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 2021年は仕事や生活のリズムが取りづらい、難しい一年だったと感じられる方が多いのではないか。新型コロナウイルスのワクチンの接種が進み、東京五輪も無事開催され、年初から断続的に続いていた緊急事態宣言も秋には解除となり、コロナ禍が落ち着いたと思った矢先、今度は同ウイルスの新たな変異型「オミクロン型」の脅威にさらされている。

 サステナビリティ関連では、世界的に気候変動への対策が強化され、温室効果ガス排出量は企業や機関投資家のみならず、一般の人々にとっても注目される数字になった。第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)以降、主要自動車メーカーが矢継ぎ早に電気自動車の販売台数の目標やその達成時期を公表したことは、人々の消費行動に環境や温室効果ガス排出量への意識が高まっていることの現れである。環境への配慮は、ニッチな消費者層をターゲットとすれば良かった段階から、今やメイン市場に大きな影響を及ぼす課題となった。

 人権問題も同様である。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」がスタートして2021年は10周年を迎えた。企業は自社のサプライチェーンに潜む人権侵害のリスクをきちんと把握し、適切な対応、救済措置を取ることへの要請が今後さらに強まるであろう。

 それではアラベスクS-Rayのスコアで今年を振り返ってみたい。まず、S-Ray世界全体のユニバースとそのユニバースの中の日本企業を年初(1月1日)と直近の12月21日のスコアで比較してみたい。

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 この1年間でみてみると、S-Rayのユニバース全体では、ESGスコアが上昇したことがわかる。環境、社会、ガバナンスのサブスコアもいずれも上昇した。世界全体で、企業のESGに対する取り組みが企業価値の増加に貢献したのではないかと考えられる。

 一方、国連グローバルコンパクト(GC)の原則に基づいて企業の行動規範を評価して算出する「GCスコア」はわずかに低下した。サブスコアの労働と腐敗防止はプラスとなったが、人権と環境がマイナスになった。GCスコアにおける環境のサブスコアは、業種ごとの環境の重要性(マテリアリティ)を考慮していないことから、環境負荷が大きく環境の重要性の高い企業と、環境負荷が小さく環境の重要性の低い企業が同じ基準で評価されている。このことから、ユニバース全体の企業を横並びに評価すると、環境への取り組みは停滞しているようだ。

 次に、S-Rayで対象とする日本企業に絞った場合をみていきたい。過去1年間ではESGスコア、GCスコアともに低下した。サブスコアでみると、ESGスコアの社会サブスコア、GCスコアの人権と労働のサブスコアがプラスとなった。コロナ禍で、各企業のサプライチェーンへの対応が進んだのではないか。

 さらに、もう少し詳しくスコアをみてみたい。S-Rayは(表1)のESGスコアとGCスコア、そして各サブスコアを毎日算出しており、そのベースとなる22種類のサステナビリティ項目についても日々スコアを算出している。これら22種類のスコアの変化から、過去1年の世界全体および日本企業のサステナビリティの取り組みの特徴が見出せるのではないか。

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 22種類のサステナビリティ項目は1~7が環境(E)、8~17が社会(S)、18~22がガバナンス(G)に分類される。ユニバース全体、日本企業ともに、マイナスに変化した項目の方が多く、プラス項目はユニバース全体では8項目、日本企業では9項目であった。

 E、S、Gをそれぞれみていくと、まず、環境は7項目のうち、ユニバース全体、日本企業ともに4項目がプラスとなり、世界全体で環境に対する取り組みが強化されたことがわかる。社会は全10項目のうちユニバース全体では2項目、日本企業は5項目がプラスであった。日本企業は社会への取り組みにも力を入れてきたことがわかる。最後はガバナンスである。全5項目のうち、ユニバース全体では2項目がプラスとなった。一方、日本企業は5項目すべてがマイナスであった。以前から日本企業のガバナンスは弱いとされてきたが、改善しているとはいえないようだ。

 このようにS-Rayのスコアで今年の企業の取り組みをみてきた。ユニバース全体、日本企業ともにサステナビリティに対する取り組みの大きな流れをつかむことはできたと思う。2022年も前半はコロナ禍の中での経済活動が続くことになりそうだが、世界の企業はサステナビリティの取り組みを止めていない。1年後の振り返りではプラス項目が多くなっていることを期待したい。

(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)


雨宮 寛(あめみや・ひろし)
アラベスクS-Ray社日本支店代表。アラベスク・グループの日本事業の責任者。アラベスク以前は外資系金融機関で運用商品の開発に従事。CFA協会認定証券アナリスト。一般社団法人日本民間公益活動連携機構アドバイザー、明治大学公共政策大学院兼任講師。NPO法人ハンズオン東京副代表理事。ハーバード大学ケネディ行政大学院(MPA)、コロンビア大学経営大学院(MBA)。