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 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント (Legal & General Investment Management、以下LGIM)、オランダの年金基金「PGGM」、 アビバ・インベスターズ(Aviva Investors)をはじめとする有力投資家は、石炭火力に投融資を行うアジアの金融機関や同地域のエネルギー企業を対象に、エンゲージメントを行うイニシアチブを共同で立ち上げた。

 新たなイニシアチブ「アジア・トランジション・プラットフォーム(ATP)」は今後3年間でアジアを拠点とする企業50社に対してエンゲージメントを行う計画で、当初は域内で石炭火力への投融資額が特に大きい金融機関と、石炭火力への依存度が特に高いエネルギー企業に対象を絞る。現時点でエンゲージメントの対象に決まっているのは、中国の国有企業である中国華能集団と中国華電集団の2社のみである。

 ATPの設立メンバーには、このほか、英国のBMOグローバル・アセット・マネジメント、フィデリティ・インターナショナル(Fidelity International)、英国地方自治体年金基金フォーラム「LAPFF」 も名を連ねている。これらの投資家は、アジアの銀行に「化石燃料事業と関連インフラへの投融資」を停止するよう求めている。エネルギー企業には、パリ協定の合意目標との整合性について説明を求めていく。

 PGGMの責任投資アドバイザーを務めるアンドレス・ファン・デル・リンデン(Andres van der Linden)氏は、金融機関に照準を合わせることは「極めて重要」であると説明する。同氏はRIの取材に対し、「銀行の支援がなければ、化石燃料資産の成長に大きな支障が出るからだ」と答えている。

 参加メンバーの調整役を担うのは、シンガポールに拠点を置くコンサルタント会社であるアジア・リサーチ・アンド・エンゲージメント(ARE)で、グループとして金融当局に働きかけ、気候変動に伴うリスクと機会に関する「情報開示とリスク管理の強化」を促していく。

 AREの創業者でマネジング・ディレクターのベンジャミン・マッカロン(Benjamin McCarron)氏は、本イニシアチブはクライメート・トランジション(低炭素社会の実現に向けた移行)を模索する投資家と、その目標達成のカギを握るアジア企業との「ギャップを埋める」ことを目指すと述べている。

 「アジアの企業は、気候非常事態に対処するための主導的役割を担うことのできる有利な立場にある。このプラットフォームは、求められる成果を挙げるために尽力する投資家を団結させ、実現に導くものである」と、アビバ・インベスターズのESGリサーチ&ガバナンス部門トップのミルザ・バイグ(Mirza Baig)氏は話している。

 LGIMのシニア・サステナビリティ・アナリストの ヤスミン・スヴァン・サーレラ(Yasmine Svan Saarela)氏は、欧州や北米では脱炭素社会の実現に向けて投資家が結集して立ち上げたイニシアチブがいくつもあるのに対し、アジアに特化したものは遥かに少ない。中でも、中国の金融機関や電力会社については極端に少なくなっている」と指摘する。そして、「アジアも早急に脱炭素社会への軌道に乗ることが求められており、各国の最大手企業は移行をリードしていくべきである」とも述べている。

 今年初め、運用資産総額8.8兆ドル超を擁する機関投資家グループ「Asia Investor Group on Climate Change」は、アジアの電力会社5社(中国の華潤電力控股、香港の中電控股、日本の中部電力および電源開発、マレーシアのテナガ・ナショナル)を対象とする独自のエンゲージメントプロジェクトを立ち上げた。

 今回の投資家イニシアチブの発足と時を同じくして国際エネルギー機関(IEA)は、中国はクリーンエネルギーへの移行を目標とする2060年より早く実現する「手段と能力」を有しているとの研究結果を発表した。IEAのファティ・ビロル(Fatih Birol)事務局長は、「移行ペースが加速すれば、中国の二酸化炭素排出量は2025年以降著しく減少し、2060年よりかなり前にカーボンニュートラルを達成する可能性も出てくる」と述べている。


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【参照】
Responsible Investor, Paul Verney「Investors focus on Asian coal financiers as part of new climate engagement platform」2021年9月29日(2021年10月11日情報取得)


QUICK ESG研究所