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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 フランス財務省(Direction Générale du Trésor)は7月2日、フランス国内48の大手金融機関のエネルギー転換法173条に基づく開示状況を調査し、報告書を発行した。48社のうち、エネルギー転換法173条の要件を満たす気候変動関連情報を開示しているのは半数にとどまり、3社は情報を開示していないだけでなく、173条の「コンプライ・オア・エクスプレイン」原則のもと情報開示しない理由の説明も行っていなかった。

 年次報告書における環境/ESG関連情報の開示を制度化するため2015年7月に成立したエネルギー転換法173条は、資産残高が5億ユーロを超える大手機関投資家に対し、リスク管理や投資判断においてESG基準をどう考慮しているかに加え、投資対象企業のGHG排出量の概要を示し、低炭素社会に貢献するファイナンスについての情報開示を求めている。
173条はフランスの規制としては例外的に法的拘束力がなく、アングロサクソン系の国でよく採用される「コンプライ・オア・エクスプレイン」原則(ルールを順守するか、順守しない場合はその理由を説明する)に基づいている。気候変動が重大なリスクではないと説明できる場合には、173条に則ったレポートを公表する必要はなく、監督当局に提出するだけでよいとしている。

 173条が制定された際、フランス政府は国内金融機関が全ての要件に準拠するまで3年間の猶予期間を設けた。今回の報告書は、市場行動に影響をもたらす大手金融グループ48社の準拠状況の調査結果を発表したものだ。結果、173条の要件を満たす情報開示を行っている金融機関は24社(全体の50%)だったのに対し、21社(同44%)の開示内容は要件を満たしていないことがわかった。残りの3社(同6%)は情報開示を全く行っていない上、その理由についても一切説明しておらず、173条に抵触している。この3社はいずれも資産運用会社だが、具体名は明かされていない。概して、報告書では保険会社や公的資金を運用する機関投資家の方が、民間の資産運用会社より適切な情報開示を行っているとしている。

 こうした動きとは別に、フランスではサステナブルファイナンスの実績や活動をモニターする仕組みづくりが進んでおり、金融の主な業界団体やサステナブルファイナンス市場の振興を手がけるイニシアチブである「Finance For Tomorrow」が共同運営する予定だ。また、その傘下に科学委員会も設置される。一方で当局は、パリに拠点を置く金融機関による気候変動へのコミットメントを、監視・評価する制度を導入すると発表した。この制度を運営するのは健全性監督破綻処理機構(ACPR)と金融市場庁(AMF)で、それぞれが所管する銀行、保険会社、資産運用会社に対する監督業務および発行体が開示した非財務情報の審査業務の一環としてこれを行う。

ACPRとAMFは2019年後半に、「気候変動およびサステナブルファイナンス」諮問委員会をそれぞれ設置する。


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【参照】
報告書: Bilan de l’application des dispositions du décret n°2015-1850 du 29 décembre 2015 relatives au reporting extra-financier des investisseurs (Article 173-VI de la loi de transition énergétique pour la croissance verte)  https://www.tresor.economie.gouv.fr/Articles/677780aa-0aac-42bb-a144-37f942cd738d/files/b290fb4b-da2c-4750-99d4-3841e71d1fe8

Responsible Investor,   Hugh Wheelan「Half of France’s biggest finance groups fall short on Article 173 reporting; three fail to report at all」2019年7月3日(2019年7月24日情報取得)

【関連記事】
2019年5月22日「【RI特約記事】エネルギー転換法173条:2018年の気候変動関連リスクの情報開示から得た教訓」https://www.esg.quick.co.jp/research/1026


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