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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 英国の国家規格策定機関である英国規格協会(BSI)は、自然資本勘定を作成するための世界初のガイドラインを策定した。

 新たな規格である「8632: Natural Capital Accounting for Organisations - Specification」は、英国が生物多様性と金融分野を牽引する地位を築きつつあることを示す証であり、自然資本勘定に関する専門用語、原則、手法および出力の概要を説明している。

 BSIによると、新たなフレームワークを使うことで企業や政府、金融機関は自らの活動が自然に及ぼす影響や自然への依存度を特定した上で、生物多様性の喪失がもたらすリスクと機会を把握することができる。また、コミュニケーションの円滑化にも寄与し、民間企業はより豊富な情報に基づいた意思決定を下せるようになるとしている。

 「自然資本会計は、金融、環境および社会経済上の情報を結び付けることで、自然が組織および社会にもたらす価値を明らかにする。さらに、組織が自然に及ぼす影響を評価できるようにする」とBSIのESG規格づくりを統括するデビッド・ファッチャー(David Fatscher)氏は述べている。

 BS 8632は、NPOの「Capitals Coalition」、「Forestry Scotland」および「Institute of Chartered Accountants in England and Wales」などから成る委員会が開発した。

 英国はここ1年、生物多様性のフロントランナーとしての立場を築いてきた。2021年6月4日に発足した「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」もそうした流れの一つで、自然資本に関する世界的な情報開示基準の開発を目的としている。英国政府は2021年5月、環境法を改正して種の保護に向けた目標設定を義務づける方針を示した。ジョージ・ユースティス(George Eustice)環境大臣はこの動きについて、「自然に関するネットゼロ目標のようなもの」と述べている。

 英国政府は2021年6月14日、自らの委託により年初にまとめられた報告書である「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」への対応を明らかにした。その中で「自然に優しい未来」の実現を支援する方策として、新設される英国インフラ銀行のマンデート(使命)を拡大して投資の意思決定プロセスに自然資本の組み入れを義務づける可能性などを挙げている。同行は開設に向けた準備段階にあるが、民間投資を「募って」集めた400億ポンドの資金をグリーンインフラ事業に投資する計画である。

 英国コーンウォールで開催されたG7首脳会合でも生物多様性は重要テーマとして扱われ、「ネイチャー・コンパクト」と題する合意文書が発表された。参加7ヵ国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)は、自然に悪影響を与える活動の阻止につながるインセンティブと政策を用いるほか、2030年までに自然保護に向けた投資を拡大し、生物多様性の喪失を食い止めることを約束した。

国際標準化機構(ISO)に加盟する各国機関が開発中のその他の規格

 BSIはこれまでも、グリーンおよびサステナブルファイナンスの公式規格の策定を目指してきた。またレスポンシブル・インベスターの取材に対し、英国のサステナブル投資ファンド向けのガイダンス策定を進めており、2022年の発行を計画していると話した。新たな規格は「PAS 7342: Product fund – Assessment, monitoring and labelling of sustainable investment funds– Specification」と呼ばれ、BSIが進めているサステナブルファイナンス標準規格策定プログラムの下で定められた3つめの規格となる。

 上記プログラムは英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省と金融業界による5ヵ年の共同プロジェクトで、「金融セクターに適用されるグローバル基準の策定」を目指している。

 BSIはISOに加盟する165の機関の1つである。ISOは国際的に認定される規格の発行を目的に設立され、これまで2万を超える規格を発行してきた。ISOにとってサステナブルファイナンスは比較的新しい分野で、各国と協力して様々な国の加盟機関が開発した規格を認定している。

 そうした状況下で、BSIもISOに代わってサステナブルファイナンスに関する投資家、銀行、保険会社、コンサルタント会社、規制当局および政府機関向け原則とガイダンスの策定を主導している。英国に拠点を置くMorgan Green Advisoryのディレクターで議長役を務めるヘイデン・モーガン(Hayden Morgan)氏はレスポンシブル・インベスターに対し、8週間にわたり各国加盟機関から規格草案へのコメントを募集することを明らかにした。さらに、「それらのフィードバックを受け、COP26で『国際規格の草案』を発表することを目指している」と話した。

 ISOは2021年5月「温室効果ガス管理と関連活動」に関するフレームワークを公表し、気候変動に関連する投資と資金調達活動の評価および情報開示の要件などを示した。

 策定準備を行ったISOワーキンググループの共同議長で国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の「Sustainable Development Mechanism Programme」のマネジャーでもあるマサンバ・ティオイ(Massamba Thioye)氏は、今後潜在ユーザー向けのウェビナーを開催すると明かした。

 最後に、カナダ規格協会の広報担当者によると、同協会のトランジション/サステナブルファイナンス委員会は「トランジションファイナンス原則」および「タクソノミー・ガイドライン」の最終案の審査・承認手続きを行っているということである。脱炭素化に向けたカナダ版タクソノミーを策定する取組みは、同国の銀行業界、投資家および政府機関の主導で進められてきた。

 「この自主的ガイドラインは、カナダ初の銀行業界と産業界のステークホルダー向けガイドラインとなる。現時点で、ガイドラインは2021年の発行を予定している」と広報担当者は話している。


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【参照】
Responsible Investor, Gina Gambetta「UK releases natural capital standards and mulls ESG fund guidelines」2021年6月14日(2021年6月21日情報取得)


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