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 環境月間の6月なので、改めて温室効果ガス(GHG)と自動車メーカーの責任について考えてみたい。昨今の世界的な気候変動に関する取り組みで、様々な情報やデータが公開されているが、ここでは全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)のウェブサイトで公開されているデータ(https://www.jccca.org/download/13327)を使用する。

 そのデータによると、2018年の世界の二酸化炭素排出量の合計は約335億トンとなっている。国別排出量の上位5カ国および欧州4カ国(英・独・仏・伊)を下の表にまとめた。中米印の上位3カ国で世界の排出量の約半分を出していることになる。それにロシア、日本および欧州4カ国を加えると約63%と、3分の2に近い排出量を出している。

(表1)世界の二酸化炭素排出量国別排出量上位5カ国と欧州4カ国

順位

国名

排出量(百万トン)

世界全体に占める割合(%

1

中国

9,528

28.4

2

アメリカ

4,921

14.7

3

インド

2,308

6.9

4

ロシア

1,587

4.7

5

日本

1,081

3.2

 

英・独・仏・伊

1,663

5.0

 

上記合計

21,088

62.9

 

世界の排出量

33,513

100.0

(注)JCCCAの公開データ(出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版)から抜粋・一部加

 必ずしも適切な比較とは言えないが、世界の主要自動車メーカーの排出量をみてみたい。ここでは、時価総額では世界最大の自動車メーカーであるテスラは、電気自動車(EV)のみの製造なので対象としない。主にガソリン車の販売台数の多い日米欧の自動車メーカーを5社選び、各社のGHG排出量の状況を次の表にまとめてみた。

(表2)日米欧の主要自動車メーカーのGHG排出量

自動車メーカー

S-Rayの環境

サブスコア

GHG排出量(百万トン)

スコープ1

スコープ2

スコープ3

トヨタ

63.2

1.90

3.78

397.94

フォルクスワーゲン

58.4

4.34

2.80

368.94

ホンダ

68.3

1.24

3.79

298.09

ゼネラル・モーターズ

64.1

1.26

3.09

249.38

日産

75.9

0.77

2.17

173.14

(注)S-Rayの環境サブスコアは2021年6月22日時点で、各社のESGスコアを構成する環境(E)サブスコア。GHG排出量は、各自動車メーカーが環境データとして開示している温室効果ガス排出量で、温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)の他、メタン(CH4)、一酸化窒素(N2O)、フロンガス等が含まれる。米環境保護庁(EPA)によると、CO2が温室効果ガスの7割以上を占めることから、本稿では、表1の二酸化炭素(CO2)排出量と表2のGHG排出量を比較する。
(参考)米EPAのサイト:
https://www.epa.gov/ghgemissions/global-greenhouse-gas-emissions-data

 スコープ1は企業活動による直接的なGHG排出量、スコープ2は企業活動のエネルギー利用に伴う間接的なGHG排出量、そしてスコープ3はスコープ1、2に含まれない間接的なGHG排出量である。スコープ3は15のカテゴリーに分類されており、その中で最も重要なのはカテゴリー11に分類される、製品の使用によるGHG排出量である。つまり、自動車メーカーが製造・販売した自動車から生じるGHG排出量だ。

 各自動車メーカーによって、スコープ3のGHG排出量全体に占めるカテゴリー11の割合は異なるものの、筆者が確認したところ概ね8割程度を占めている。表2から、スコープ3のカテゴリー11に分類されるGHG排出量は5社合計(1,487.49百万トン)の約8割の1,190百万ということがわかる。これは表1の国別排出量における日本の二酸化炭素排出量と同水準である。

 日本の排出量の世界に占める割合は3.2%なので、表2の自動車メーカーが製造する車をすべてEVまたは燃料電池自動車(FCV)にしたとしても、3.2%程度の排出量の削減にしかならない。しかし、見方を変えれば、世界の中でたった5社がガソリン車からGHGを排出しないEVやFCVの生産に移行することで、日本の排出量分のGHGを削減できるのである。

 自動車メーカーには、20XX年までに新車を全てEVやFCVにすると公表するところが出てきている。各社のスコープ3、特にカテゴリー11の状況を鑑みれば、ガソリン車かEV・FCVかを選ぶのは消費者の自由な選択だと、消費者任せにしていてはならないということなのだろう。今回は自動車メーカーについて取り上げたが、同様のことは他の多くの業種にもあてはまるであろう。

 

(参考)表2の各社排出量データの出所

(アラベスクS-Ray社日本支店代表 雨宮寛)


雨宮 寛(あめみや・ひろし)
アラベスクS-Ray社日本支店代表。アラベスク・グループの日本事業の責任者。アラベスク以前は外資系金融機関で運用商品の開発に従事。CFA協会認定証券アナリスト。一般社団法人日本民間公益活動連携機構アドバイザー、明治大学公共政策大学院兼任講師。NPO法人ハンズオン東京副代表理事。ハーバード大学ケネディ行政大学院(MPA)、コロンビア大学経営大学院(MBA)。