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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 責任投資原則(PRI)に署名している米国の機関投資家は、米企業の株主総会で提出された環境・社会問題に関する株主議案に賛成票を投じるケースがPRI非署名機関に比べて「一貫して」少ないことが、オランダの資産運用大手ロベコの調査で明らかになった。

 2021年2月、ロベコの首席ポートフォリオマネジャーでクオンツ・エクイティ・ポートフォリオマネジメント部門責任者のウィルマ・デ・グルート(Wilma de Groot)氏、ロベコのポートフォリオマネジャーのジャン・デ・コニング(Jan de Konning)氏、エラスムス・スクール・オブ・エコノミクスのセバスチャン・ヴァン・ウィンケル(Sebastian van Winkel)氏が共同で「Sustainable voting behavior of asset managers: Do they walk the walk?」と題する論文を公表した。論文では、米国の大手資産運用会社50社の2009年から2018年までの株主議案に対する投票記録(対象は約2,000万票)を調査し、投資家の投票行動にESG重視の動きが反映されているかどうか分析している。

 重要な調査結果の1つは、この期間にPRIの署名機関が環境・社会問題に関する株主議案に賛成票を投じたケースが非署名機関より少ないことである。

 論文では、「PRIに署名したアセットマネジャーは、投資の意思決定プロセスへのESG基準の組み入れを約束したことになる。従って、PRIに署名しているアセットマネジャーはESG関連の株主議案に賛成票を投じるケースが増えるはずである。しかし調査では、PRI署名機関が環境・社会問題に関する株主議案に賛成するケースは非署名機関に比べて一貫して少ないことがわかった」と説明している。また、PRI署名機関としての実績の長さによって投票行動に違いが生じることはないとも指摘している。

 とりわけ資産運用業界の「ビッグスリー」と呼ばれるPRI署名機関であるブラックロック、ステートストリート、バンガードの投票行動は、PRI署名機関の平均的な投票結果に「大きな下押し圧力」をかけていることがわかった。論文によると、バンガードがPRIに署名した2014年、環境問題に関する株主議案に賛成したPRI署名機関の割合は3%低下したのに対し、非署名機関が同様の議案に賛成票を投じた割合は12%増加した。

 論文では、サステナビリティへのコミットメントを示すためにPRIに署名するのではなく、アセットマネジャーにPRIへの署名を求めるアセットオーナーが増える中、彼らを顧客として取り込むことなどを目的に署名する機関を日和見主義的な署名機関(opportunistic signatories)と呼び、そうした動きが広がることを懸念している。また「アセットオーナーがアセットマネジャーを選定するにあたり、PRIの署名機関であることはもはや差別化要因にはならないだろう」と指摘している。

 そして、PRIは署名機関を評価するプロセスを「一段と強化」すべきであると提言している。具体的には、「サステナビリティを支持する投票行動」を「PRIから高評価を得るための必須条件」にすることなどを挙げている。現行の評価プロセスでは、「アセットマネジャーが環境・社会問題に関する株主議案の多くに反対票を投じてもなお高評価を得ている」と説明している。

 さらにPRIに対して評価のさらなる透明化も求めている。特に、署名機関の回答についてより詳しい情報を開示し、PRIが回答内容を評価する際の基準と最終的な結果も公表するよう求めている。現状、PRI自体はアセットマネジャーの評価結果を公表していないため、評価の低い署名機関がそれをことさら発表することもない。

 PRI(Principles for Responsible Investments: 国連責任投資原則)の最高経営責任者(CEO)を務めるフィオナ・レイノルズ氏は本論文に対するコメントとして記事を執筆し、署名機関投資家によるアクティブ・オーナーシップ活動を適切にサポートする方法を検討していることを明かした。


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【参照】
Responsible Investor, Paul Verney「PRI signatories in the US support fewer environmental and social proposals than peers, study finds」2021年2月22日(2021年4月1日情報取得)

【関連記事】
2021年4月1日【RI特約記事】米国の署名機関は重要な株主議案を支持しない傾向があるとの調査結果へのPRIからのコメント PRIは署名機関投資によるアクティブ・オーナーシップ活動をより適切にサポートする方法を検討
https://www.esg.quick.co.jp/research/1212


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