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 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 欧州の銀行業界団体は公開書簡で、格付け会社が用いる独自の格付け方法は透明性に欠けると批判し、格付け会社の「人材不足」についても問題視するなど、ESG格付けやデータプロバイダーに対して強気の姿勢を示した。

 EUの銀行業界のロビー団体である「欧州銀行連盟(EBF)」は先に欧州証券市場監督局(ESMA)に提出した書簡で、「ESG格付け会社は格付け方法を機密情報と捉えているため、個別のESG格付けがどのような方法で決められているのか分かりづらい」と主張している。

 また、「格付け基準の不明確さから、評価を受けた企業などの発行体が評価基準を十分理解しないので、今後格付けを改善することも困難である」とも指摘している。

 さらにEBFは、格付け会社は自らが担っている複雑な「分析業務」に対応可能な人材を確保できていないとも批判し、それは「競合会社の体系的な分析結果からも明らかである」と述べている。すなわち、企業固有のリスクに関するアナリストの評価が十分とはいえず、「事実に照らして正しくない分析や誤解を招くような、間違った結論を導き出したケースがみられる」と主張している。

 EBFは、特に銀行の評価に関しては格付け会社によって大きな差がみられ、「法令、規制、銀行業の基本原則に関する知識が不足している」としている。

 今回の書簡は、ESG関連のデータ商品のユーザーから「意見と実体験」を収集する目的でESMAがエビデンスを募集したことに応じて提出されたものである。欧州委員会もこのテーマについて近々コメントを発表するとみられる。

 こうした動きは、「ESGデータは透明性と比較可能性を欠いており、利益相反を生みかねない」との懸念が長く続いている中で、ESGデータへの規制適用を求める圧力が世界的に強まっていることを示すものである。

 証券監督者国際機構(IOSCO)は昨年11月、ESG格付け会社を証券分野の規制当局の監督下に置くことでESG関連商品の比較可能性と信頼性の向上を図ることを提案した。その背景には、EUの規制当局が「資金力を駆使して市場参入した大手企業による寡占状態」は「競争的水準を上回る価格設定、癒着のリスク、参入障壁、イノベーションと効率性の低下といった消費者の著しい不利益を招く恐れがある」と警告したことがある。

 ESMA自身もこの市場が「利益相反の温床となる可能性がある」ことを認め、ESGデータや格付けに規制を適用するよう既にEUに要求していた。EU以外の国や地域で唯一この問題について具体的な行動に踏み出している日本では、政府主導でESG評価会社向けの行動規範の策定にあたる専門分科会が発足した。

 一方で、EBFは書簡に「ESG格付け会社がもたらしている現在の多様性」を損ねることはしたくないと記している。むしろ、規制対象は格付け方法、利益相反、質の高いデータをめぐる透明性の向上に絞るべきと提案している。

 その上で、「競争力は維持されるべきであり、規制の厳格化がESG格付け会社の一層の寡占化につながるようなことがあってはならない」と結論づけている。

 


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【参照】
Responsible Investor,  Khalid Azizuddin「EU banks unsatisfied with ESG rating transparency, says providers are ‘understaffed’」2022年3月17日(2022年3月28日情報取得)


QUICK ESG研究所