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 本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 責任投資を推進する英NGOのShareActionは、気候変動対策を求める投資家イニシアチブClimate Action 100+(CA100+)署名機関が実施した気候変動関連に関する議決権行使がCA100+の原則と一貫性を欠く実態を明らかにした。「Voting Matters: Are asset managers using their proxy votes for climate action?」と題された報告書は、運用会社57社を対象に、65の気候変動関連株主議案をめぐる議決権行使状況を評価し、ランク付けしている。最上位グループは欧州のCA100+署名機関投資家5社(UBS、アリアンツ、アビバ・インベスターズ、HSBC、LGIM、アクサ)だったのに対し、最下位10社にはCA100+未署名の米国機関投資家9社(「ビッグスリー」と呼ばれるブラックロック、バンガード、ステート・ストリートを含む)が名を連ねた。

最上位グループ(Best performers overall)

Rank Investor Country % of votes for % of data available
1 UBS Asset Management Switzerland 90.2 100
2 Allianz Global Investors Germany 88.5 100
3 Aviva Investors UK 86.9 100
4 HSBC Asset Management UK 82 100
4 LGIM UK 82 100
5 Axa Investment Managers France 78.7 100

最下位10社(Worst performers overall)

Rank Investor Country % of votes for % of data available
1 Capital Group US 4.9 67.2
2 T.Rowe Price US 5.3 93.4
3 Blackrock US 6.7 98.7
3 J.P.Morgan US 6.7 98.4
4 Vanguard Asset Management US 8.3 98.4
5 Fidelity Management and Research Co US 9.3 88.5
6 Wellington Management International US 9.8 100
7 Franklin Templeton US 18 100
8 Northern Trust US 21.3 100
9 State Street Global Advisors US 26.2 100
10 MetLife Investment Management US 31.6 89.1

 その一方で、CA100+署名機関の多くが矛盾した行動を取っていることが分かった。ShareActionのシニア・キャンペーン・オフィサーでレポートを執筆したジャンヌ・マーティン(Jeanne Martin)氏は、「CA100+署名機関投資家の多くが、CA100+のエンゲージメント対象先企業の株主提案に賛成票を投じていないことがわかった。シェブロン、デューク・エナジー、フォード、ゼネラル・モーターズなどのその例だ」と述べる。

 例えば、米国の金融持株会社ノーザン・トラストはCA100+署名機関だが、気候変動関連株主提案のうち21.3%にしか賛成票を投じず、最下位グループにおいて8位と順位が低い。それでも、T. Rowe Price(5.3%)や、ブラックロック(6.7%)、JPモルガン(6.7%)、バンガード(8.3%)と比べれば、賛成率ははるかに高く、ステート・ストリート(26.2%)をわずかに下回る水準である。ノーザン・トラストは、今年最も重要な株主提案の1つに反対票を投じた。経営陣が総会の決議事項から気候変動関連株主提案を除外することに成功した、エクソンモービルの件だ。ニューヨーク州退職年金基金と英国国教会コミッショナーは、エクソンモービルに対し、短期・中期・長期のGHG削減目標の開示を求める株主提案を提出した。しかしエクソンモービルは、同株主提案はマイクロマネジメントに該当するというSECの判断に基づき、同株主提案を総会の決議事項から除外。英国国教会コミッショナーとニューヨーク州退職年金基金は、こうしたエクソンモービルの判断を問題視し、同社の気候変動への不適切な対応は深刻なガバナンス欠陥であるとして、取締役会議長の独立性を求める株主提案(CEOの分離)に対し賛成票を投じるよう、 The Form PX14A6G (Notice of Exempt Solicitation) を通じて株主に求めた。マーティン氏は上記レポートの中で、「ノーザン・トラストは、CA100+のエンゲージメント対象企業に対する16の株主提案のうち12に反対票を投じた。そのうち一部は、CA100+で主導的な役割を担う機関投資家が起こしたものである」と指摘している。

