pollbox
RI_logo

 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 米NGO「As You Sow」は新たに公表した報告書「The 100 Most Overpaid CEOs: Are Fund Managers Asleep at the Wheel?」で、2021年に提出された役員報酬提案の投票行動に関する調査結果を明らかにしている。それによると、欧州の大手資産運用会社は米国の同業者に比べ、こうした提案に対してはるかに厳しいスタンスを示したことがわかった。

 大手運用会社の投票行動を評価したところ、As You Sowが「報酬が過度に高額」と特定した100名のCEO(そのリストにはジョンソン・エンド・ジョンソン、ナイキおよびゼネラル・エレクトリックのCEOも含まれる)に関する役員報酬提案のうち反対票を投じた割合が70%未満だった欧州の運用会社は2社にとどまった。

 また、これら100名のCEOについて昨年提出された役員報酬提案のうち反対票を投じた割合が90%を超えた欧州の運用会社は6社(アリアンツ・グローバル・インベスターズ、アビバ・インベスターズ、アバディーン・スタンダード・インベストメンツを含む)だった。

 これに対し、上記100名のCEOの役員報酬提案のうち反対票を投じた割合が欧州運用会社の中で最低だったシュローダー(53%)を上回った米国の大手運用会社は3社にとどまった。具体的にはディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ(62%)、モルガン・スタンレー ・インベストメント・マネジメント(55%) およびピムコ(86%)である。

 As You Sowは、S&P500企業の役員報酬と「過去5年間の株主総利回り(TSR)に連動した報酬額」の推定値との比較・評価にもとづいて「報酬が過度に高額」なCEOを特定している。そして「各CEOに過剰に支払われた報酬額」を算出し、「役員報酬提案に反対票を投じた株主の割合に基づく企業ランキングのデータ」に反映させている。

 同NGOは、S&P500企業の役員報酬提案に対する投資家の投票行動についても調査している。それによると、反対票を投じた提案の割合が調査時に最も高かったのはドイツのユニオン・インベストメントと アリアンツ・グローバル・インベスターズでそれぞれ93%と92%だった。

 ユニオン・インベストメントは 「報酬が過度に高額」とされた100名のCEOの役員報酬提案についても97%の割合で反対している。欧州の大手運用会社の中でこれを唯一上回ったのは、98%に反対票を投じた英アビバ・インベスターズだった。

 上記100名のCEOの役員報酬提案に対する反対票の割合が最も低かったのは米最大手のフィデリティで、反対票を投じた割合は調査時で17%にとどまっている。S&P 500企業の役員報酬提案に対する反対票の割合はフィデリティ、ブラックロック、バンガードがいずれも調査時でわずか4%とランキング最下位に位置している。これら3社を合わせた運用資産残高は20兆ドルを上回っている。

 バンガードの広報担当者は昨年のRIの取材に対し、「当社の投資スチュワードシップチームは、投資先企業のエンゲージメント活動の3分の1以上を役員報酬の慣行および方針に集中させている」と述べた。

 さらに、「企業の役員報酬制度に株主の最善の利益が適正に反映されていないのであれば、我々は取締役会に責任をとらせるための投票を行う。ちなみに2021年には、我々は340名の役員報酬をめぐる議案に反対票を投じた」と説明している。

 本稿執筆時点で、ブラックロックとフィデリティからは回答を得られていない。

 運用資産残高1.8兆ドルを擁する仏運用会社大手のアムンディは、「高すぎる」役員報酬をめぐる株主提案に反対票を投じた割合が78%と高かった。As You Sowによると、同社はS&P500企業の役員報酬提案に対しても72%の割合で反対票を投じており(調査時)、昨年の17.6%から大幅に上昇した。

 As You Sowの報告書は、米シンクタンク「エコノミック・ポリシー・インスティチュート」による調査結果を引用している。それによると、2020年のCEOの報酬は典型的な従業員の報酬の351倍に相当し、「2019年の307倍から格差が広がっているほか、1965年の21倍、1989年の61倍に比べると著しく拡大している」としている。

 さらに、ここ数年この問題に対する投資家の注目度が上がっているとも指摘している。昨年を例にとると、役員報酬に関する会社提案が過半数の株主の反対で否決された事例が過去最多の16件に上り、2020年の10件から60%増、2019年の7件の2倍超となった。

 役員報酬は投資家にとっても財務上の影響をもたらす要因となる。As You Sowが2015年に役員報酬に関する報告書を初めて公表して以来、毎年の報告書には「CEOの報酬が最も高すぎる企業の株主リターンはS&P企業の平均を下回っている」と例外なく記載されている。


RI_logo

【参照】
Responsible Investor,  Paul Verney「Wide gap between largest European and US investment managers on CEO pay, research reveals」2022年2月28日(2022年3月8日情報取得)


QUICK ESG研究所