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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 責任投資原則(PRI)が最新となる2021年版の「The Inevitable Policy Response :Policy Forecasts (以下、IPR政策予測レポート) 」 を公表した。IPRは世界各国の気候変動政策の状況を投資家向けにまとめたもので、第1回目のレポートを2019年に公表した。

 PRIの委託により作成された最新版のIPR政策予測レポートには、2019年以降の政策の進展や200人の専門家から得た知見が盛り込まれた。内容の監修は、Energy Transition Advisors、Vivid Economics、カーボントラッカー、2 Degrees Investing Initiativeおよびグランサム気候変動環境研究所が行った。同レポートは21か国を対象に、それぞれの国・地域が掲げる排出量ネットゼロ目標の達成に向けて打ち出すとみられる政策を概説している。

 炭素価格について、レポートでは2030年までにすべての主要経済国がカーボンプライシング制度を導入し、制度の導入率はCO2排出量ベースで2020年の20%から2030年は75%を超えること、また国境炭素調整措置が政府にとって実行可能な政策となることを予想している。

 2020年にドイツの二酸化炭素排出量が14.5%減少した最大の要因は、改正後の欧州排出量取引制度の下で炭素価格が上昇したためと公表されている。同国の連邦環境・自然保護・原子力安全省は、欧州市場で炭素価格が上昇したことを受け、石炭火力発電のコストがガス火力発電に比べてさらに割高になったと述べた。

 Vivid Economics(2021年3月にマッキンゼー・アンド・カンパニーに買収された)のエンゲージメントマネジャーを務めるエリック・リン(Eric Ling)氏は、「投資家が未来の姿を描くために役立ちたいと考えている。ネットゼロに向けた業務や製品のシフトについて明確な計画を立てていない業界や企業への投資はいまだに続いている」と述べる。

 「気候問題をめぐる大きなリスクは、投資家が不適切な投資を行うことにある。背景には、投資家は今後どのような政策がとられるか見通せないまま投資を行い、政策立案者は不適切な投資に伴う減損処理を避けたいがため、予定していた政策の実行に二の足を踏むという流れがある」と同氏は指摘する。

 IPR政策予測レポートは、①カーボンプライシング②石炭火力フェーズアウト③クリーン電力④クリーン搬送⑤低炭素建築物⑥クリーン産業⑦クリーン農業⑧クリーンな土地利用―の8つの政策分野について対応を評価している。最新版レポートの分析では2019年版のものに比べ、124におよぶ項目のほぼ半分で政策がより野心的になっている。

 今後の政策に大きな進展が見込まれるのは、気候変動に懐疑的なトランプ氏に代わってバイデン氏が大統領に就任した米国である。同国はいまだネットゼロの達成目標を掲げていないが、IPRはインドやオーストラリアと同じく2023年末までに目標が掲げられると予想している。

 「米国は、トランプ政権下では基本的に気候変動対策が停止状態にあった。そして、森林保全や気候対策に反する動きがさらに広がるリスクがかなり高まっていた。だが、ここにきて風向きが変わった。」とリン氏は語る。

 IPRは、米国が「早ければ2023年に、おそらく2025年までには独自のカーボンプライシング制度を発表する可能性がある」と予想している。

 IPRが予測した政策が2050年までの実体経済に及ぼす影響をモデル化したレポートである「The IPR: Forecast Policy Scenario (FPS、予測政策シナリオ)」は年内の公表を予定している。IPRは、気候変動枠組条約締結国会議(COP26)が開催される今年11月までに、2030年以降により厳格な政策が実行されるとの見通しに基づく、1.5℃シナリオを策定することを目指している。  


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【参照】
Responsible Investor, Gina Gambetta「Expectations high for carbon pricing in updated PRI policy forecast」2021年3月17日(2021年4月6日情報取得)
PRI, Mark Fulton「Climate policy - the coming acceleration」2021年3月31日(2021年4月6日情報取得)


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