pollbox
RI_logo

 本稿は、レスポンシブル・インベスター(RI)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 英国の全てのアセットオーナーは、合同運用資産の議決権行使に関して自らの「意思表示」をする機会を与えられるべきであり、これに抵抗する動きや市場による迅速な対応がみられない場合には、法制化を進めるべきであると政府のタスクフォースは勧告した。

 年金制度議決権行使に関するタスクフォースは20日、アセットオーナー議決権行使についての勧告書を発表し、アセットオーナーによる議決権行使を認めることに対するファンドマネジャーの姿勢と彼らの不透明な議決権行使方針を厳しく批判した。

 勧告書によると、法制化は「最後の手段」であり、「パンドラの箱のようなもの」である一方、市場がアセットオーナーに委託資産の議決権行使をめぐる意思表示を認めないのであれば、「法律を変える以外の選択肢はない」と指摘している。

 タスクフォースは市場参加者との意見交換や今年初めに行ったヒアリングの内容を踏まえ、「多くのファンドマネジャーが提供する顧客サービスは極めて不十分と思われる」とし、「一部のステークホルダーの行動には大きな問題があり、年金基金とエージェントの間に不均衡な力関係が生じている」と指摘している。

 アセットマネジャーとの意見交換では、アセットオーナーがアセットマネジャーの議決権行使に不満がある場合には資産の委託先を変更すべきと回答するケースが相次いだ。タスクフォースはこれについて、「アセットマネジャーの責務と自己満足の態度は憂慮すべきものであり、コメントせざるを得なかった」と述べている。

 合同運用資産の議決権を分割して行使することに関しタスクフォースは、規制上および技術的な障害が大きいとして議論を避け、現時点で浮上している問題はいずれもさほど「重要または対処不可能」なものではないとしている。ただ、アセットマネジャーがアセットオーナーの「意思表示」に基づいて議決権を行使した場合、それが運用ルールに違反しない旨を明示するよう金融行為規制機構(FCA)に求めている。

 さらに、タスクフォースは、FCA、労働・年金省(DWP)および年金規制局(TPR)は「議決権行使の内容をファンドまたは委託ごとに注意深く監視すべきである」と述べている。そして「2022年末までにファンドマネジャーが対応しない場合、FCAはファンドまたは委託との情報開示を法制化するか、相応のガイダンスを発行すべきである」と提案している。

 一方、アセットオーナーも批判の対象となった。ヒアリングへの回答をみる限り、議決権行使について独自の方針を定めているアセットオーナーは全体の31%にとどまっている。だが、回答者のうちアクティブ運用を採用する大規模なアセットオーナーが占める割合が極めて高いことを踏まえれば、実際の数値はさらに低いことも考えられると指摘している。また、議決権行使の指針をファンドマネジャーに委ねていると回答したアセットオーナーが41%だったのに対し、28%はオーバーレイ・サービスプロバイダーや事業者団体の方針を採用していると回答している。

 英国年金基金の代表者団体(Association of Member-Nominated Trustees:AMNT)と慈善団体ShareActionが過去に発表した報告書は、多くのファンドマネジャーの議決権行使の指針は気候、人権または民族、性別の多様性について具体的に言及していないことを明らかにした。タスクフォースは年金の信託受託者に対して、議決権行使に関する独自の指針を策定するか、ファンドマネジャーの指針に対する責任を負うことを明確にするよう提言している。

 また勧告書は、年金加入者の意向を議決権行使に反映すべきかどうかという問題にも対処する必要があるとしている。そして、確定給付制度から確定拠出制度への移行を機に年金加入者が投資リスクを負うようになったことで、「従来の制度に由来する仕組みや考え方は(中略)目的に合致しないものになりつつある」と説明している。

   フィンテック企業Tumeloは、年金加入者による投資先企業の株主投票をサポートしている。同社チーフエグゼクティブのジョージア・スチュワート(Georgia Stewart)氏は、「リスクを負う資金拠出者が自らの資産のスチュワードシップについて理解し、発言するのは当然の権利である。勧告書にあるように、これは年金基金に議決権行使の指針策定を義務づけるものではなく、少なくとも、資金拠出者を代表してスチュワードシップの指針の透明性を向上し、より強いオーナーシップを発揮するよう求めるものである。その過程では、資金拠出者である年金加入者の見解を反映するよう努めるべきと考える」と述べている。

 さらに、「投資先企業を決めるのはファンドマネジャーかもしれないが、運用資産と将来は一般の年金加入者を含む投資家に帰属するものである。潜在的な投資家が定年退職を迎えるのは何年も先のことであり、彼らに真の利益をもたらすのは長期投資の思考である。彼らにとって重要なのは目先の株価ではなく、企業が気候変動、公害、人種間の平等、公衆衛生に付随するリスクと自社の事業がこれらに及ぼす影響をいかに管理しているかという点である」とも話している。

 タスクフォースは、2020年12月に議決権制度をめぐる問題に対処するためにDWPによって組織され、英国サステナブル投資金融協会(UKSIF)の前CEOのサイモン・ハワード(Simon Howard)氏が議長に就任した。その他のメンバーには、運用資産総額1,700億ポンドを擁する年金基金「Scottish Widows」の年金投資部門トップの マリア・ナザロヴァ・ドイル(Maria Nazarova-Doyle)氏のほか、AMNTのリーン・クレマン(Leanne Clements)氏とジャニス・ターナー(Janice Turner)氏が名を連ねている。副議長はMinerva AnalyticsのCEO、サラ・ウィルソン(Sarah Wilson)氏が務める。

 ナザロヴァ・ドイル氏は、「合同運用資産の議決権行使について、我々のようなアセットオーナーが発言権を持つことは極めて重要である。我々の顧客の多くはこうしたファンドに投資しており、我々が顧客に代わって行うあらゆるタイプの投資は我々のスチュワードシップ責任の対象に含まれる」と話している。

 また、「アセットオーナーは、議決権行使に関するガイドラインを設けたり、アセットマネジャーに意思表示をしたりすることで影響力を持つことができ、アセットマネジャーが議決権行使エンゲージメント活動を行う際にアセットオーナーのサステナビリティ志向が考慮されることになる」とも指摘する。

 英国のガイ・オッパーマン(Guy Opperman)労働・年金相は「今回の勧告内容を精査」し、できるだけ早期に対応する考えを明らかにした。

 RIはFCAとTPRにコメントを求めたが、回答は得られていない。英国財務報告評議会(FRC)は勧告書を歓迎するとし、自らが公表するスチュワードシップ・コードにおいて今後議決権行使の注目度を高めるよう提言されたことに応じて「我々は、議決権行使は株主投資家が自らの権利を行使し、その顧客や受益者にスチュワードシップ行動を示すための重要な手段であると認識しており、優れた情報開示の実例を提示し、改善が必要と思われる箇所を明示することで、引き続き効果的な情報開示を促していきたい」と述べている。


RI_logo

【参照】
Responsible Investor,  Dominic Webb「Legislation could be only option to support trustee voting in pooled funds, says UK Taskforce report」2021年9月21日(2021年10月7日情報取得)


QUICK ESG研究所