stewardship
RI_logo

 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 2019年12月20日、金融庁は日本版スチュワードシップ・コードの改訂案*1を発表した。機関投資家に対し、ESGの考慮、スチュワードシップの遵守および議決権行使結果の開示強化を提言しており、より一層の責任投資の推進を求めている。

 原則1(機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。)に対する指針として、投資家が投資先企業への理解を深め、「目的を持った対話」を通じて持続可能な成長を促すよう求めている。また、「運用戦略に応じて、サステナビリティに関する課題」をどう考慮するか、方針を公表すべき、としている(指針1-1、1-2)。

 また、アセットオーナーに対し、運用方針と運用機関によるスチュワードシップ活動の整合性を、運用機関の自己評価も活用して検証するよう求めている(指針1-5)。

 更に、アセットオーナーはその規模と能力等に応じて、最終受益者の利益を確保する視点から、運用機関に対し、実効的なスチュワードシップ活動を実践するよう促すべきであると提言している(指針1-3)。

 日本版コードにおける今回の変化は、日本国内の運用機関に運用パフォーマンスとスチュワードシップ活動の向上を求める圧力の高まりを示す最も新しい兆候といえよう。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、実績連動報酬の導入や貸株停止など、アセットオーナーと運用機関の伝統的な関係に変化をもたらしている。 

 これまで、2014年制定版*2と2017年改訂版*3は、企業の中長期的価値の向上という目標達成に向け、投資家と企業のダイアログの推進と透明性向上を促してきたと、広く認識されている。

 次の改訂版でも「コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)」が引き継がれる見通しで、投資家の多くはコンプライ(原則を実施)を選ぶだろう。

 2019年10月に改訂された英国スチュワードシップ・コードについて、RIは「投資家に対しESG要素の考慮を『ニューノーマル』として義務付けるもので、現行の2012年版とは一線を画す」と紹介した。

 日本版コード改訂案も、投資家に対し、議決権行使判断の理由の開示、議決権行使前に企業に対して行ったスチュワードシップ活動、スチュワードシップ活動の自己評価を奨励している。

 2017年の改訂版では、個別の投資先企業・議案ごとに議決権行使結果を公表するよう奨励した。2019年9月末時点では、100を超える機関投資家が個別の議決権行使結果を公表している。*4

 さらに今回の改訂案では8つめの原則として、「インベストメント・チェーン全体の機能向上」を視野に入れた議決権行使助言会社や年金運用コンサルタントなどの機関投資家向けサービス提供者への提言が加わった。

 その指針として、機関投資家向けサービス提供者は、利益相反が生じる可能性のある状況を見極め、利益相反管理に関する方針と体制を構築すべきと規定している(指針8-1)。

 一方、協働エンゲージメントについては大きな変更点はなかった。協働エンゲージメントは必要に応じて活用すると投資家にとって「有益な場合もあり得る」として、2017年の改訂版に初めて盛り込まれた。だが、 協働エンゲージメントなどの投資先企業との対話について金融庁は、日本の既存の法制度との関係で整理が必要であるという観点から、どのような場合に大量保有報告制度における「共同保有者」(および公開買付制度における「特別関係者」)の範囲の明確化を検討している。*5

 改訂案に対する意見公募は2020年1月31日(金)17:00で締め切られた。最終的な改訂案は、2020年3月以降に公表される予定である。 


RI_logo

【参照】
Responsible Investor,   Ella Milburn「Japan regulator says asset owners should keep tabs on managers’ stewardship」2019年12月17日(2020年2月5日情報取得)
*1日本版スチュワードシップ・コード改訂案 https://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20191220/01.pdf 
*2日本版スチュワードシップ・コード2014年制定版 https://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf
*3日本版スチュワードシップ・コード2017年改訂版 https://www.fsa.go.jp/news/29/singi/20170529/01.pdf
*4金融庁「スチュワードシップ・コードをめぐる状況と論点等について」2019年10月2日 https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship/siryou/20191002/03.pdf
*5金融庁「日本版スチュワードシップ・コードの策定を踏まえた法的論点に係る考え方の整理」2014年2月26日 https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship/legalissue.pdf、「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(令和元年度第3回):議事録」https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship/gijiroku/20191211.html

【関連記事】
QUICK ESG研究所 「【水口教授のESG通信】スチュワードシップ再考 - 英国SSコードの改訂を読み解く」 2019年12月5日 https://www.esg.quick.co.jp/research/1088
QUICK ESG研究所「【RI特約記事】 分析:改訂版英国スチュワードシップ・コードは事実上の「ESG」コードへ  遵守状況を監督する政府機関の設立が不可欠」2019年11月19日 https://www.esg.quick.co.jp/research/1082
QUICK ESG研究所 「【RI特約記事】GPIFがCalPERSに運用報酬と情報開示をめぐる連携を呼びかけ 水野弘道CIOがCalPERSの投資委員会で幅広いテーマにコメント」2019年9月12日 https://www.esg.quick.co.jp/research/1062 
QUICK ESG研究所「英国のコーポレート・ガバナンス改革案 ~説明責任と信頼性の向上へ向けて~」2017年11月2日 https://www.esg.quick.co.jp/index.php/news/794


QUICK ESG研究所