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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 フランスのマクロン大統領は9月10日、パリで開催されたPRI in Personの開会式にビデオ・メッセージをよせ、アマゾン森林火災の消火支援のため、民間にも寄付を呼び掛けた。これは、フランスを含む各国が連携してアマゾン森林火災対応のプロジェクトの一環であり、次回の国連総会でも働きかけを行う。マクロン大統領は、9月下旬にニューヨークで開催される「Climate Week」でフランス、ジャマイカおよびクウェートが「One Planet Climate Action Plan」の実施状況を発表すると述べた。また、アマゾン森林火災に関連した動きとして、PRIは署名機関の投資家に、サプライチェーンも含む森林破壊削減に努める企業のコミットメントを求める声明へ賛同を募り、締め切り時点で、グローバルな機関投資家230機関、運用資産総額16.2兆米ドル(約1,700兆円)が賛同を表明した。み

 マクロン大統領に続き、フランスのブルーノ・ルメール経済・財務相がスピーチを行い、「サステナビリティについて語る時期は過ぎ、今こそ行動に移すべきである」と訴え、「既存の経済モデルを転換して社会的責任という概念に基づく21世紀の新たな資本主義を確立するためには、大胆な公共政策を講じる必要がある」と述べた。その上でフランス政府として、全ての企業に社会・環境報告書の作成と責任に関する新法を制定することなどを明らかにした。
 一方、「金融セクターが強力なメッセージを示さなければ、大きな変化は生まれないだろう。有害な経済活動を支援する投資を減らし、サステナブル・ファイナンスを促進する必要がある。責任投資は、社会と共生する事業や社会的一体性を支えるものでなければならない。今後も、責任ある金融を推進するための具体的な政策やツールを示すことが、経済・財務相としての私の行動の中核を成すことに変わりはない」とも話した。また、7月にはフランスの金融機関が「フランス国家低炭素戦略(SNBC)」に則って2020年までに石炭関連企業からのダイベストメントを完了することに同意したことも紹介した。
 さらに、現在議会で審議中のエネルギー転換法案の一環として、年内に現行のエネルギー転換法173条で定められた報告フレームワークが強化される見通しも示した。金融機関の監視体制についてルメール経済・財務相は、「金融機関が責任投資について表明やコミットメントを発表するだけでは十分とは言えない。監視体制の抜本的な改革が求められる」と述べた。フランス金融市場庁(AMF)による国内金融機関のESG対応や情報開示の監督が厳格化されており、今月には新たに発足した「気候およびサステナブルファイナンス委員会」が始動する。
 ルメール経済・財務相はまた、フランスは、EUアクションプランと、欧州委員会の新委員長に選出されたウルズラ・フォンデアライエン氏が提案する「欧州グリーン・ニューディール」への全面的な支援を、EU加盟国に強く要請していることも明らかにした。同プランは、2050年までに欧州圏内のGHG排出量を実質ゼロ)にする目標を掲げている。 最後に、フランスはEUグリーンボンド基準の策定に向けて全力で取り組んでおり、欧州の大手企業に環境・社会報告書のフレームワーク作成を促していると述べた。

 基調演説を行ったNatixis Investment Managersのジーン・ラビー(Jean Raby)CEOは、ジェンダー不平等の解消がほとんど進んでいない金融業界の現状は看過できないとし、「この問題に目を向けなければならない」と訴えた。コーポレート・ガバナンスについては、体制になお重大な欠陥があるとし、「年次総会は企業の長期的戦略を議論する場であるべきだが、ほとんどそうなってはいない」と指摘した。また、責任投資が十分に広がっていない理由を聞かれた際には、ESGのリスク管理ツールとしての側面ばかりが注目され、ポジティブなインパクトを生む投資への移行が重視されてこなかったことにあるのではないかとの懸念を示した。さらに、「ESGそのものが目的となり、目的を果たすための方法ではなくなってしまっている。どこに向かっているのか分からなければ、目的地を間違えることになりかねない。ルメール経済・財務相が政策当局と金融業界が連携・協働して短期主義に立ち向かうよう呼びかけたことを大いに歓迎する。コミットメントの強化は前向きな動きだが、金融業界は自らの取り組みをより良い方向に導く時期に来ている」と述べた。

 ダノンのセシル・カバニス(Cécile Cabanis)CFOはスウェーデンの公的年金基金AP2のCEOを務めるエヴァ・ハルヴァ―ション(Eva Halvarsson)氏との討論で短期/長期的テーマについて取り上げ、同社が利益とパーパスのバランスをとるようになり、"BCorp" に認証されたことを紹介した。その背景には、1年単位の損益計算書を重視する考え方から、外部不経済への対応に目を向ける姿勢へ移行する必要があった。それはリスクの低減、イノベーションの促進、SDGs達成への寄与、長期的なビジネスの持続に向けた動きでもある。

 カバニス氏は、「 ”BCorp” 認証を受けたことで、既に銀行からはやや低めの融資金利の提示を受けるなど、変化も見え始めている。投資家も、これを投資表明に組み入れることを検討すべきだろう」とも述べた。さらに、サステナビリティに関する指数や開示ガイドラインは「乱立状態にあり、それぞれ測定方法が異なるが、外部不経済の測定方法が統一されれば多くのデータの重要性は増すだろう。今はリソースの無駄遣いと言わざるを得ない状況だが、もはやそうした無駄を容認できない段階にきている。合理的な統一基準を策定し、それを財務評価のモデルに組み入れる必要がある」と指摘した。

 カバニスCFOとハルヴァーションCEOの討論は、CFO SDG Spotlightというセッションで行われた。CFO SDG Spotlightは今年のPRI in Personで初めて設定され、初日のダノンに続き、2日目の同セッションでは、イタリアの電力・エネルギー会社であるEnelのCFOが登壇した。


 

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【参照】
Responsible Investor,   Hugh Wheelan「PRI in Person 2019, Paris: France pushing strongly for EU Action Plan and Green New Deal implementation」2019年9月10日(2019年10月7日情報取得)

【関連記事】
2019年10月2日「PRI in Personに参加してきました その2」https://www.esg.quick.co.jp/blog/1065
2019年10月2日【水口教授のESG通信】アマゾンはなぜ燃えるのか - ポピュリズムとESGを考える https://www.esg.quick.co.jp/research/1066
2019年9月17日 「PRI in Person 2019に参加してきました」https://www.esg.quick.co.jp/blog/1064
2019年7月24日「「RI特約記事】仏大手金融機関の半数、エネルギー転換法173条の要件を満たす情報開示を行わず」https://www.esg.quick.co.jp/research/1049
2019年5月22日「【RI特約記事】エネルギー転換法173条:2018年の気候変動関連リスクの情報開示から得た教訓」https://www.esg.quick.co.jp/research/1026


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