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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 欧州議会の法務委員会(JURI)は、企業に人権・環境デュー・デリジェンスの義務化を促すEU法の原案を可決した。

 JURIのメンバー議員は、21対1の圧倒的多数で承認した。EU法の原案は企業がバリューチェーン上の人権、環境およびグッド・ガバナンスへの悪影響を防止することを義務付ける。

 EUでは紛争鉱物や木材・林業といったセクターを対象とするデュー・デリジェンスは既に法制化されている。今回のイニシアチブは、こうしたEU規則の原則を全ての事業活動に広げることを目指している。国レベルでみると、フランス(企業注意義務法)やオランダ(児童労働デュー・デリジェンス法)には既に同様の規制がある。

 国際人権NGOビジネスと人権リソースセンターのEU/西欧担当リサーチャー兼代表者のヨハネス・ブランケンバッハ(Johannes Blankenbach)氏はRIに対し、責任ある企業および投資家は何も恐れることはなく、こうし法規制によってむしろ大きな恩恵を受けられると指摘する。

 「法施行を効果的にするためには、説明責任の仕組みを明確化する必要がある。とりわけ企業の説明責任は重要で、効果的な予防措置を促すと同時に救済へのアクセスの確保にもつながる」と同氏は述べている。

 「企業のデュー・デリジェンスと説明責任(corporate due diligence and corporate accountability)」と題された原案は、3月初めに開催される欧州議会の本会議(plenary)で承認される必要がある。欧州議会は法制化の手続きを開始する権限を持つためである。承認されれば、欧州委員会はこれを無視せず、法制化の提案を後押しすべきである。

 欧州委員会の司法・消費者総局コミッショナー(JUST)のディディエ・レンデルス(Didier Reynders)氏は昨年、デュー・デリジェンスの義務化を表明し、2021年半ばまでに法案を提出する旨を明らかにしていた。

 昨年12月には、持続可能なコーポレートガバナンスの法制化の原案が欧州議会に提出され、JURIでは賛成の総意を得たにもかかわらず、議会では予想外の僅差での可決となった。

 これは、欧州委員会が2018年に発表したサステナブル金融に関するアクションプラン(「アクションプラン:持続可能な成長に向けた金融」)で提示した10個目のアクションに該当する。2月8日までパブリックコメントを募集していた。

 国際NGO「Global Witness」のシニアキャンペーナーであるリチャード・ガーディナー(Richard Gardiner)氏は、欧州議会が報告書を承認し、欧州委員会がコミットメントを果たすよう今後も注意深く見守っていく考えを示している。

 「企業のバリューチェーン全体でのデュー・デリジェンスを義務化し、企業は自らがもたらした損害について責任を負い、人権侵害や環境破壊を防止するために、はじめからコミュニティーと協議するよう求める規制にすることで明らかにコンセンサスはとれている」と同氏は話している。

 欧州の経営者・企業連盟であるBusinessEuropeとEuropeanIssuersは、JURIの議員とレンデルス氏宛てに書簡を送り、デュー・デリジェンス義務化に反対する意向を示した。

 個別企業のレベルでは、現時点で少なくとも30社を超える大企業が欧州委員会の取り組みを支持している。

 例えば、北欧企業イニシアチブ「Nordic Business Network for Human Rights」に加盟している北欧3ヵ国の企業12社は、人権デュー・デリジェンス義務化に向けたEUの取り組みと、その指導原則への準拠を支持すると発表した。Arla、BioMar、Danfoss, Inter IKEA Group、LEGO Group、Lundbeck、Neste、Norsk Hydro、Novo Nordisk、Statkra、Vestas Wind SystemsおよびYaraが賛同している。

 昨年9月初めには、Adidas、Armedangels、H&M Group、Marshalls, Paulig、Tchibo、Tony’s Chocolonely、Aldi, Inditex、Mondelez、Ritter Sport、Telia、Unilever、Abn-Amro、Ericsson、 Mars、Nestle、Symrise、The Body Shop、Vaudeといった企業も、人権デュー・デリジェンスの義務化を支持している

 さらに、European Brands Association(AIM)、Amforiといった経済団体もEUのイニシアチブを支持している。


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【参照】
Responsible Investor, Carlos Tornero「Landslide European Parliament vote hints at stronger corporate liability rules on human rights and environment」2021年1月28日(2021年2月12日情報取得)

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QUICK ESG研究所「【水口教授のESG通信】欧州サステナブル金融政策の動向 - タクソノミーの外側に注目を」(2020年4月27日)https://www.esg.quick.co.jp/index.php/research/1110


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