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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 ノルウェー政府年金基金(GPFG)を運用するNBIM(Norges Bank Investment Management)は、過去13年間の投資リターンが、倫理的規範に基づくエクスクルージョンの結果、ベンチマーク比較で「累計で」1.3%アンダーパフォームしたと明らかにした。

 NBIMは報告書「The first 20 years of investing responsibly」で124ページにわたり、GPFGの過去20年間の責任投資のパフォーマンスを振り返っている。そしてこの20年間で、自身が「消極的な株主から積極的な株主へと進化した」とする。

 NBIMは、倫理的規範に基づくエクスクルージョンを開始した2006年から2019年末までの期間において、年間で平均0.04%アンダーパフォームした。一方、2019年の年間運用コストは運用残高の0.05%未満であるとしている。

 報告書は、NBIMがいかに投資マンデートと折り合いをつけてリターンの最大化を追求してきたかや、ノルウェー政府が「基金の保有銘柄には規範上制限を設けるべき」との認識を以前から持っていたかを率直に記している。

 そして、「保有銘柄の制限で生じるコストは、倫理的規範を維持するためには不可欠と捉えてきた」としている。

 2019年末時点のエクスクルージョン対象企業は134社だったが、8月31日には、台湾化学繊維(Formosa Chemicals & Fibre Corp)、福懋興業(Formosa Taeta Co)とPage Industriesの3社が人権侵害の疑いから新たに除外された。また倫理委員会はペトロチャイナも腐敗の疑いから除外するよう提言したが、NBIMは当面は株主として積極的な働きかけを続けることを決めた。倫理委員会は、投資先が責任投資指針に反していると判明した場合、当該企業を投資対象から除外するよう、財務省を通じてNBIMに勧告する。

 今回の報告書は「投資」「オーナーシップ」「市場」の3つのテーマに分かれている。 

 投資については、環境重視をマンデートとした投資が計1,720億ユーロに上ることを明らかにした。この分の投資リターンは2010年1月以降7.3%と、ベンチマークの9.6%を下回っているものの、過去5年間は環境重視を投資マンデートとする株式ファンドのリターンが大幅に向上し、ベンチマークの8.7%を上回る11.5%になったとしている。

 環境を重視する企業への投資に「課題がないわけではない」ようだが、「とりわけアクティブ投資に適している」とも指摘する。

 また「問題のある企業への投資を回避し、急成長企業や勝者を見出すためには、詳細に分析するためのリソースを配置する必要がある」と記した。

 NBIMは昨年、環境を重視する投資マンデートに新たな資産クラスとして再生可能エネルギーインフラを加えることを認められ、対象となる運用資産額の上限を従来の2倍に当たる1,200億ノルウェークローネ(115億ユーロ)に引き上げた。 

 「再生可能エネルギーインフラの分析と投資に必要な投資能力と専門ノウハウを内部で育成する取り組みに着手した」という。手始めに、欧州と北米の風力・太陽光発電関連事業への投資機会を追求する。 

 また、2021年以降は企業の株主総会前に議決権行使の賛否を公表し、取締役会の提言に反対票を投じる場合はその理由を説明する方針を2020年から2022年までの運用戦略において明らかにした。

 そして、「当初我々は、難しい意思決定に関与することを恐れて議決権の行使を避けていたが、その頃からみると今は隔世の感がある」と述べている。

 報告書では、サステナビリティ関連の株主議案は「個別の分析」が必要であり、「最も難しい意思決定を迫られる問題であることが多い」と説明している。

 NBIMの意思決定は「複数の仲介者」を経由して投票に反映されるが、「ほとんどの市場」では「我々の指示どおりに議決権が行使されたか確証が得られない」ことを認めている。

 さらに、「規制当局やサービスプロバイダーと協力して議決権行使プロセスを改善し、我々の意思に沿って議決権が行使されるようにする」と述べている。

 同行が議決権行使のガイドラインを示してから、議決権行使手続きの約87%が自動化されるようになった。

 エンゲージメントについては、企業の取締役会との対話は年々活発化しており、2013年には70件だった対話件数が2019年は167件に増えた。一方、「こうした対話がもたらす具体的な成果を評価することは難しい」ことも認めている。

 GPFGは別名「オイルファンド」とも呼ばれ、1990年に設立され、同国の石油・ガス事業からの余剰収入を積み立て、運用している。

 設立以来、GPFGは規模を拡大し続け、世界最大規模のアセットオーナーとして、各上場株式の平均1.5%を保有している。

 NBIMは、ソブリン投資家によるエンゲージメント活動には「一定の要件」が課され、「企業との対話のテーマやアプローチをめぐり主導権を維持する必要がある」として、投資家連合や集団的エンゲージメントにほとんど参加しない理由もここにあると述べている。例えば同行は、気候変動に関するエンゲージメントを推進する投資家イニシアチブ「Climate Action 100+(CA100+)に参加していない。

 また、企業へのエンゲージメントに期限を設けることは、「ポジティブ・スクリーニングの手法をとるか、投資引き揚げの圧力が生じることになり、我々の投資マンデートと整合がとれなくなる」ことから「妥当ではない」と見解を示した。

 サステナビリティ報告については、「基準が標準化されていない点」と「主観的な記述に依存している点」を挙げ、企業間のパフォーマンスを比較することが難しいと指摘している。

 NBIMは、乱立するサステナビリティ報告フレームワークの「協調」("harmonization")を求める声を支持し、投資家が企業に対して、「何をどのように報告すべきか」を、具体的なフレームワーク・基準・データポイントの段階にいたってまで「積極的に」指導するよう促した。

 退任する同行CEOのイングベ・スリングスタッド(Yngve Slyngstad)氏は、「当初我々は小規模で消極的な株主だったが、今や9,000を超える企業の株式を保有する大規模で積極的な株主となった。ここ20年間に我々が成し遂げた取り組みや成果を誇りに思っている」と振り返る。


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【参照】
Responsible Investor,  Paul Verney「NBIM takes 1.3% hit for ethical investments, but says exclusions maintain legitimacy of $1trn sovereign fund」2020年9月2日(2020年10月16日情報取得)

【関連記事】
QUICK ESG研究所「【RI特約記事】NBIM、尾鉱ダムの決壊事故を受けヴァーレから投資除外した理由を明らかに 化石燃料関連企業とあわせて除外を実施」(2020年6月11日)https://www.esg.quick.co.jp/research/1120


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