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 QUICKリサーチ本部ESG研究所は2022年1月20日、日本に拠点を置く機関投資家を対象に実施した「ESG投資実態調査2021」を公表した。調査は今回が3回目。2021年度に重視するエンゲージメント(対話)の上位のテーマは「気候変動」、「人権」、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の尊重)」、「環境サプライチェーン」、「生物多様性」で、生物多様性は前回調査から最も増加幅が大きかった。

エンゲージメントの上位テーマは気候変動、人権など

 2021年度に重視するエンゲージメントの上位のテーマは「気候変動」(有効回答社数の92%、以下すべて設問ごとの有効回答社数に対する割合)、「人権」、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の尊重)」(ともに59%)、「環境サプライチェーン」、「生物多様性」(ともに36%)だった。生物多様性は前回調査(9%)から急浮上し、最も増加幅の大きいテーマとなった。持続的な原材料の調達といった、事業が生態系に与える影響の緩和に関する方針や取り組みが注目を集めているようだ。

 2020年、21年に日本企業に提出された気候変動関連の株主提案に対しては「気候変動に対する方針、目標設定の状況の国内外企業との比較」の観点から賛否判断したという回答が50%で最も多かった。将来展望もふまえた国内外企業との比較によって判断しているところが多いとみられる。

■日本株運用全体に占めるESG投資の割合が7割に上昇、6割強の機関が専門組織を設置

 日本株の運用資産残高全体に占めるESG投資の割合は70%と、前回調査の68%から上昇した。個別の会社の日本株運用残高に占めるESG投資の割合は「90%以上」との回答が22社(52%)となった。日本株の運用資産に占めるESG投資を5年後に増やす見通しと回答したのは9社(22%)。その要因は「自社の経営トップによるコミットメント」(78%)が最も多かった。組織については「責任投資やESGリサーチなどの専門部門・部署がある」が31社(63%)で最も多く、前回調査25社(53%)から増加した。経営陣が旗を振り、専門組織も整ってきているだけに、日本株のESG投資の増加傾向は続きそうだ。

 責任投資活動の報告書に含める必要のある課題は「責任投資の中長期ビジョン」(78%)が最多で、「ビジョンに係る中長期目標」、「自社のマテリアリティ(重要課題)」(ともに53%)が続いた。機関投資家の間では中長期の戦略や目標などの開示が課題として意識されているようだ。

■個別企業の価値評価、「ビジネスモデルの強靭性」など定性面を組み入れ

 ESG投資の手法は「ESGインテグレーション(ESG要因を投資分析および投資決定に体系的かつ明示的に組み込んだ投資)」が87%で最多となり、「エンゲージメント」(83%)、「議決権行使」(78%)が続いた。ESGインテグレーションは個別企業の投資評価の段階で組み入れられるケースが大半を占め、セクターアロケーションやアセットアロケーションでの組み入れは少数にとどまった。

 個別企業の価値評価で組み入れている情報については「サプライチェーンの対応状況も含めたES課題に関するビジネスモデルのレジリエンス(強靭性)」(65%)、「消費者ニーズや規制の変化をふまえた競争力の評価」(63%)、「ES課題関連ソリューションの提供や研究開発能力の評価」(53%)が上位に入った。

アセットオーナーが要求する報告は「企業との対話状況」が最多の86%

 運用会社(アセットマネジャー)が運用委託者(アセットオーナー)から要求される報告事項は「企業との対話状況」(86%)が最も多く、「責任投資の管理・推進体制」(76%)、「対話の効果」(65%)が続いた。「特定テーマレベル(気候変動など)の対応状況」は41%だった。

 運用会社がアセットオーナーに対して要求したい事項は「ESG考慮によるフィー向上」(67%)が最も多く、「運用委託先への四半期評価廃止」(25%)、「ポリシーメーカーへの提言」(21%)が続いた。

■「ダブル・マテリアリティ重視」が「シングル・マテリアリティ重視」を上回る

 マテリアリティに関して企業に求めるスタンスでは「ダブル・マテリアリティ(環境・社会が企業価値に及ぼす影響だけでなく企業が環境・社会に及ぼす影響も考慮する考え方)を重視すべき」が46%で最も多く、「シングル・マテリアリティを重視すべき」との回答を上回った。

 企業のマテリアリティの開示に関する課題は「企業価値や事業戦略との関係の説明が不足」、「CEOやマネジメントのコミットメントが不足」、「マテリアリティ自体は問題ないが、目標・KPIの設定が不足」が上位3項目だった。

コーポレートガバナンス・コード改訂の3観点の評価「内容が十分」が多い

 2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂の主なポイントとして掲げられた3つの観点(取締役会の機能発揮、企業の中核人材における多様性の確保、サステナビリティを巡る課題への取り組み)はいずれも「内容が十分である」の回答が多く、「十分でない」の2倍前後に達した。

 

《調査の概要》

ESG投資実態調査2021(要約版)はこちら


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