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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 ドイツ連邦銀行のイェンス・ワイトマン総裁は、金融市場が気候変動リスクを十分に評価できないのなら、欧州中央銀行(ECB)は債券購入プログラムで気候変動対策を考慮せざるを得なくなるだろうと述べた。

 ワイトマン総裁は以前、中央銀行は「市場中立」の原則を遵守すべきであり、「市場の歪み、政治的行動または温室効果ガス排出量を修正する」役割は担っていないと述べていたことから、中央銀行が気候変動問題の解決に向けていかに取組むべきかを示した今回の発言は、同総裁の見解の変化を示している。

 ワイトマン総裁は国際決済銀行(BIS)が主催した2021年6月2日の「グリーン・スワン」会議の講演で、中央銀行は気候変動問題の解決に向けて市場参加者による情報開示と格付け機関と発行体による気候変動リスクへの適切な配慮を促すべきであるとの従来の見解を改めて示した。

 一方で、「そうした解決策は直ちに採用できない」ため、代わりに「気候関連の金融リスクをリスク管理に適切に組み込むための代替措置を講じる必要があるだろう。例えば、特定のセクターおよび発行体の社債の年限や金額を制限することなどだ」と指摘した。

 ECB理事会のメンバーでもあるワイトマン総裁は、ECBのラガルド総裁が推し進める気候変動対策に異を唱える存在と思われてきた。だが今回の発言は、ECB理事会のメンバーと理事が実施する戦略的レビューの一環でこの問題を議論する中で、ワイトマン総裁が心変わりしたことをうかがわせる。

 これに先立ちイングランド銀行は保有する社債の「グリーン化」計画を打ち出し、事業の脱炭素化で最も成果を上げた発行体の社債の購入推進に向けたディスカッションペーパーを発表した。

 BISの会議で講演したイングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、「こうした変化を手本に、より大規模な投資家が気候変動リスクを考慮した上で資産配分をめぐる自らの意思決定を行うようになることを願っている」と述べた。

 これとは別に、ワイトマン総裁は講演の中で気候変動対策に関する情報開示の義務化も求めた。この問題については、米連邦準備理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事やフランス銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁を含む複数の中央銀行幹部が行動を起こすよう促してきた。特にビルロワドガロー氏は、2021年11月に開催されるCOP26で気候変動対策に関する情報開示基準について世界的な合意が得られるとの見解を繰り返し示している。


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【参照】
Responsible Investor, Vibeka Mair「Bundesbank chief u-turns on climate-tilting ECB bond purchases」2021年6月3日(2021年6月11日情報取得)


QUICK ESG研究所