 エクソンモービルについては、投資会社アルジュナ・キャピタル(Arjuna Capital)も気候変動に特化した委員会の新設を求め、The Form PX14A6G (Notice of Exempt Solicitation) を通じて他の株主に賛同を呼びかけたが、複数のCA100+署名機関は反対票を投じた。具体的には、アムンディ、APG、アセットマネジメントOne、ケベック州貯蓄投資公庫、HSBCアセットマネジメント、Janus Henderson、マニュライフ、三菱UFJ信託銀行、ノーザン・トラスト、シュローダーである。

 その他のCA100+署名機関が付した株主提案も、他の株主からの支援は不十分だった。CA100+参加機関APGは、非営利団体As You Sow、アルジュナ・キャピタル(Arjuna Capital)、Boston Trust Walden Companyがシェブロンに低炭素移行計画の報告を求めて共同提出した株主提案に反対した。APGは、前年に提出された同様の株主提案には賛成票を投じていた。

 ニューヨーク州退職年金基金、Robeco、ユニテリアン・ユニヴァーサリスト協会がフォードに対してロビー活動に関する情報開示を求めた株主提案には、ノーザン・トラストのほか、ステート・ストリートも反対票を投じた。ステート・ストリートは2017年には同様の株主提案を支持していたが、2018年に方針転換した。

 数年間にわたり提出され続けている株主提案については、CA100+参加機関からの賛成票が増えない、あるいは減少している。Union Investmentsは、ブラックロック(発行体としての)とUnited Parcel Serviceに対する株主提案に一貫して反対票を投じている。シュローダーとアバディーン・スタンダードは、フェデックスとCHロビンソン・ワールドワイドに対する株主提案へ反対する姿勢に転じた。

 さらにShareActionは、三井住友トラスト・アセットマネジメント(親会社はCA100+参加機関)による議決権行使状況に関する情報を全く入手できなかったという。クレディ・スイス・アセットマネジメント(CA100+不参加)についても、議決権行使情報のうち入手できたのは全体の15%に満たないとした。

 本調査のもう1つの焦点は、議案の提案者によって賛成率が異なるという事実だ。提案者が機関投資家の場合、賛成票の割合は平均38.4%と高いのに対し、NGOや個人投資家が提案した議案への賛成票は11.6%にとどまる。

 また、賛成率の低い賛成率の低い機関投資家(Capital Group、T. Rowe Price、MetLifeを除く)でも、少なくとも1つの気候関連イニシアチブ(TCFD、Ceres、IGCC、IIGCCなど)には参加していると明らかにした。

 マーティン氏は、「これらの投資家は気候関連情報の開示やエンゲージメント活動への参加を公表しているにもかかわらず、気候関連の情報開示を求める株主提案や投資家イニシアチブの目的に沿った株主提案にはほとんど賛成票を投じていない」と指摘する。今回最下位グループに分類された機関投資家は、いずれも5年以上も前から責任投資原則(PRI)に署名している。


 

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【参照】
Responsible Investor,    Carlos Tornero「ShareAction voting study throws up voting anomalies among some CA100+ signatories」2019年11月4日(2019年11月25日情報取得)ShareAction, 
“Voting Matters: Are asset managers using their proxy votes for climate action?” https://shareaction.org/research-resources/voting-matters/

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QUICK ESG研究所 「【RI特約記事】ShareActionがClimate Action 100+の署名機関に債券投資でもESGを考慮するよう要請」2019年2月14日 https://www.esg.quick.co.jp/research/993
QUICK ESG研究所 「【RI特約記事】SECのノーアクションレター制度:企業の気候変動対策を求める投資家行動を阻止する不透明なメカニズム エクソンに対する英国国教会年金理事会とニューヨーク州退職年金基金の株主提案で注目集める」2019年6月17日https://www.esg.quick.co.jp/research/1036Worst performers overallWorst performers overall


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