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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 スタンダード・チャータード銀行が米国に本拠を置く企業250社の経営幹部を対象に行った調査で、「企業がネットゼロへ対応するのは、商業的に難しい」と考える回答者が64%に上った。

 2021年3月に公表された同調査は、スタンダード・チャータード銀行がネットゼロのビジネスモデルへの移行過程で米企業が直面している障害やこれまでに達成した成果について報告している。。

 グリーン政策の策定を迫る動きが広がっているにもかかわらず、米企業の大半はいまだ短期的な利益を追求している。調査レポートによると、4分の3を超える経営幹部が「将来の不確かな収入のために現在の確立されたビジネスモデルから得られる安定した収入を犠牲にすることは正当化できない」と回答した。さらに、低炭素社会への移行はそれに係るコストを上回るメリットをもたらさないと考えている回答者は62%に上った。

 また、回答した経営幹部の71%が気候変動対策の実施時期を2030~2050年に先延ばしすることを計画しており、2020年代が「失われた10年」になりかねないとレポートは指摘している。気候変動対策を全く計画していないとの回答も4%ほどあった。

 回答した経営幹部は、規制当局や投資家がネットゼロを強く求めるあまり、本来なら低炭素モデルへの転換に向けた投資を必要としている炭素集約型セクターからの投資撤退を招いているという現実に不満を抱いている。70%を超える経営幹部は、投資家を気候リスクから保護するための規制や移行リスクを加味した資産価値の再評価が、ネットゼロ計画の資金調達を一段と難しくしていると答えた。

 スタンダード・チャータード銀行Environmental & Social Risk Management部門のグローバル責任者を務めるアミット・プーリ(Amit Puri)氏は、「炭素集約型セクターから投資を引き揚げたからといって、ネットゼロが達成される訳ではない。同セクターの企業に投資することは、これらの企業がクリーンテクノロジーの開発やビジネスモデルの転換を進める上で不可欠な研究・開発投資への支援につながる。これら企業の多くはネットゼロを目指して積極的に取組んでおり、世界的なインフラ、エネルギー供給、消費財の移行を成功させる上で重要なカギになる」と述べた。

 一方、世界で温室効果ガス排出量が最も多い企業へのエンゲージメント活動を行っている投資家は、これらの企業は低炭素への移行を計画している「ふり」を続けているだけで、実際には何の進展も見られないと指摘する。気候変動に関するエンゲージメントを推進する投資家グループ「Climate Action 100+」は、159社との2年半にわたるエンゲージメント活動の努力もむなしく、ネットゼロへの移行戦略を開示している企業はないと公表した。

 経営幹部がその他の懸念事項として挙げたのは、サプライチェーンにおける排出量の把握・管理ができない(回答者の64%)、二酸化炭素削減など低炭素化への移行に必要なテクノロジーが利用できない(51%)、移行を成功に導く経営側の強いリーダーシップが欠如している(78%)という点である。


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【参照】
Responsible Investor, Khalid AzizuddinUS execs not convinced Net Zero is commercially viable, finds Standard Chartered」2021年3月29日(2021年4月9日情報取得)


QUICK ESG研究所