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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 尾鉱ダムの安全性について情報開示を求める、投資家からの「緊急」要請に対し、69%の資源採掘企業が応じなかった。今年4月、スウェーデンの公的年金基金(AP1、AP2、AP3、AP4)の代表者からなる倫理委員会(Council on Ethics)と英国国教会年金理事会が発足させた「尾鉱ダム安全確保イニシアチブ」(The Investor Mining & Tailings Safety Initiative)は、資源採掘企業655社に対し、子会社や関連会社、共同出資施設が関わる尾鉱ダムに関して、取締役会議長および/またはCEOが署名した具体的な情報を開示するよう要請した。ブラジル南東部ブルマジーニョ市で起きたヴァーレ社が所有する尾鉱ダムの決壊事故(死者246人、行方不明者24人)を受けた動きだ。そして6月17日、対象企業の企業名をウェブサイトで公表した

 200社以上(企業規模上位50社のうち29社を含む)が情報開示に応じた。同イニシアチブは、数千の尾鉱ダムの情報が初めて開示されたことを「資源採掘セクターの安全性向上に向けた大きな一歩」と評価する。しかし、開示に応じなかった企業の時価総額は業界全体の約50%にあたる。エクソン・モービル、シェブロン、コノコフィリップス、ラファージュホルシム、ハリバートン、ノルスク・ハイドロ、ルークオイル、スタトイル、レプソル、キャボットとその子会社、チェサピーク、エンブリッジ、ガスプロム、セメックスとその子会社、ゴールドマン・サックス・ストラクチャード・プロダクツ、オキシデンタル・ペトロリアム、フィリップス66、ポスコ、ブミ・リソーシズなどの巨大企業が応じていない。

 AP倫理委員会の事務局長でイニシアチブの共同責任者でもあるジョン・ハウチン(John Howchin)氏は、「ヴァーレ社の事故を受け、企業は信頼性を取り戻すために安全性、透明性、独立機関による検査を重視すべきだ。情報の非開示は容認できず、我々の投資に極めて深刻なリスクをもたらす。情報を開示しない企業に対して積極的にエンゲージメントを行っていく」と述べた。これまでの開示情報によると、バリック・ゴールド、グレンコア、アングロ・アメリカン、ニューモント・ゴールドコープ、フリーポート・マクモランといった鉱山大手のダム施設は、エンジニアによる安全性評価でいずれも少なくとも一度は不合格になったことがわかった。多くはその後解決済みだ、としている。

 同イニシアチブは先週ロンドンで会合を開き、第三者が報告・監視でき、自由にアクセスできる採掘廃棄物のグローバルデータベースの構築ついて外部団体と協議した。同イニシアチブの共同代表者で英国国教会年金理事会の倫理&エンゲージメントディレクターを務めるアダム・マシューズ(Adam Matthews)氏は、「我々はイニシアチブの活動を通じて、尾鉱の安全管理を最高水準に引き上げることを目指す。これまで投資家の関心が低かったことは明らかで、尾鉱は外部性と捉えられてきた。情報開示を機にそうした認識は変わり始めている」と指摘する。


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【参照】
Responsible Investor,   Ella Milburn「Mine tailings disclosure: Investors pledge “intense engagement” for 453 uncooperative firms」2019年6月17日(2019年6月28日情報取得)
“Thousands of Tailings Dams Revealed for the First Time as over 200 Companies Disclose” The Church of England 2019年6月17日
https://www.churchofengland.org/more/media-centre/news/finance-news/thousands-tailings-dams-revealed-first-time-over-200-companies
“Information on which companies have disclosed” The Church of England 2019年6月17日
https://www.churchofengland.org/sites/default/files/2019-06/PUBLIC_17June2019_Investor%20Minint%20Tailings%20Safety%20Initiative%20Disclosures.pdf

【関連記事】
「【RI特約記事】相次ぐ「尾鉱ダム」決壊 鉱業界全体の構造的な問題が浮き彫りに」 2019年4月5日 https://www.esg.quick.co.jp/research/1023


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