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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 世界的な水資源の不足は、気候変動と並び最も重大な環境課題の一つである。水の需要量は、今後10年以内に供給量を56%上回ると予想されている。企業、投資家および各種機関は、水の適正な価格設定をめぐる課題を認識するだけでなく、水のもつ多面的な価値を考慮すべきである。

 水リスクに対応するため、サステナビリティNPOであるCeresは、オランダ政府と共同で「Valuing Water Finance Task Force」を発足した。同イニシアチブの参加機関には、アメリカのカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)やオランダの資産運用会社であるPGGM、オーストラリア最大の年金基金であるオーストラリアンスーパーなど、影響力を持つ投資家が名を連ねる。

 今回、Ceresの水部門ディレクターを務めるKirsten James(キルスティン・ジェイムズ)氏がイニシアチブの参加団体である英国地方自治体年金基金フォーラム(Local Authority Pension Fund Forum、以下LAPFF)の議長を務めるDoug McMurdo(ダグ・マクマード)氏に話を聞いた。

機関投資家として、最も懸念する水課題は何か?

 水資源を過小評価している企業に危惧を抱いている。企業が設定する水の標準的な価格と実際の内在的価値には差があり、後者の方がはるかに高い。水に依存した事業を営んでいるにもかかわらず、水の真の価値を反映していないか、水管理を真剣に行っていない企業があることを特に懸念している。この問題を放置すれば、全ての資産クラスに重大な金融リスクが生じかねない。水不足がもたらすリスクと機会に企業が自らの事業を適応しなければ、最終的に事業破綻に追い込まれるリスクが高くなる。

水リスクに対する投資家の取組みは十分に進んでいるか?

 投資家の水リスクに対する取組みは、気候変動課題への取組みに比べて進んでいない。理由は、水リスクに対する理解や投資家による協働が十分でないためである。LAPFFは、水リスクを重要なテーマとして捉え、投資家による協働をより促進するという野心的目標を掲げている。

「Valuing Water Finance Task Force」に参加した理由は?

 LAPFFは、協働を通じて企業の行動変化を加速させるため、投資家イニシアチブに参加する。投資家による水リスク軽減に向けた取組みをさらに進めるためには、科学的根拠に基づく枠組を構築する必要性がある。イニシアチブが、投資家、企業および政治の分野で水リスクの認知を高め、ベストプラクティスの確立に貢献することを願っている。

 LAPFFは、ファストフードのサプライチェーンにおける水リスクへの対応に取組む国際的な投資家協働エンゲージメントにも参加している。同エンゲージメントは、Ceresと畜産業関連イニシアチブであるFarm Animal Investment Risk and Return (FAIRR)が主導している。アグリビジネスは気候変動の加速と帯水層の汚染に大きく影響を与えている。LAPFFは、CeresやFAIRR、その他投資家と連携し、投資家の声を広め、企業における水資源に関するスチュワードシップの実践を促したいと考えている。

 全ての企業は、水利用の効率化、水の消費量と浪費の削減、そして汚染防止に取組むべきである。これは、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に通じるものである。

水リスクを考慮するようになってまだ日が浅い投資家へのアドバイスは?

 水リスクへの包括的な対応を模索する投資家は、影響が発生した時点で課題を検討し、幅広いステークホルダーをエンゲージメント戦略の対象に含めるべきである。

 投資家が企業と対話する際、水リスクの影響を受けるコミュニティーの関与は見落とされがちであり、無視されることも多い。水の安全性をめぐる問題では、不利な環境に置かれているコミュニティーが大きなしわ寄せを受ける事例が散見される。例えば、ブラジルで発生したサマルコ社のダム決壊事故やブルマジーニョ尾鉱ダム決壊事故では、近隣コミュニティーが水の汚染や公衆衛生の問題を以前から指摘していた。この問題に対し、LAPFFはコミュニティーの住民が声を上げる場の提供に全力で取組んできた。

新型コロナのパンデミックを通じて、水をめぐるLAPFFの取組みに応用すべき教訓は得られたか?

 世界の企業に投資する立場として、パンデミックから得た教訓を挙げるとすれば、「人間の行動がもたらす転換点において、我々は判断を誤りやすい」ということである。水リスクに対して緊急性をもって行動することの重要性を改めて認識した。今、行動をとらなければ、現下の危機よりさらに深刻な影響を招きかねない。このことは干ばつが頻発していることからも明らかである。2020年初めにオーストラリアで発生した破壊的な森林火災やここ数週間に英国の多くの地域で大混乱を引き起こした洪水を鑑みても間違いない。


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【参照】
Responsible Investor, Kirsten James「‘Investors voice concerns about overvaluing assets, but undervaluing assets is of even greater concern’: LAPFF’s Doug McMurdo on water risk」2021年2月4日(2021年2月16日情報取得)


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