は現在の水準の3~6倍に相当するという。世界にはこの差を埋めるに十分な資本があるにもかかわらず、投資額が増えない理由として政府が明確なゴーサインを出していないことを挙げている。

 責任投資原則(PRI)のチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるシーラ・ホイットリー(Shelagh Whitley)氏は、化石燃料への新規投資を停止し、低炭素資産への投資を増やすべきだと述べている。また、投資家は低炭素社会の実現に向けて主導的な役割を担っているにもかかわらず、一部の投資家はいまだ気候関連の金融リスクを過小評価しているとも指摘している。

 エネルギーインフラへの投資を手掛けるヴィクトリー・ヒル・キャピタルで共同チーフ投資オフィサーを務めるリチャード・ラム(Richard Lum)氏は、報告書は世界の気温上昇を1.5℃に抑える目標はいまだ達成可能との見通しを示しているが、「こうした楽観的な観測が成功を意味すると錯覚するのは禁物だ」と述べた。さらに、ヴィクトリー・ヒルは二酸化炭素回収(報告書はその規模の拡大を提言)の可能性や、太陽光発電のコスト低下とエネルギー貯蔵の継続的な進化について楽観視しているとする一方、「目標を達成するためには、優れたアイデアを速やかに実践する必要がある」ともコメントしている。

 一方、INGのシニアセクターエコノミストのガーベン・ヒエミンガ(Gerben Hieminga)氏は二酸化炭素回収に依存すべきではないと警告している。そうした技術は「時間稼ぎ」を可能にし、カーボン・バジェット(炭素排出枠)を超過した排出量を相殺できる。だが、回収技術の信頼性には疑問が残っており、技術を効果的に用いる上では世界的な協調が求められるとして注意を促している。

 国際環境法センターで気候・エネルギー事業のディレクターを務めるニッキー・ライシュ(Nikki Reisch)氏もこれに同調し、「1.5℃を超える気温上昇を回避するための唯一の方法は、化石燃料を迅速かつ公正な方法で段階的に廃止することである」と述べている。そして「化石燃料の利用を引き伸ばし、排出量削減を謳うこうした理論の域を出ない技術を使えば(中略)、人命の損失や取り返しのつかない被害が拡大しかねない。二酸化炭素を回収・貯留しても石炭がクリーンエネルギーに、ガスがグリーンエネルギーに、石油が無炭素エネルギーに変わることはない」と指摘する。

 ライシュ氏は、二酸化炭素回収を重視する姿勢は「政治的な判断」によるものと批判している。フィナンシャル・タイムズは、報告書の政策決定者向け要約をめぐる話し合いが長引いたことで公表が遅れ、要約には発展途上国における低炭素関連の投資額が盛り込まれなかったと報じている。

 英NGO「クライメット・ボンド・イニシアティブ」CEOのショーン・キドニー(Sean Kidney)氏は、報告書で世界のエネルギー消費量に占める再生エネルギーの割合が10%になったと記されたことについて、20年前の再生可能エネルギー発電量が低水準だったことからみれば「途方もない勝利」であるとコメントしている。それでも気候変動の緩和ペースを速める必要があるとし、「歩くのを止め、走り出さなければならない」と強調する。

 報告書は、グリーンボンドやサステナブルファイナンスの市場が拡大する一方で、グリーンウォッシングや新興市場における低調なグリーンボンド発行といった懸念はなお残ると記している。

 さらに気候変動をめぐる企業のロビー活動については、現状維持によって恩恵を受ける立場にある「既得権益によって支配された力関係」があるとして批判している。

 オーストラリア企業責任センターの気候・環境ディレクターであるダン・ゴッチャー(Dan Gocher)氏は、投資家は企業に対して自らが直接行うロビー活動と所属する業界団体の活動の両方について説明責任を果たすよう求めるべきと主張している。そして「株主は、野心的な気候政策に反対するロビー活動を行う企業と業界団体に対して責任を問うべきである。まずは、そうした企業の気候対策と取締役の再任案に反対票を投じることから始めることだ」と訴えている。


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【参照】
Responsible Investor,  Dominic Webb「A persistent misallocation of global capital': Market reacts to IPCC report」2022年4月5日(2022年4月18日情報取得)


QUICK ESG研究所