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 本稿は、レスポンシブル・インベスターに掲載された、PRIの最高経営責任者を務めるフィオナ・レイノルズ氏による執筆記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 アクティブ・オーナーシップはPRIが署名機関に求める6つの原則に組入れられており、ここ数年PRIが優先的に取り組んできた課題の1つでもある。なかでも議決権の行使は投資家にとって重要な役割の1つであり、株主の見解を企業側に伝える上で有効な手段である。投資家が投票記録を開示することも同じ意味を持つ。

 オランダの資産運用大手ロベコとエラスムス・スクール・オブ・エコノミクスが米国の大手資産運用会社50社を対象に行った調査では、米国を拠点とするPRI署名機関は、米企業の株主総会で提出された環境・社会問題に関する株主議案を支持するケースが非署名機関に比べて一貫して少ないことがわかった。

 PRIは、運用ポートフォリオを受益者や社会全体の利益と整合させるための手段としての議決権や他のスチュワードシップ・ツールの重要性について喚起を促す調査を歓迎する。しかし、この調査は2018年までのデータに基づくものであり、それ以降のESG関連の株主議案をめぐる動きを反映しているとはいえない。

 2020年には新型コロナウイルスのパンデミックが発生したにもかかわらず、この時期に多くの投資家がサステナブル投資の重要性を具体化させたこともあり、世界の年次株主総会で可決された環境・社会問題に関する株主議案の件数は過去最高を記録した。Proxy Insightのデータによると、社会・環境問題に焦点を当てた株主議案のうち過半数の投資家から賛成票を得たものは21件あり、2018年と2019年の13件、2017年のわずか5件をいずれも上回った。中でも最多の賛成票を獲得したのは、消費財メーカー大手のプロクター&ギャンブルの株主総会で提出された森林破壊に関する議案と、石油メジャーのシェブロンに対する気候関連のロビー活動をめぐる株主議案の2つで、いずれも少なくとも50%の株主から賛成票を得た。

 私達は、署名機関投資家がしっかり構築された適切かつ重要なESG関連の株主議案を支持しなかった事例について残念に思うが、投資家の投票行動に口を出すことはできない。PRI議決権行使に関する投資家教育の一役を担っていると理解しているものの、PRIの署名機関であること自体が、投資家がデューディリジェンスを実施しているかどうかを測る唯一の尺度であってはならないと考えている。

 また、一部の機関は投資判断にサステナビリティを組入れることを意図したのではなく、アセットオーナーが求めているからという理由でPRIに署名していることを承知している。近年は、署名に必要な最低要件の厳格化に取り組んできた。また「Assessing Active Ownership through Engagement and Voting」と題する文書を発行し、アセットオーナーがアセットマネジャーの投票行動を監視することの重要性を繰り返し強調している。

 PRIは2019年に「Active Ownership 2.0」プログラムを立ち上げ、署名機関がこれまで行ってきたスチュワードシップ活動の欠如に対して明確な懸念を示した。また、投資家が議決権行使を含め、利用可能なあらゆるスチュワードシップ・ツールを最大限に活用し、投資家と受益者にとって最重要のシステミックな課題への取組みを促進すべきであるというPRIの信念を明示した。

 PRIは、投資家の議決権行使を支援するためのより効果的な方法を検討している。その一環で、「Making Voting Count」という新たなガイダンスを公表した。ガイダンスでは、投資家がいかに自らの議決権行使プロセスを強化し、株主議案への投票に際して「Active Ownership 2.0」と整合のとれた行動をとるかを指南している。さらに、株主議案の提案者に向けたガイダンスの発表も計画しており、機関投資家の支持を得やすい議案の要件について詳しく説明する。

 こうした取組みにより、投資家が株主議案への投票に際してより原則に基づくアプローチをとるようになり、そのことが議決権行使のツールとしての有効性を向上させると同時に、アセットオーナーが外部のアセットマネジャーの投票をめぐる意思決定を精査しやすくなることにもつながる。

 夏には、署名機関に対する新たな最低履行要件を明らかにする予定である。スチュワードシップを重視する取組みの一環として、その要件にエンゲージメント議決権行使の両方またはいずれか一方を盛り込むことを検討している。またPRIのリーダーズ・グループの評価では、スチュワードシップに主軸を置き、署名機関のうち最善のアクティブ・オーナーシップを実践している投資家にスポットを当て評価する。これら全ての取組みによって議決権行使エンゲージメントのほか、投資家が監視役およびスチュワードとしての責任を果たしていくためのレベルアップにつながることを願っている。

 今や3,700を超える署名機関を擁するPRIは、世界のあらゆる地域からESG対応の成熟段階が異なる投資家を幅広く受け入れている。米国の投資家は投資プロセスにおけるESG要因の組み入れが欧州の投資家に比べて遅れがちであることを認識しているが、地域によって投資家は全く異なる規制環境の下で活動していることも理解している。

 米国のバイデン新政権が気候変動をはじめとする課題の解決を強力に後押しし、ESG課題の認識を高めるような政策を打ち出すことを願っている。そうなれば、投資家は自らの投票行動の透明性を向上し、より協調的で思慮深い議決権行使を実践するようになるだろう。 


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【参照】
Responsible Investor,Fiona Reynolds「A response from the PRI: We’re looking at how we can better support voting practices」2021年3月2日(2021年4月1日情報取得)

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2021年4月1日【RI特約記事】米国では、PRI署名機関の環境・社会問題に関する株主議案への賛成票が少ないことがロベコの調査で判明
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