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 QUICKリサーチ本部ESG研究所は2022年1月20日、日本に拠点を置く投資家のESG(環境・社会・企業統治)投資の実態を明らかにするために実施した「ESG投資実態調査2021」を公表した。集計結果を3回に分けて紹介する。まずエンゲージメント(対話)のテーマを取り上げる。

《ポイント》

  • 2021年度に重視しているエンゲージメントの上位のテーマは「気候変動」、「人権」、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の尊重)」、「環境サプライチェーン」、「生物多様性」だった。生物多様性は、前回調査から最も増加幅の大きいテーマとなった。
  • 2020年、21年に日本企業に提出された気候変動関連の株主提案に対しては「気候変動に対する方針、目標設定の状況の国内外企業との比較」の観点から賛否判断したという回答が最も多かった。

《図表》重視しているエンゲージメントのテーマ
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(注)有効回答社数:前回34、今回39

 ESG投資手法で前回調査に続き今回調査でも上位に入った「エンゲージメント」で、2021年度に重視しているテーマは「気候変動」(有効回答社数の92%、以下すべて設問ごとの有効回答社数に対する割合)が1位だった。「人権」と、今回選択肢に加えた「ダイバーシティ&インクルージョン」がともに59%で2位に入った。

 次いで「環境サプライチェーン」、「生物多様性」(ともに36%)だった。生物多様性は前回調査(9%)から急浮上。回答社数は3社から14社になり、増加幅の最も大きいテーマとなった。また、「森林」、「腐敗防止」、「持続可能な漁業」は絶対数が少ないものの、前回に比べ回答社数が倍以上に増えた。

 エンゲージメントとは「企業行動に株主としての影響を与えるための行動の一部で、企業(取締役など)との直接的な対話」のことを指す。温室効果ガス排出量や、新疆ウイグル自治区、ミャンマーにおける人権侵害の疑いなど、気候変動や人権は一般の人々でも関心事になってきたが、投資家の世界ではテーマがさらに広がりを見せている。

 今回の調査結果を踏まえると、持続的な原材料の調達といった、事業が生態系に与える影響の緩和に関する方針や取り組みが注目されてきているのだろう。2021年6月に「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が発足し、「カーボンニュートラル」といった気候関連だけでなく、「自然資本」の重要性という視点も、投資に求められるようになってきているようだ。

 一方、エンゲージメントのテーマで首位になった気候変動については株主総会での株主提案が注目を集めた。その議決権行使にあたっては、個別企業の方針、目標などの将来展望をふまえた国内外企業との比較によって判断するとの回答が半数を占めた。「株主提案公表後の企業発表や企業との対話内容」(38%)による判断を上回った。株主提案については体系化された基準ではなく、個社、議案ごとに判断している機関投資家が多く、判断に至った経緯などの開示内容が注目されている。

=(2)に続く

 

《調査の概要》

ESG投資実態調査2021(要約版)はこちら


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