supply
RI_logo

本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 再生エネルギー技術のサプライチェーン上では、搾取と人権侵害が横行しており、投資家は計り知れないESGリスクに晒されていると、国際人権NGOのビジネスと人権リソースセンター(BHRRC)が発表した。

 BHRRCの調査によると、2010年以降、低炭素社会への移行に必要な再エネ技術に欠かせない鉱物を取り扱う採掘企業大手23社のうち、87%で人権侵害の申し立てがあったという。しかも、23社のうち61%は人権方針を公表していた。調査は、ソーラーパネル、風力タービン、電気自動車の製造に不可欠な鉱物(リチウム、銅、コバルト、マンガン、ニッケル、亜鉛)の採掘企業37社を対象に行われた。

 申立件数が最も多かったのは環境への影響や水アクセスに関する分野で、先住民の権利侵害、労働者の権利侵害、租税回避、健康への悪影響なども数多く報告されている。中でもスイスに本社を置く鉱山開発及び商品取引を行うグレンコア社は申立件数が43件と最も多く、亜鉛、ニッケル、銅およびコバルトの採掘事業で環境汚染や租税回避の告発を受けている。

 BHRRCのシニアリサーチャーのエニコ・ホルヴァート(Eniko Horvath)氏は、「本調査は、鉱物サプライチェーンでは今もなお搾取や人権侵害がはびこっている事実を明らかにした。再エネセクターが地歩を固める上では、サプライチェーン全体で人権保護を徹底する必要がある。人権侵害を防止し、事業を行う社会的な資格を保持し、地域社会の反対による事業遅延に伴う損失の回避を図ることが欠かせない」と述べた。さらに同氏は、「ソーラーパネル、風力発電タービン、電気自動車の各メーカーとその投資家は、鉱物サプライチェーンに対し高い人権基準の採用を求め、無節操な事業慣行を認めないことで、鉱物資源セクターの人権保護を促すことができる」と指摘する。

 リチウム生産の大手5社(Albemarle、SQM、Livent Corporation、Tianqi LithiumおよびJiangxi Ganfeng Lithium)にはいずれも人権侵害の申し立てを受けている。人権方針を公表しているのはそのうち1社(Livent Corporation)のみだった。世界銀行は、これらの鉱物への需要は急拡大すると予測しており、2050年までの伸び率はリチウムが最大965%、コバルトは585%に達するとみている。

 人権侵害の訴えが多発している地域はチリ、ザンビアおよびコンゴ民主共和国である。BHRRCが調査報告書とともに発表したツール「Transition Minerals Tracker」では、再エネ技術に必要な鉱物資源の生産会社37社が抱える人権関連リスクを、投資家、企業および市民社会団体が確認できる。同ツールはフォード財団の支援を受けて開発されたもので、ユーザーは各企業が人権方針を策定しているか、人権侵害の申し立てを受けたことがあるか、申し立ての内容はどのようなものか、確認することができる。また、BHRRCの提携団体が作成した、申し立て内容を詳述した報告書も閲覧できる。


RI_logo

【参照】
Responsible Investor,  Ella Milburn「Investors open to ESG risks in renewables supply chain – report」2019年9月5日(2019年10月3日情報取得)

Transition Minerals Tracker, https://transitionminerals-tracker.business-humanrights.org/


QUICK ESG研究所