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本稿は、レスポンシブル・インベスターの掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。

 香港金融管理局(HKMA)の報道官は、国連の責任投資原則(Principles for Responsible Investment、以下PRI)の署名が最終段階であると述べた。香港金融管理局(HKMA)は香港の中央銀行に相当する。中央銀行で初めてPRIに署名したのは、オランダの中央銀行(DNB)であり、同行は190億ユーロに上る準備預金を責任投資運用することの重要性を唱えている。PRIの署名機関は6つの責任投資原則に基づき、投資プロセスにESG要素を組み入れ、毎年自らの履行状況をまとめた報告書を提出することが求められる。PRIは、責任投資が広がれば「市場の安定化、準備金の管理および各国中央銀行の連携」に寄与するとして、中央銀行の参加を歓迎している。HKMAの報道官はRIの取材に対し、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System、以下NGFS)に参加する意向があることも明らかにした。NGFSは2017年に設立したネットワークで、2019年4月17日時点で世界の主要中央銀行36行および6つのオブザーバーが連携して気候変動対策に取り組んでいる。

 HKMAは、アジアの金融センターとして香港に持続可能なバンキングとグリーンファイナンスを促進するため、措置を講じることも公表している。HKMAは金融監督当局としての立場から、香港に拠点を置く各銀行の「グリーン度」を3つのフェーズで評価する。はじめに、業界団体、銀行および国際機関の取組みを評価し、香港金融市場に適合する「グリーンネス・ベースライン」を設定する。その上でステークホルダーと合意の上、目標・指標を定め、パフォーマンスの評価基準とする。また、資産総額4,700億ドルを擁する「Exchange Fund」の運用責任者でもあるHKMAは、グリーン投資およびESG投資を優先し、国際金融公社(以下、IFC)が新興国のインフラ事業へのESG投資で運用する「Managed Co-lending Portfolio Programme(以下、MCPP)」に20億ドルを投入する方針も明らかにした。ただし、MCPPに資金を振り向けるのは選択可能な他の投資と同等レベルのリターンが得られる場合に限られると強調した。域外の運用会社にも、香港独自のスチュワードシップコードである「Principles of Responsible Ownership」を遵守するよう指導している。さらに、自らのグリーンボンド・ポートフォリオの増額、グリーン適格資産を優先する不動産投資、ESGインデックスへの投資を行うこともコミットした。

 HKMAは「グリーン・ファイナンス・センター(the Centre for Green Finance、以下CGF)」を設置し、各国の政策立案者や中央銀行の経験を共有し、活用することも目指している。CGFが最初に取り組む優先課題は、2020に年香港で開催を予定しているIFCの重要な気候変動関連イベントである「気候ビジネスフォーラム」を共催することである。報道官によると、香港で既に設立されているグリーンファイナンス関連の組織「グリーン・ファイナンス・アソシエーション(GFA)」とCGFは重複するものではない、としている。むしろ両者は協力関係にあり、CGFは民間セクターの中心的存在として商品およびベストプラクティスの開発などを担う一方、GFAは公的セクターを代表する存在としている。

 世界の金融政策策定機関も気候変動リスクへの対応を加速させている。国際通貨基金(IMF)はパリ協定の合意内容に基づき、気候変動リスクの低減に向けた各国の財政政策の役割と意図を再評価したことを公表した。これにより、米連邦準備銀行(FRB)の孤立感がさらに際立つ。ジェローム・パウエル(Jerome Powell)FRB議長は、上院議員から「米国の金融システムが直面する気候変動リスクを特定および管理するため、中央銀行が講じている対策」について問われたことに対し、「FRBは議会から直接気候変動への対応を委託されている行政機関ではないものの、金融機関の気象変動対応に自らの権限と政策手段を使っている」と回答した。また、「金融安定理事会(FSB)のアクティブなメンバーとして、気候変動分野で相応の対応をしている」とも述べた。しかし、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」については特に言及しなかった。回答に対し、ハワイ州選出のブライアン・シャッツ(Brian Schatz)民主党上院議員は「問題外だ。米国の金融監督当局は気候変動問題を無視するつもりのようだ」と批判している。

 

 


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【参照】

Responsible Investor, Khalid Azizuddin , 「Hong Kong’s HKMA eyes central bank green network as it plans to be 2nd central bank to join PRI」2019年5月9日(2019年5月31日情報取得)

 


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