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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 経済協力開発機構(OECD)と国連開発計画(UNDP)が2021年5月26日付で、「Impact Standards for Financing Sustainable Development」を発表した。Global Steering Group for Impact Investmentのチーフエグゼクティブであるクリフ・プライア(Cliff Prior)氏は、この動きを「極めて注目に値する」と歓迎している。

 プライア氏は、「資金力のある援助国と、新興国を含む全世界に対する国連の影響力を1つに結びつける動きである」と述べ、「新たな評価基準は開発援助の側面に焦点を当てたもので、OECDとUNDPの連携は望ましい。極めて重要な第一歩である」としている。

 OECDとUNDPによるImpact Standards for Financing Sustainable Developmentは、UNDPがこれまでに開発してきた、プライベートエクイティファンド、債券および企業の「SDGsインパクト」を評価する一連の評価基準に新たに加わるものである。

 「これら4つの評価基準は、異なる出資者による資金運用を共通の言語とアプローチで結びつけることで、インパクトマネジメントの一体化を図り、SDGsをめぐる組織内の意思決定に寄与するだろう」と国連のSDGインパクトチームのアドバイザーであるベリッサ・ロジャス(Belissa Rojas)氏は述べた。

 SDGインパクト評価基準のワーキンググループのメンバー「BlueMark」のCEOを務めるクリスティーナ・レイヨンフーヴッド(Christina Leijonhufvud)氏はこれらの基準について、各組織がSDGs達成に向けていかに有意義な貢献ができるかを示すより詳しいガイダンスの必要性を反映したものと説明する。

 レイヨンフーヴッド氏は「国連は、人々や地球環境に先進的なプラスの影響をもたらしていると主張する企業や投資家が、緩やかな報告フレームワークとしてSDGsを導入する動きが世界的に広がっている状況を目の当たりにしてきた。だが、それで十分であるとは考えていないだろう」とも指摘する。

 そして「SDGsの活用方法をめぐるガイダンスと厳密さが求められている。国連は、SDGsが企業や投資家によるインパクトの意図や目標の共通かつ統一された開示方法についてコンセンサスを形成する上で極めて有効であると認めているものの、不正に操作または利用され、インパクトウォッシングの手段として使われるケースが多いこともわかっている」と説明している。

 OECDの政策アナリストのプリシラ・ボワルディ(Priscilla Boiardi)氏は、UNDPと共同で評価基準を策定した背景には、ファイナンスとインパクト投資を組み合わせることで持続可能な開発に向けて民間部門とより効果的に協力したいとの意欲があったことを明らかにした。

 ボワルディ氏は、「民間資本のリスク軽減を目的に使われる公的資金が、最も必要とされる分野や開発によるプラスのインパクトの達成を積極的に追及する民間組織に投入されるために、評価基準を設ける必要がある」と述べている。

 今回の基準が担うもう1つの重要な役割は、開発金融当局と民間の投資マネジャーが「同じ考えを持つ」ための手助けとなることにある。

 「基準の策定を機に、これまで分断されていたインパクト投資と開発支援という2つの分野の連携が進みつつある。これらの基準は開発金融にインパクト、意図、管理および指標を持ち込むもので、極めて影響力が大きい。企業や投資家の援助国に対する責任と敬意のレベルを引き上げるとともに、透明性の向上にもつながる」とプライア氏は指摘する。

 国連のロジャス氏によると、サステナビリティ会計基準審議会やグローバル・レポーティング・イニシアチブなどが策定した既存の基準は情報開示に焦点を当てているのに対し、国連の一連のSDGインパクト評価基準は、意思決定プロセスでインパクトを考慮することの必要性を重視している。

 「今回の基準は既存のものと重複するのではなく、特に戦略やガバナンス手法に関しては既存の基準に欠けている部分を補うものとなろう」と同氏は説明し、最終的な目標は企業や機関投資家の管理プロセスにおいてインパクトを利益と同等に位置づけることにあると付け加えた。

 また、それゆえ同基準への「要求は厳しくなる」と認めている。

 「これらの基準は、我々が気候危機や社会的な危機を乗り越えるためにやるべきことを示すものであり、ビジネスの手法を根本的に変えるものだ」

「企業はSDGsを達成するための責任を全面的に負っている訳ではないが、その責任の一端を担わなければならない。これは人々、地球、企業および投資ポートフォリオにとっての長期的な均衡を実現できる持続可能な基盤の上にビジネスや投資を置くために必要な変化である」とも述べている。

 一方、匿名でインタビューに答えた国連の幹部職員はSDGインパクトチームのアプローチについて、「ヒアリングに参加した企業や機関投資家の名前や数が明確にされていない」と疑問を呈している。

 また、「民間セクターとのエンゲージメントにはオープンで透明性の高いヒアリングが欠かせない。さらに国際金融公社(IFC)、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP-FI )、国連資本開発基金(UNCDF)や他の国際イニシアチブといった外部機関との連携が望まれるが、今回はそれが行われるのか不明である」と話している。

 この幹部職員は新たな基準の必要性についても疑問を投げかけている。

 「市場にはインパクトに関するガイドラインやフレームワークが乱立しており、国連が今回のSDGインパクトの基準に新たに何を追加し、これらの基準が既存のグリーンボンドイニシアチブやプロセスをどのように補完するのか問いかけることが重要だ。一から作り直す必要はない」とも述べている。

 国連は整合性を確保するため、SDGsのインパクト基準に準拠した取り組みに第三者が認証「SDG Impact Seal」を与える制度の開発を進めている。

 次のステップは評価基準の認知度を向上し、市場での採用を促すことである。ロジャス氏によると、そうした働きかけを行う複数のプロジェクトが立ち上がっている。UNDPのSDGインパクト評価基準、「SDG投資家マップ」、「SDG投資家プラットフォーム」を活用し、東南アジア地域の社会および環境にポジティブなインパクトを及ぼす取組みに民間資本を投入するため、シンガポール政府系ファンドであるTemasekとの連携などが進行中である。


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【参照】
Responsible Investor, Vibeka Mair「Why the OECD and UNDP are partnering on SDG Impact Standards」2021年5月25日(2021年6月4日情報取得)


QUICK ESG研究所