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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、気候関連財務リスクの報告を義務付ける州法改定案(SB964)の施行を受け、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って情報開示する意向だ。折しも米国の環境保護NGO5団体が6月24日に、CalPERSとカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)に共同書簡を送り、両基金が新法施行後初となる情報開示で「法令違反を問われることのない」よう、気候関連財務リスク開示のベストプラクティスを提言した。

 同州法は、2018年9月に当時のジェリー・ブラウン(Jerry Brown)州知事が署名し成立した。総額6,000億ドル(5,267億ユーロ)弱の運用資産を擁するCalPERSとCalSTRSに対し、ポートフォリオにおけるマテリアルな気候関連財務リスクについて3年ごとに報告するよう義務づける法律だ。報告には、「パリ協定と同州の気候政策目標の準拠状況に加え、長期的なリスクに対するエクスポージャー」も盛り込む必要がある。初回の報告書は2020年1月1日が提出期限だが、NGO側は報告書の内容が「完全かつ妥当」か、懸念を示す。

 NGOのうち3団体は書簡で、両基金がTCFDに賛同、署名していることに触れ、Environment Californiaと Fossil Free CaliforniaはTCFDの提言に基づく「保有資産の詳細な分析」を求めている。CalPERSとCalSTRSはともに2017年にTCFDに署名しているが、RIの取材に対してTCFD提言に基づき同州法の報告書を作成する意向を示したのはCalPERSのみである。TCFDの事務局によると、現時点で785に上るTCFD署名機関のうちアセットオーナーは約80、アセットマネジャーは約140である。だが、TCFDの提言に沿った情報開示を行っている機関の数は今のところそれを大幅に下回る。CalPERSの報道官はRIに対し、「我々はSB 964の要件を満たす報告書の作成を進めており、TCFDの提言に沿った内容にするつもりだ。それ以上のコメントはない」と答えた。SB964の共同提案者でもあるEnvironment CaliforniaとFossil Free Californiaは共同書簡の中で、同州法は「特定の保有資産については具体名を挙げて」報告するよう求めているとも指摘した。

 共同書簡に参加したCenter for International Environmental Law (CIEL) はさらに、化石燃料関連資産を保有するためには、「基金の投資方針と整合し、受益者の利益に寄与する理由」を明示しなければならないとしている。CIELの社内弁護士のスティーブン・フェイト(Steven Feit)氏は、「年金基金の運用者にとって、気候変動が自らの投資ポートフォリオに及ぼす影響を監視することはビジネス上、理にかなっているだけでなく、法的義務でもある」とコメントしている。

 昨年8月にRIがCalSTRSとCalPERSに取材した際、両基金とも当時はまだ法案だったSB 964に対する立場を明らかにしなかった。ただ、2017年に気候変動リスクに関する同様の法案(SB 560)が提出された時、CalSTRSは同法案が「投資の権限」を制限し、受託者責任の遂行という「法律上の責務」を侵害しかねないとして反対した。当時とは異なり、CalSTRSの報道官は、「我々は10年以上も前から『Green Initiative Task Force report』を発行し、環境テーマ型投資と環境関連リスク管理の取り組み状況を公表してきた。SB964 で義務化された報告書は、二重のプラス効果をもたらすだろう。1つは、気候変動リスクに関するCalSTRSのエンゲージメントの可視性が向上することだ。もう1つは、気候関連財務リスクを開示することで低炭素社会の実現に向けた我々のコミットメントを強調できることだ。年内に最新の報告書を公表できることを楽しみにしている」と述べた。

 米コロラド州では今年4月、資産総額530億ドルを運用する同州の職員退職年金基金に気候関連財務リスクの評価を義務づける法案が否決され、法令化に向けた最初の関門を通過できなかった。だがEnvironment CaliforniaとFossil Free Californiaは、「他の複数の州が、SB964と同様の法令の導入を検討している」と指摘する。


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【参照】
Responsible Investor,  Paul Verney「CalPERS says it plans to align with TCFD amid new California climate legislation」2019年6月25日(2019年7月17日情報取得)

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